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代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第二章
30/111

28、迷宮二層

 ゲルボドが先頭で移動しているこの迷宮探索だが、どうやら進む道を決めているのにはルールがあるようだ。

分かれ道があると、必ず右に曲がるのだ。


おとこなら右シャ――――!」


との事。

流石に意味がわからないので、不安になって姉さんに視線を向けると、


「迷宮攻略の手段の一つで間違い無いわ。常に右か左を決めて進むの。そうすれば単純な迷宮ならいつかは階段が見つかるわ」


もし最初の出口に出るようなら行ってない場所に移動して同じ事を繰り返して全てのルートを埋めるとの事。

そしてここで衝撃の事実。

姉さんは特に描ける物等を持って無かったので地図は作成して無いと思っていたのに、密かに《紅の剣》以外の《ウィンドウ》の機能を使って描いていたらしい。

表計算ソフトを使って方眼紙の代わりに云々と言われたが理解出来なかった!


「今回は気にしなくて良いわ。とにかくシェリー達の救出が最優先なのだから、移動と戦闘に集中する事」


今回は仕方が無いけど、もっと落ち着いた場所で迷宮攻略の方法を教えて貰おう。

そう心の中で誓った。


 ゲルボドを先頭に黙々と進み、この階層でも数回の戦闘を行った。

第二層の敵はアンデットの様だ。

確認した魔物は亜人タイプのスケルトンが数種類、骨格から見てゴブリン、オーク、リザードマン、ミノタウロス辺りだと思われた。

次にゾンビ系、そちらはほぼ魔獣系で本来は比較的重鈍な動きをするゾンビ系のくせに意外と速い。

ちなみに姉さんはスケルトン系とは普通に戦うのだが、ゾンビ系が出ると即大火力火炎魔法を連発して焼き尽くしていた。


「あんなのに触られたくない! 触られた奴らに近づきたくない!! 即燃やす!!!」


だ、そうです。

実際に僕達が接敵する前にほぼ焼き尽くされていました。

楽は楽なんだけど、この戦闘には問題もある。

姉さんのMP消費が多すぎるのだ。

僕から見たら膨大なMPを誇る姉さんでも、この迷宮のエンカウント回数を考えると二層攻略中か三層に入った辺りで休憩する必要があるだろう。


「流石に自分のMPの多さを過信していたわ。ここまで連戦させられる迷宮なんて想定してなかったしね」


いや姉さん……MP消費の多さはゾンビ系に対する過剰殲滅による弊害なのですが……いや、敢えて言うまい。

それを突っ込んだら絶対十倍に増幅された反撃がやってきてノックアウトされる。


 その後の僕達は順調に進んだ。

そう! 順調に進んだのだ!!

要はゾンビ系がほとんど出なかった!!!

加えて、スケルトン系にはスキルを持つ敵がたまにいるようだ。

ここまでの習得スキルは、


スキル:両手槍 耐性:毒 どちらも聖眼獲得値は熟練度15


……そして、今目の前に変と言うか……可哀想なスケルトンが居る。

魔術師らしくボロボロの杖とローブを装備しているのだが、崩れる、再生する、又崩れるのエンドレスで他に何も出来ないらしい。

どうも、スケルトンにあるまじきスキルを持ってしまっているようだ。


能力 :自動HP回復…………勝手にダメージを受ける

スキル:肉体再生…………骨が折れても再生できる為か、肉は無いのに効果がある様だ

能力 :自動MP回復…………肉体再生は自動ではなく、任意タイミングでMPを使うようなので減ったら発動

以下繰り返し……悲しすぎる。


スケルトンは聖魔法の浄化系か、魔法核を砕く必要がある。

自動HP回復では消滅出来ないらしく、この無残な姿をいつまでもさらしている。

取り敢えずは姉さんと僕はゲルボドに攻撃しない事を指示して、ジッーっと見続ける。

何周かした段階で全てが100%になったのでサクッと習得した!

有難ありがとう! 本当に有難ありがとう!!

