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代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第四章
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79、王城での相談

 領主様との相談が終わり、エルナリアの街から戻ってすぐに王城へ向かった。

予め来る事が決まっていたのですんなりと応接間に通され、少しだけ待つと数人が部屋に入ってきた。


 既に会った事があるのはアレスクルト様、レックスさんの上司さん、物資管理部門の責任者さんかな。

因みに、姉さんは《付与魔法》を教えて貰える事になって何度か王城まできているようなのだが、エルナリアの街で姉さんに《錬金術》や《付与魔法》を教えて頂いたクレリアさんの兄弟子に当たる方がこの物資管理部門の責任者さんなのだとか。


 姉さんだけでは無く、クレリアさんも一緒に王城へ行来て色々研究会をやりだしていると姉さんから聞いていた。

その際にはクレリアさんが師匠なのに対し、この方は先生と呼んでいるとの事。


 初めてお会いするのは三人。

一人は歴戦の戦士といった風情で、綺麗にはしているのだが傷も多い野外戦闘や探索に向いた装備をした方。

次は女性で、傷一つ無い装飾の凝った鎧をつけた方。

最後は布製のローブを着た女性だった。


 軽く紹介があった所、戦士風の方が今回の五爵関係みたいな王都から離れた場所での作戦を行う部隊の責任者との事。

騎士である八爵らしいのだが、実力で部門責任者まで上がった強者つわものらしい。


 次に騎士鎧を装備した女性なのだが、王妃様や王女様の護衛の為に存在する女性だけの騎士団の責任者の方との事。


 最後にローブの女性なのだが、宮廷魔道部隊の隊長さんだ。

責任者の方は別に居て、あくまで隊長さんの一人であるらしい。


 僕達の事も一応は紹介されたが、正直な所……ローブの女性以外はあまり反応が良くない気がする。

まぁ、気にしても仕方が無いので話を始める事にした。


 こちらからの要望である、仮のお屋敷の件は問題無かった。

持ち主が現在存在しない、丁度良い物件があるらしくてすぐに決まったとの事。


 問題は次の話だった。

移動手段はこの状況で話すべきか悩んだので、エルナリアの街での襲撃に備える事だけを伝えた。

これに反応したのは、まず二人。


「王子から同席するように要請があったので来てみれば……こんな子供が無理な事ばかりを言うとはな。申し訳ないが私はこれで辞退させて頂きます」


「そうですわね。正直な所聞くだけの価値がある話では無いでしょう。私も失礼致します」


そう言って、遠征部隊と女性騎士団の各責任者の方が退席した。


 ただ、最初からそれが予定通りという感じに話は続く。

どうやら今回の件に関係する部隊なので、一応は声を掛けるしかなかったと言う程度らしい。


「あの二人、実力はあるのだが頭が硬いのが難点でね。もっとも、宮廷魔道部隊に至っては責任者すら来る気は無いのだがね」


そう言われ、その役目を押し付けられた隊長さんが顔を青くしながら俯いてしまった。


 そこからは、邪魔者が居なくなったのでと言わんばかりに話しを進めていく。

遠征部隊は継続してヴァルツァー五爵領付近を捜索。

まぁ、これは元々どうしようもないらしい。


 先程居た責任者の方は当然現地には行っておらず、連絡も使い捨ての高級魔法具を使っての一方的な通達が送られてきただけに過ぎない。

姉さんの記憶的に言えば、メールとかポケベルとかと言うのに近いらしい。

《通話》の様な便利さは無いとの事。


 ただ、これには姉さんが喰い付いている。

先生に確認し、作り方自体は知っているとの返事に笑みが零れていた。


 結局の所、遠征部隊の主力は五爵領に居る為、今回の件に参加するなら非常時に備えた予備戦力を投入せざるを得ない状況らしい。

その戦力を投入する事を、僕の説明では納得出来なかった様だ。

アレスクルト様もそれを織り込み済みで話を進めているのだから、退出するのは当然と言えた。


 次に女性の騎士団の方を連れて来たのは、僕を倒すために城を脱出した第三王女メリルリアナ様の事があるからだろう。

王女様に心酔している者も多いらしく、僕に対して反発する事は当然と言えた。

それでも、一応はこの話し合いの場に呼ばなくてははならないのが貴族の面倒な所らしい。

放置してしまうと、協力する気も無いのに自分達は聞いていないと攻め立てるらしい……本当に面倒くさいな。


