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代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第二章
32/111

30、迷宮四層

 ゴールドゴーレムから得られたアイテム『黄金の心臓』なのだが、《識別》により鑑定した結果、


黄金の心臓:英霊を宿らせることが出来る魔法具。英霊を現世に留まらせる効果がある。


だそうだ。

もしかしたら、さっきの騎乗攻撃は宿っていた英霊とやらの得意攻撃だったのか……?


 僕のMPは先ほどの《アースシールド》の多用で正直もう厳しい。

しかし、今はまだ探索を始めてから睡眠を取る程の時間は経っていない。

救出を優先して考えると、今はまだ早すぎる。

できるだけ早く助けてあげたいのだから。

結果、この階層の敵の傾向を見てから決める事になった。

魔法以外効かないとなったらアウトだが、姉さんとゲルボドだけの魔法で済むなら僕は前衛に徹する事で何とか出来る。

一応言っておくと、《自動MP回復》はスキルの低さから雀の涙としか言えない程度の効果なので、この迷宮探索の間に直接戦況に関わる様なことは無いだろう。


 遭遇した相手は亜人だった。


ゴブリン族:ハイゴブリン:男 LV28

特殊情報:《迷宮の虜》


を先頭に、計六体。

正直、こいつには期待大です。

骨エリアでもスキル持ちは居たのだが、LVに対してスキルが低い傾向があり、両手槍以外の武器スキルは得られなかった。

そもそもあいつ等、武器を持っていてもすぐ素手で殴って来たしね……。


 このハイゴブリン達だが、武器が前衛は片手剣と盾、後衛は弓で統一された三:三の構成だ。

戦闘が始まった段階で姉さんがスキルの獲得を考慮した行動に出た。

いつの間にか《ショートカット》を変更したらしく、突っ込んできた前衛の前に《アースシールド》を三枚、僕達の前に《エアシールド》を三枚ほぼ同時に出現させた。

当然ハイゴブリン達は次々とそれらを攻撃して行く。

……はい、獲得確率がガンガン上がっていきます。

攻撃パターンは少ないらしく、すぐに80%以上になったので獲得して行く。


片手剣……聖眼獲得値25 短弓……聖眼獲得値24


よっしゃぁぁぁぁぁ!

念願の片手剣スキルが更新されました。

ちなみに、こいつらはパターンの少ない攻撃しか行わないのに、僕がスキルを上げた際の見本になるのかと言うとそこは関係ないらしい。

《女神の祝福》の効果により、女神が持つ知識から情報を得ている様だ。

元々、勇者様の成長促進用のシステムらしいしね。


 スキルの獲得を告げると弓持ちは姉さんが魔法を撃ち込んで撃破、前衛は僕が一匹と戦っている間にゲルボドが二体を倒した。


「手応えが無いシャ――――!」


そう言っていました。

僕のLVはこの迷宮で戦闘を続けさせられていたせいで現状は23になっている。

普通に考えて速いと思う。

しかしこのトカゲ、


鱗人種:リズーマン族:男 LV28(異世界LV85:現在弱体中)

特殊情報:《セト神の信徒(異世界)》《称号保有者(異世界)》


だそうだ。

どうも、こちらの世界に来て弱体しているらしいのだが、僕達の聖眼獲得値と同じ位の速度で馴染んでいるらしく、急速に強くなっていっている。

しかも、異世界で85LVだったのかを聞いたら違うらしい。

どうもこちらの世界基準の強さがLV85らしく、本来LV80を超えるのは勇者の仲間、LV100を超えるのは勇者のみらしいので、その強さは勇者の仲間クラスまで到達するようだ……。

普通に化け物です……。

姉さんにしろゲルボドにしろ、異世界人って容赦無い強さだと実感する今日この頃です。

それでも……僕だって強くなっている実感はある。

勇者様の能力のコピーである以上、勇者様の仲間と同じ位には強くなって見せる!

そして、もし本当にそこまで強くなれるのなら、僕にだって勇者様の御手伝いが出来るかもしれない……。

そんな事を夢見る事もあるのは事実だ。

もっとも、今は堅実にこの迷宮を攻略してお嬢様を助ける事が一番の目的だ。

姉さんが言うには最初はずっと続いていた大量な魔素の流出が収まっている様なので、馬車への攻撃は止んでいる様だ。

ただ、こちら側で魔素を消費している最中に攻撃が始まった場合は、《アースシールド》が破壊されてしまう可能性もある為、このまま魔素は使用しないで進行するようだ。

ゲルボドの動きが急速に良くなっている事もあって、今の所は順調に進んでいるので問題は無さそうではある。




 ◇ ◇ ◇




 例によって各ブロックの魔物を連戦して進行した結果、


スキル:強弓 スキル:両手鎌 スキル:両手棍 耐性:生気吸収 耐性:気絶


色々と獲得できた。

聖眼獲得値は23~25だった。


 僕のMPが正直キツイのだが、《ショートカット》の一つを《スティールMP》に当てる事にした。片手剣スキルが伸ばせるので基本的には前衛として戦いながら、余裕がある時にMPを吸収しながら進むスタイルに変えた。

