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代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第二章
37/111

35、迷宮七層 後編

 接敵した敵の弱さに呆れながらも慎重に戦った。

このまま行けるか、と思った矢先にそれは起きた。

ソードドラゴンの身体が沈んでいったのだ。

……これが《迷宮融合》か?


結論。

そのようです。

この能力は面倒な物だった。

流石にパーツで分割されて同時に複数人が攻撃される事は無かったが、足元から突然剣状の角が飛び出して来たり、角が飛び出て来た瞬間に断裂攻撃を撃って来る様になった。

見えない内に予備動作が終わって居る為、回避が恐ろしく難しい。

姉さんは一応魔法用に《ウォーターシールド》も追加で張って置いて、ソードドラゴンが出現した場所に的確に魔法を撃っている。

迷宮に融合している為か、先程までの鈍い動きでは無くなっているので姉さん以外は攻撃がなかなか当てられずに苦戦している。

これがジリ貧と言う奴だろうか……?

しかし、諦める訳にはいかない!

どうにか打開策をと考える。

僕の手札は正直乏しい。

MPもほぼ無く、片手剣の技では決め手にならないだけでは無く、逆に大ダメージを受けかねない。

そうなると技の使用に必要なSPは、《ダブルステップ》による緊急回避に使用した方がいいだろう。

回避に専念しながら考えたが、どうにもならない事だけが分かった……。

僕にもっと実力があれば……悔しさが溢れて来る。

こうなると、姉さんの魔法攻撃で削り切れる事を祈るしかない。

そう考えた時に、ゲルボドの動きが止まったのが見えた。


念動魔法:超能魔力(異世界)…………現在習得不可能


「《瞬移》シャ――!!」


そう言った瞬間、ゲルボドが僕の目の前に現れ、両手剣を僕に目がけて突いてきた。

何故!!

そう思いながら《ダブルステップ》で一気に避けた。

僕の居た場所につのの剣がせり上がってきたのが見えた!

ゲルボドの剣がつのの側面に当たり、つのが僕の方へ傾くのが分かった。

この時、僕は何も考えて無かったと思う。

身体か勝手に動いたとしか思えない反応が起き、再度《ダブルステップ》を使って今度は前へ飛んだ!

盾でつのの側面に《シールドバッシュ》を使って強打する。

当然その反動で後ろに弾かれるが、そこから二回目のステップで勢いをつけて剣に体重を乗せてぶつかった。

その結果、僕の剣は違和感のある感触と激しい金属音を上げながら折れた。

そこに角の反対側からの衝撃。

ゲルボドの攻撃が見事に角を突き破った!


