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代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第三章
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52、迷宮まで

 僕は一緒に村まで行く予定のゼットさん親子と話をしながら移動した。

王都には弟さん夫婦が住んでおり、その近くに小さいながらもゼットさん一家が住むには十分な大きさの空き家を借りる事が決まっているらしい。

仕事先も弟さんの伝手つてで目途が立っており、何とかなりそうとの事。

リフィアさんも現在十七歳であり、何かしらの仕事を探す予定らしい。

奥さんが王都で現在病状を維持する魔法を掛けて貰っており、完治させる為には相当な金額が必要なのでとにかく頑張ると言っていた。


 村へ着くまでに……まさかのスピアアントの御代りが来たのは衝撃の出来事だったと言えよう。

これは……思ったよりも多い数が巣から旅立っている可能性が出て来た。

そして、今度は速攻で倒す方向なので、《ウィンドウ》の上に表示されている時計で大体の時間も計った。




 ◇ ◇ ◇




 動きは既に理解している為、魔法抜きで大体一分に一本足を切断し、頭を飛ばすまでに約四分かかった。

その魔法核である角をゼットさんへ渡す。


「それも終わったら売ってしまって構わないのですが、王都で報告時には見せてあげて下さい」


「一本あれば見本としては十分だと思いますが……? これがどの位の金額の物なのかは私には分からないのですが……御自分の収入にするべきなのでは?」


ゼットさんとしては、ただでさえ御礼を支払うべきだと思っている所に追加で僕からの素材提供となると……心苦しい所があるのだろう。


「いえ……この魔物は相当危険な存在です。今回退治に乗り出すにしても、どの位の数が居るかで動員される兵力も決まるでしょう。要は、数が多いと認識した方が国も本気で殲滅してくれるはずなのです」


それでもやや気乗りがしない雰囲気のゼットさんに、


「実は、その素材ならすでにそれなりに持っている上……これから仲間と合流して狩りまくる予定なのですよ。正直、渡す分が一本でも二本でも僕的には変わらないんですよね」


と言うと納得してくれた。


 ゼットさんからの、


「確かに、あれ程の実力があるのであればそうなのでしょうね。分かりました。責任をもって王都へ連絡致します」


との答えを聞きながら、僕には一つの不安が頭をよぎって居た。

どうも、追い立てられた猛獣や魔獣は街道付近に良く出没している気がする。

もしこれが、スピアアントから逃げる為に見晴らしのいい場所を選んで行動していると考えるとどうだろうか……?

無いとは言えない。

村がひらけた場所にあるので、この件は村の状況を確認してから考えよう。




 ◇ ◇ ◇




 昼頃に村へ着いたが、村自体は特に問題は無さそうだった。

村長さんの所へ、挨拶と状況の確認の為に行ってみた。


「では、村の中には入って来ないまでも、森の近くには前よりも生物が多くみられるのですね?」


「村人からはそう聞いております。広い所へは来ない様なので、今の所は狩人が喜んで狩って居る程度の違い位ですな」


そうなると、やはり街道が危険で間違いは無いだろう。

ここで問題なのが、ゼットさん達と会ってから二度蟻と遭遇している。

巣の位置から考え、村から遠ざかる部分でも同様の危険があるだろう。

そこで襲われた場合、目的を果たして貰えなくなる。

それは不味い。

これは姉さんに相談かな。




 ◇ ◇ ◇




 村長宅で、村へ来る途中で出て来た獰猛な生物を何匹か狩っていたので、それを持ち込んで料理して貰った。

正確には、獲物を渡すので三人分の料理を食べさせて貰ったと言った方が良い位、しっかりと野菜やパン等も食べさせて貰っている。

その間に姉さんと《通話》で話した結果、


『OK。丁度いいのがあるから、それを渡すといいわ』


そう言って《アイテム》経由で渡されたのは、六級の魔石に紋様が入ったような魔法具だった。


『使い捨て用の《アースシールド》よ。魔素を封入してあるタイプなので、結構時間も持つし防御力も高いわ。30レベルの魔物が相手だと何分持つかは分からないけど、十個全部渡しちゃっても良いからそれで何とか逃げ切れる様に頑張って貰うしかないわね』