そろそろ探索した時間的にも結構経つので、この階層の階段が見つかったら休憩する予定だ。


「階段があったシャ――――!」


ゲルボドの言う通り階段はあった、しかし例によってそこを守る魔物も存在した。


オーク族:オークキング:男 LV30

特殊情報:《無限食欲》《鋼の胃》《異次元回廊の腸》《迷宮の虜》


……特殊情報は見なかった事にしよう。

周囲にはオークは計十二匹いる。

数としては中々多い方だが、この階にしてはLVが低くてLV15~20程度だ。

オークは種族的には特に弱点も耐性も無い筈なので、各自で好きに範囲魔法を使った。

姉さんが最初に発動して火炎系の範囲魔法で焼豚にする。

次いで僕の魔法が発動し、土系広範囲魔法の《ニードルシャワー》で鉱物の針がオーク達に突き刺さる。

最後にゲルボドの風系の魔法らしい真空の刃が縦横無尽に切り裂き、すでに瀕死だったオーク達はなすすべも無く輪切りにされて息絶えた。


 オークキングは流石でした。

《無限食欲》……恐るべし……。

周囲に転がった焼き豚を見た瞬間に、こちらの事は目もくれずに仲間だったはずの焼き豚を貪り喰い始めた。

姉さんが僕とゲルボドを順番に見る。

その眼は……『これ、どうする?』……と言う意味だろう。

それに答える様にゲルボドが自分を指差して……俺がる……と言うジェスチャーをする。

勿論もちろん僕や姉さんもほぼ同時に攻撃するのだが、奇襲する為に敢えて僕達はキングの前方に移動し、ゲルボドは後ろに回って音を立てずに武器を抜く。

武器は両手剣の方を使うようだ。

ゆっくりと近づき、僕達に行く事を眼で合図してから一気に首に向けて剣を振りぬいた!

その一撃でオークキングの首が飛んだ。

その瞬間、ゲルボドの使用スキルに《首切り(異世界)》…………現在習得不可能と出た。

……即死攻撃ですか!


 戦闘も終わったのでゲルボドに《首切り(異世界)》について聞いてみた。

ゲルボドの世界では普通に存在するスキルらしいのだが、あくまで首を一撃でねられるチャンスを感じる事が出来るスキルらしい。

暗殺者系の職業だとそれなりに発動するらしいのだが、ゲルボドは本職ではないので雑魚相手でも精々5%位らしいのであまり役には立たないとの事。

今回は完全に不意打ちだったから上手く発動したのだろうとの事。

流石に無条件で即死では無いようだ。

そして姉さんはブレる事無く、魔石の素材と言いながら《アイテム》に死体を放り込んだ。

この魔物なら生命力が高いらしく、中級クラスの中でもそこそこ良い魔石が出来るようだ。

クレリアさんと一緒に旅の準備して居た時に付与魔法にも色々興味が出たらしく、素材として色々使える魔石は数が欲しいとの事。

時間的にもそろそろ一度睡眠を挟んだ方が良いので、予定通り一旦小屋を出せる部屋を探した。

五層に入ってすぐ目の前の部屋が問題無く使えそうだったので、今回はここで休む事にする。


食事や入浴を終えてすぐに寝る事になる。

姉さんは太るのが怖いと言ってはいたが、お嬢様達の救出の為にはとにかく時間を無駄にしたくは無いので率先して寝具に横になっている。

そんな状況なのだが、正直僕はあまり寝付けない。


 皆の事が心配だという事は間違いない。

そんな中でも……特にお嬢様の事を考えるともやもやした感情が渦巻く感じがする。

迷宮内でも思い出す度に針が刺さったかのような痛みを感じる事すらある……。

正直な所、僕の中でお嬢様の存在が大きくなっているのは感じている。


 こうして頭の中が整理のつかない状態のまま時間が流れていくと、


「また眠れないの?」


そう言って姉さんが声を掛けて来る……。

やっぱり又こうなってしまったか……。

こうして僕の意識は途絶える。

何が起きたのか……はい、姉さんに《スティールMP》で昏倒させられたんですよ!!

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