 結局の所、レックスさん達四部隊全員一致で協力してくれる意志を示しているのでお願いする事に。

加えて、宮廷魔道部隊の中で協力して頂ける方を募って貰う。

あくまで命令では無く、任意で協力して貰う形だ。

ただし、あくまで仕事であり任務だ。

参加が自由なだけと言う訳です。


 因みに、この宮廷魔道部隊の隊長さんは協力してくれるとの事。

おそらくだが、自分の直属の部下も参加して貰える可能性が高いらしく、全員が女性なのは有り難い事だった。


 女性が何故有り難いのかと言えば、メイドの格好でお屋敷内部に居る人員が欲しかったからだ。

外部から見て不自然さを出来るだけ少なくするために、それは必須といえる案件なのだ。

その上、魔法使いならば装備の問題が減る事も大きい。

姉さんが腕輪型で魔法の発動具を用意すると言ってるので、殆ど手ぶらと言える状態で行動できるだろう。


 話し合いは基本的に僕達が持ち込んだ案で落ち着いた。

僕達の参加理由も、クレリアさんの為という事を前面に押して文句は言わせないと言ってくれた。

ここに居るメンバーにクレリアさんの兄弟子の方が居る以上、その建前は十分な効力が期待できる。


 ここで、アレスクルト様が時間的に厳しくなってきたのでいったん終了となった。

話し合う事は大体済ませたので問題は無い。

そして、この後に仮のお屋敷を案内して貰う方向で話がつき、王城を後にした。




 ◇ ◇ ◇




 レックスさんがお屋敷の場所を知っているらしいので、鍵を受け取ってから案内して貰った。

レックスさんはこうなると思って待っていてくれたらしい。


「まぁ、予定通りの人員で行う事になりそうだが、実際の所……お前らから見て勝ち目はどんなもんだ?」


「負けは無いかな。被害も出す気は無いけど、こればっかりは相手次第なので絶対とは言えないっていう程度」


レックスさんと姉さんは移動しながらそんな話をしていた。


 レックスさんと姉さんは既に何回か会っている。

姉さんと初めて会った後に、


「お前は何故か強いくせにまだまだひよっこの匂いを感じるが、姉ちゃんの方は……ありゃ、化け物だな。底が見えねェ」


そう言っていた。


 それが判るレックスさんも凄いと思うのだが……やはり姉さんは僕よりも何枚も上らしい。

その為か、レックスさんは気楽な感じでいつも通りフレンドリーなのだが、ミルファさんはどうやら若干苦手としているらしく、同じ女性なのにあまり話をしようという感じでは無い。


 お屋敷については中を調べた所、十分な大きさがあり、お嬢様の学院も近いのでそう言う意味でも都合が良い場所だった。

中を見て回ると中々面白い作りで、このお屋敷を建てた人物は相当敵からの襲撃を恐れていた事が窺えた。

主の部屋へ行く為には相当手間のかかる経路を辿り、中央付近に設置されて居る為に窓も無い堅牢な作りとなっていた。


「これは防衛が楽でいいわ」


と、姉さんが行っていた。


 経路は限られ、不意打ちを食らいにくい作りなのでこちらの罠も仕掛けやすいらしい。

因みに、直接的なダメージを与える物は殆ど作らずに拘束系の物を多用する理由は、単純に手間に見合った効果を発揮出来ないかららしい。


 姉さんが習ったクレリアさんの流派ではあまり好まれていなかったらしく、一応作れる程度の魔法回路しか伝えられて居なかった様だ。


「これなら使い捨ての魔石に魔素を封入して、必ず暴走する回路を書き込んだ方がよっぽどマシね」


との事。


 因みに、この暴走させた魔法回路は元になった属性をばら撒いて吹き飛ぶらしい。

例えば火なら爆炎、水なら水蒸気爆発、土なら粉塵、風なら衝撃波だ。

残りの光と闇は僕も知らない。


 ただ、これの問題点は扱い難さにある。

敵味方の識別も無く無差別に吹き飛ばす上、発動は手に持って行う必要がある。


 姉さんの前世にあった手榴弾に、ピンと言う安全機構が無くなって属性が付いた感じとの事。

正確には違うけど大体はそんなもんかな、と言っていた。


 大まかな下見を終え、移動が面倒なのでそのまま移動迷宮を呼びだして移動した。

姉さんの迷宮からだと直接エルナリアのお屋敷まで繋がっているのだ。


 襲撃はいつ来るか分からない。

すぐに準備をして最低でも今日中に領主様だけでも移動して貰い、明日には使用人の方達もこちらへ来て貰おう。

忙しくなって来たが今が頑張り所だ。

絶対に成功させて見せます。

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