どう見ても役に立つスキルです。


この可哀想なスケルトン、本当にいつからこうしていたんだろう……。

全ての聖眼獲得値が熟練度50を超えています……。

無限機関の恐怖……。

そのスケルトンは流石に可哀想なので、聖魔法で浄化してあげました。


 迷宮にありがちな時間感覚の喪失は、僕や姉さんには《ウィンドウ》の時間表示があるので存在しない。

襲われたのが夕方だった事も有り、夜をてっして探索を続けてきたがここらで一時休むべきだろう。

寝ている最中に襲われるのは好ましくない。

そこで、一つだけの扉で仕切られた部屋に入り、その扉を塞ぐように小屋を出して休む案を採用する事になった。


「それじゃ、扉を開けて他に出口の無い部屋を見つけたらそこで休みましょう」


「わかったシャ――――!」


姉さんに答えたゲルボドが近くにあった扉を開ける。

いつもなら、即踊り込んでいくゲルボドがキッチリ三秒硬直してから勢い良く扉を閉めた。


「…………なんかデカい骨が居るシャ――――!!」


でかい骨…………?

イマイチわからないので、自分で静かに扉を開けて《危険感知》に反応が無い事を確認してから覗いて見た。

…………確かにデカい骨でした…………。


「あれ、サイクロプスのスケルトンね」


僕の後ろから覗き込んだ姉さんがそう言った。

ハイ、どう見てもその通りでした。


《識別》してみた所、


アンデット族:サイクロプススケルトン:男 LV25

特殊情報:《不死》《迷宮のとりこ


だそうだ。


サイクロプスと言うのは一つ目で身長十mを超える巨人だ。

亜人扱いされる事もあるが、そのまま巨人として扱われる事の方が多い。

さて、この巨人は十mの身長を持つのだが、ここは迷宮の中だ。

高さは多少差がある場所もあるが、基本的に三m。

つまり…………こいつ、立っていません。

うつ伏せの状態でこちらを見ている状態なのだ。

……ダァァァァァァアァァァアァァァ!!

こんなの迷宮に入れるんじゃないよ!


部屋自体はそれなりに大きいのだが、如何いかんせんコイツが動き回るには狭すぎた。

骨だけなので隙間を利用して色々動く事は出来るのだが、窮屈すぎてあまりうまく動けていない。

最も、近接戦をやったら酷い目にあいそうではあるが。

そこで、まずは室外からの火炎系魔法を連続発射。

これまで魔法を使っていなかったゲルボドも、広範囲爆発魔法を使用していた。


詠唱魔法:魔術師魔法(異世界)…………現在取得不可能


だそうだ。

他にも色々有りそうなのでいずれ聞こう。


 魔法核は頭部の額部分に生えた角の様で、集中砲火で魔法を撃ち込んだが破壊までは出来なかった。

相当なサイズの魔法核なので魔素程では無いまでも、高密度の魔法物質が存在しているらしくて魔法の効きが悪い様だ。

現在、両腕とも広範囲魔法の影響で肘関節を破壊されて分離しており、上腕骨も相当なダメージで攻撃に使える状態では無さそうだ。

そう判断した僕とゲルボドは、一気に接敵して攻撃を開始する。

ゲルボドは長さと破壊力を取って、両手剣で魔法核周辺を斬りつける。

僕はリーチが足りないので一旦胸部側へ抜けてから胸骨と肋骨を足場に頭部側へ移動し、鎖骨を蹴って下顎骨に着地、そこから一気に魔法核のある角の裏側へ剣を突き入れる。

流石に大量の火炎や爆発を喰らってボロボロになっていた骨は容易く崩れた。

内と外の両側からの衝撃に角を支えていた骨が耐えられなくなって崩壊する。

落ちて行く角を追って、姉さんが動いた。

魔法核がある限り切り離そうが消滅しないので、まだ油断は出来ない。

しかし姉さんは意外な行動で戦闘を終わらせた。

落ちて来た角をそのまま《アイテム》へ入れてしまった。


「これだけ強力な魔法核なら、核だけで相当高ランクの魔石が作れるわ」


……流石は錬金術師、そんな事を考えていたんですね……。


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