29、迷宮三層
サイクロプススケルトンの居た部屋は流石に骨が邪魔で小屋が出せなかった。
魔物の死体等はしばらくすると迷宮に吸収される。
魔物には魔法物質が含まれるので、それを吸収している可能性が高いようだ。
しかし、骨等の固い部位は若干の時間がかかる。
このデカい骨ではいつまで掛かるか分からないので、もう少しだけ進む事にした。
因みに骨を全て《アイテム》に入れておこうかと思ったら、骨の名前毎に収納場所が別れて酷い数になったので、大きい骨を数か所だけ持っていく事にして後は放置だ。
多少進んだ位置で下への階段と、その近くに丁度いい部屋が有ったのでそこで小屋を出して睡眠を取り、MPを完全に回復させてから、食事を摂って準備を整えた。
第三層の魔物は魔法生物系だった。
魔法生物と一括りにする事は出来ない位、多岐に渡る生態をしている。
ゴーレムが多く、基本的には石か鉄で出来て居た。
他には合成生物系のキメラ、二~四種類の生物が融合した魔物で素材ごとに特色が違う。
それらを二十戦ほどこなした後に会ったのはスライムだった。
姉さんの認識のスライムは雑魚、ゲルボドは物によるけどそこまで強くない、だった。
しかし、このスライム……酷過ぎる敵だった。
僕とゲルボドが、まずは剣で斬り刻んだ。
切り裂く度にすぐにくっ付く……。
姉さんがコアは無いかと探したが、特にそういった何かを発見出来なかった。
「水分多いし、炎で乾燥させてあげるわ!」
そう言って姉さんが火炎魔法乱舞、ゲルボドや僕も撃ちまくる……火無効……しかも《聖眼》が効かない……スキルじゃないらしい。
姉さんが今度は水と風の変換魔法である氷属性系統の魔法を使う。
姉さんの知識である異世界知識によると、風魔法で発生させた真空中に液体を入れておくと気化熱で熱が奪われる事により氷が出来る云々……ま、まぁ……いいや…………。
因みに、氷の魔法自体は水属性魔法に普通に存在する。
姉さんは威力を上げる為に、別の方法での氷魔法を使ったのだ。
その後も各種ダメージ魔法を撃ち込まれまくったスライムは全ての魔法を無効化した……。
こいつ、無敵なんじゃない……?
考えられる限りのダメージを与える方法は試した……惨敗。
偶に攻撃してくるが余裕で回避できるので全く怖くない……完全に嫌がらせの為に居るとしか思えなくなって来た。
勿論、《識別》で調べてから戦闘しているのだが、
スライム族:カオススライム:女 LV28
特殊情報:《混沌の結晶》《迷宮の虜》
という、特に無敵とか無効系の情報は無かった。
耐性まで見えるようになって居ればもしかしたら何か有ったのかもしれないが、姉さんもまだそこまでは見えないらしいので不明だ。
敢えて言うなら《混沌の結晶》が怪しい位か…………って、性別あるのか……。
こいつの困った所は、攻撃速度は遅いのに、移動速度は速いのだ。
振り切る事が出来ないので、他の魔物との戦闘の時に邪魔になってしまう。
困った末に何となく、僕の十八番だった《スティールMP》を使ってみた。
「スライムにMPなんてあるの……?」
姉さんが疑問を口にしたが、なんとMPは吸えた……。
その事を伝えて、二人で吸いまくった結果……気絶したらしく、動かなくなった。
姉さんは明後日の方向を向きながら、
「強敵だったわ…………」
そう呟いた。
対処法がわかったのでもう怖くなくなったのだが、このまま放置して良い物か悩んだ。
僕達の場合は闇魔法という反則技で強引に倒したが、他の人が今後このスライムの餌食になる可能性もゼロでは無い。
出来れば倒しておきたいのだが、昏倒していてもやはりダメージは通らなかった。
もう放置でいいか……そう、決着がつきそうな場面で姉さんが又とんでもない事をやってくれました。
《アイテム》へ放り込んだのだ。
……はぁ?
僕達の《アイテム》に生物は入らない。
もし出来るのならば、時間停止の効果も考えれば人を運ぶ事すら余裕になる可能性もあった。
しかし、子供の頃の虫に始まり、最近ではゴブリンでも試したが生物はやはり無理だった。
それ故に試さなかった《アイテム》に、すんなり入ってしまったようだ。
アイテム名は《活動停止中のカオススライム》だそうだ。
まぁ、解決したのだから何も言うまい。
そういえば、一点気になった事がある。
迷宮は魔法物質が少ない為、威力が減少する。
《スティールMP》の視覚的な大きさは小さくなっているのだが、効果は変わらなかった感じがした。
もしかしたらこの魔法は、魔法物質量に依存しないタイプの魔法なのかもしれない。
その後は順調に戦闘を重ねて……いやいや! スライムが酷過ぎただけでそれを比較対象にしては駄目だ!