との事。

魔石は基本的に九段階で扱われるのが一般的であり、九が最低なので六はかなりいい素材と言える。

九級は1~5レベル、八級が6~10レベル、七級が11~20レベル、六級が21~30レベルの魔物に対応していると考えて貰えれば大体間違っていないとの事。

因みに、それより上はそのまま10レベル刻みだ。


 六級ともなると結構値が張るのだが、老魔術師の迷宮から得られた魔物から相当数作れる事に加え、姉さん独自の方法で魔石をランクアップさせる方法もあるのだとか。

詳しくは知らないが、簡単に言えば姉さんの《魔素の泉》から現れる魔素を浸食させる事で、均一でより強力な魔法物質に塗り替えられるのだとか。

最下級の九級の魔石ならほぼ七級へ、八級なら六級へ、七級なら六と五が半々位の割合と言っていた。


 迷宮から得た魔物素材を多少売って色々買い揃えた中に下級の魔石もそれなりにあったので、移動の最中も色々作って居たのであろう……。

……問題を起こして、実用の為に作った訳では無い事を祈ろう!




 ◇ ◇ ◇




 ゼットさんに魔法具を渡したら……流石に唖然という表情をされた!

これは使わなかった分を返して貰う事にしているのだが、使い捨ての高価な魔法具でわざわざ自分達を守ると言われているのだ……普通はあり得ない。

そりゃそうだよね……なぜそこまで自分達を守ろうとするのかを怪しく思うよね!!!


「そうですね……簡単に言えば、僕や仲間達はまだ目立ちたくないんですよ。因みに、僕の目的は三年で竜を倒して【竜殺し】の貴族になる事なんです。現在でも実力は相当な物になって居ます……が、だからこそ余計な横槍を受け無い為にも目立ちたくは無いのです」


こちらの都合だと言う事を理解して貰った方が、相手には伝わるかなと思ってそう言うと、ゼットさんもリフィアさんもそれで納得してくれた。


「要は、僕達自身が伝えに行けないという事もあるのですが、目立つ部分をゼットさんにお願いする事への報酬と口止め料だと思って下さって結構です」


スピアアント角の売値が実際にはいくらなのかは定かではないが、MPを消費して追加効果が得られる武器は値段が通常の武器より数倍に跳ね上がる。

しかも、スピアは長物武器の中では人気があり、この素材も結構な高値が付くと予想出来る為、報酬としては破格と言えるだろう。


こうして、魔法具の回収の為に後日会う事を約束してから、僕は二人を王都へ送り出した。

後は僕がゲルボド達と合流して、本格的な巣の駆除をしなくてはならない。

それじゃ、頑張って行きましょうか!




 ◇ ◇ ◇




 森の中へ入ると《森林探索》か何かの影響なのか、思ったより迷わずに目的地まで着いた。

途中では蟻との遭遇はなく、やはりエサが居る街道付近に多く出没しているのかも知れない。

巣に入れなくて徘徊している個体が居ないか、探しながら進んだが問題は無い様だ。

しかし、迷宮の外には……ちょっと呆れる光景がそこにはあった!


 角が切り取られた蟻の死体が転がりまくって居る。

軽く見積もっても、百を下回る事は無いだろう。

恐らくだが……何をやったか予想は出来た。


 ゲルボドがわざと敵の匂いを付け、逃げない様に怒りを煽って殲滅する事で周囲に拡散する事を抑え、ミラが後方で経験を積む事も容易にしていたのであろう。

明らかに、地面に残された戦闘跡が酷い事になって居る事からもそう予想が出来る。

一ヶ所に向かって、放射状に並んだ蟻が攻撃を繰り返していたのが一目瞭然なのだ。

僕が戦った際には一人でも集団でもこんな動きはして居なかったので、匂いの力は結構な影響があると思われる。

これを上手く使えないか……後で相談してみないとな。


さて、ようやく本番だ。

何とかして行きましょうか!

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