 ゲルボドの剣は、突き刺さって抜けなくなった様だ。

そう判断したゲルボドはあっさりと武器を離し、いつもの片手剣と盾に装備を変えた。

ここで大きく戦況は変わる。

ゲルボドの両手剣は明らかに強力な魔法が付与してある、一級品どころか特級品、下手をしたら伝説級の装備である。

いくらソードドラゴンが暴れようが、全く折れる気配が無い。

折れないと奴にどんなデメリットがあるかと言うと、異物があるせいで迷宮に潜れない様だ。

こうなると、姉さんとゲルボドの魔法の的である。

迷宮と融合して居ようが、角のある位置に魔法を撃ち込んでいたら迷宮の床が血だらけになって行った。

姉さんのMPが尽きる前には決着がつき、命が尽きたソードドラゴンが迷宮から吐き出されて地面に転がった。

姉さんは容赦無く《アイテム》に収納した……。


「シャ――――! 俺のオーディンソードも一緒に無くなったシャ――――!! 融合とかしてないシャ――――?!!!」


あの剣、そんな名前なのか。

そう思って《アイテム》を覗いたら死体とは別アイテムとして保管されていたので、取り出して返した。


「ありがとうシャ――――!!」


姉さんが別アイテムとして管理されるのかを判っててやったのかが不明なので、あまり素直に御礼を聞けないんだが……。

姉さんの方へ視線を向けると、流石に姉さんでもMPの消費が激しく、激しい疲労も見えたので突っ込むのはやめた。




 ◇ ◇ ◇




 姉さんのMPがほぼ無い為、ハッキリ言ってこれ以上の探索は無理だ。

とはいえ、六層に戻る方がいいのかは悩む所だ。

万が一の話だが、睡眠を取っている間に再度ソードドラゴンがいたらと考えると勘弁して貰いたい。

そこで、取り敢えずこの部屋に一つしかない扉の先を見て、小屋を出せそうな部屋が無いかを確認してからという事になった。

雑魚程度なら一~二戦位どうとでもなる、と言う考えだ……。

本当にこの二人は余裕が有るな。

……と言うか、たった今ボスの二連戦をしたわけだが……もう出ない事を祈ろう。


 ゲルボドが、例によって扉の中を確認する。

一瞬止まった様に見えたが、一気に駆け込んだ。

しかし、僕の《危険感知》が異常な警報を鳴らしている!

これは不味い!!

扉の向こうで明らかに格上の魔法使いが詠唱している!!!


自然魔法:火魔法…………聖眼獲得率4%


本気で不味い!!

僕達は火魔法をクレリアさんから得ている。

獲得率は既に獲得している魔法分を除いて判定されるはずだ。

それなのに4%!!

この相手、相当な大魔術師だ!!!


 詠唱の終了と共に大爆発が起こった。

僕はギリギリ範囲に入らなかったらしく、余波だけを受けたがそれだけでもとんでもない衝撃だった。

粉塵舞う室内がうっすらと見える。

《危険感知》が働いていないので、次の魔法詠唱は無いようだ。

しかし、敵が居るならここまで完全に消えるのはおかしい。

……逃げたのか?

そう思った僕が間抜けでした……。

ようやく見えた室内に唖然とした。

無傷のゲルボドと胸を剣で突き刺された老魔術師……。

相手が悪すぎたね……爺さん……。


 まだ息はある様で、瀕死の老魔術師の使用スキル欄に文字が浮かぶ。


スキル:迷宮創造…………聖眼獲得率15%

スキル:迷宮の主…………聖眼獲得率20%


不味い、と思うより……これは? と思ってしまったのは、聖眼で得たスキルで強くなって来た弊害かもしれない。

最も、老魔術師はここで息絶えた様だ。

死体があるうちは獲得出来るが、何かあっても困るので即獲得しておく。

《迷宮創造》を得たが《迷宮の主》は無理だった。


「ルーク! 獲得出来た?!」


恐ろしい勢いで姉さんが、僕の襟首を両手で掴みながら上下に揺すった……姉さん、お願いだから《握り潰し》を有効にしたままそれは止めて……。


「《迷宮創造》だけ獲得出来た。《迷宮の主》は無理だったね」


それを聞いた姉さんが、


「よし!! 今日から私達もダンジョンマスターよ!!!」


と言っていた。

どうやら、姉さんは《迷宮の主》を獲得していたようだ。


 僕たちの入ってきた扉の入口付近には、冒険者の様な恰好に見える……正直、老魔術師の魔法で四散してしまって何人居たのか良くわからない死体が転がって居た。

ゲルボドが言うには扉をくぐったら押さえ込む為に寄って来た様だが、爆発に巻き込まれてこの姿らしい。

室内は七層の構造材が違うようで、人工的な石材で構築された感じになって居る。

広さはそれなりにあるが、そこまで大きくは無い。

老魔術師の居た場所から奥には、様々なアイテムや本、ベッドやテーブル等と言った、生活していたとも考えられる品がそこら中に置かれていた。

そのエリアの横に、堂々と置かれた馬車がある……。

よっしゃぁぁぁぁぁぁ! 見つけた!!

僕は急いで駆け寄り……《アースシールド》にはばまれた……。

姉さんがゆっくりと歩いて来て、魔素の供給を止めた。

……姉さん、近くまで来なくても止められるよね?……自分が遠いからと言って、酷過ぎる……。


「馬鹿ねぇ、女の子四人が数日間もこの中に閉じ込められていたのよ? この恐怖の状況で中がどんな事になっているか判らないでしょ? まずは私が様子を見るに決まっているじゃない。 はい、そこ退いて」


……はい、その通りです。


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