相変わらず、戦闘を重ねすぎです!
どうもこの迷宮の魔物はテリトリーが決まっていて、ほとんど移動して居ない。
時々弱い獣系の魔物が沸くのだが、こいつ等には《迷宮の虜》と言う特殊情報が無く、元から居る魔物に狩られて喰われて居る。
おそらく、食事用に湧いて来るのか召喚されている存在なのだろう。
そして、この移動迷宮と言う特性と、迷宮の主自身の意思で僕達に敵対している以上、このエンカウントは固定の敵なので必須戦闘という事になる。
言っては何だが……すでにこの旅の前までに戦ってきた魔物の匹数を、この迷宮だけで超えそうな勢いだ。
まぁ、そんな事を言っても戦う数は変わらないので、素直に進もう。
◇ ◇ ◇
後半はゴーレムが多めだった。
特に強い方であるアイアンゴーレムが多かった。
そう、アイアンゴーレムが多かったのだ。
このゴーレムは僕の身長より高い。
そして全体的に太く、相当なボリューム感がある。
すなわちその重量と言ったら酷い物だ。
それがすでにどの位倒したのかを、思い出したく無い程《アイテム》に貯まっている。
「これ、どの位で売れると思う?」
そう姉さんが言った……。
いくら鉄とは言え、これだけ量があればどれだけの金額になるのか……想像が出来ない。
まぁ、まずは生きて帰る事が重要だけどね!
気を抜かないでこのまま頑張ろう。
◇ ◇ ◇
嫌と言う程の戦闘を繰り返した結果、ようやく階段を見つけた。
そこには今までより明らかに格上であろう存在が待っていた。
ゴーレム族:シルバーゴーレム:性別無し LV30
特殊情報:《迷宮の虜》
ゴーレム族:ゴールドゴーレム:男 LV30
特殊情報:《黄金の心臓》《迷宮の虜》
今までのゴーレムより大きく、ゴールドは甲冑を着た騎士の様に見え、シルバーは馬に防具や馬上槍を括り付けた姿に見える。
……まぁ、嫌な予感しかしないです。
予想通りでした。
戦闘開始と同時にゴールドがシルバーに乗り、一気に突撃してきた。
スキル:戦闘馬術 スキル:騎乗槍
二つのスキルが使用スキル欄に現れる。
ここに至る通路は百m程の直線の一本道だった。
すなわち……こいつのランスチャージが往復でやって来るのだ。
ゲルボドですらこいつの攻撃を正面から受ける事は危険と見て、回避に専念している。
問題は姉さんだ。
魔素は肉体を通して馬車に流れているので、存在自体はしている。
一度姉さんの身体に貯まって、そこから腕輪から流れているからだ。
この魔素のお陰で姉さんの素の防御力はそれなりに上がっているので、例えこの攻撃が当たったとしても死ぬ程ではないらしい。
しかし、《フルブースト》を使用出来ない為に、その回避能力は皆無である。
結果、耐えられるかもしれなくてもそうそう喰らう訳にはいかないので、姉さんの前に斜めに置いた《アースシールド》を二人でかけて何とか軌道を逸らしながら耐える。
階段側に少しづつ移動する事で助走距離を無くし、ランスチャージが出来る機会を半分にする。
僕はそう思っていました……。
「階段を一気に駆け下りて!!」
姉さんがそう叫んだ。
ゲルボドは当然の様に駆け下りながら、
「OKシャ――――!」
そう言いながら一気に降り、次の階に降り切った瞬間に反転する。
因みに、いつからこの作戦が決まっていたのかは分からないが、姉さんはゲルボドがお姫様抱っこで抱えて降りていた。
明らかに計画的だな、これは。
「ルーク、敵の前にリキャスト毎に《アースシールド》!!」
姉さんはそう言うと、自分では《アースシールド》と大火力魔法を交互に連発し、ゲルボドも魔法で攻撃する。
……ゲルボドの魔法は火力が上がると範囲が広くなる物が殆どらしく、《アースシールド》の破壊に一役買っているな……。
姉さんが特に何も言わない様なので、計算の範囲内なのだろう……。
僕のMPが尽きる前に、何とか沈黙させる事が出来た。
倒したゴーレムは有難く《アイテム》に入れた。
これだけの金銀……幾らになるんだろうか……。
そして金色に輝く塊が落ちている。
アイテム名:『黄金の心臓』、だそうだ。
なんだろ、これ?




