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代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第二章
24/111

22、グリーンオーガ

 現れた魔物はグリーンオーガと呼ばれる身長二百五十cm前後の亜人だった。

基本的に亜人とは知性が低い人型の魔物の総称だ。

ゴブリンやオーク、リザードマン、ミノタウロスやラミアといった人間の特徴を持つ者達で、基本的に人間と意思の疎通が出来ず好戦的である。

ラミアと同じ様に上半身が人間で下半身は蛇ではなく魚であるマーメイドは友好的で交流もあり、エルフやドワーフと同じ妖精種として扱われる事からも意思の疎通の点が分かれ目なのは確からしい。

これらに加えて種族的分類としてはもう一つ、獣人種が存在する。

この種族は内部で二種類に分類され、獣寄りか人寄りかで見た目が全く違う。

獣寄りは身体能力が高く、獣が二足歩行となった姿をしており、人寄りは人間に獣の耳と尻尾がある程度である。

獣寄りはあまり人間の街には出てこないで自分達の集落に住み、人寄りは比較的多く街で暮らしている傾向がある。

これは人寄りの獣人は集落では身体能力の関係で、お荷物扱いされる事が多い事に由来するらしい。

逆に獣寄り獣人には集落での中心的な立場やプライドの点から人間の街は好まないとの事だ。


 さて、話を戻して目の前の敵に集中しよう。

グリーンオーガは森林地帯に多く、水と土属性に強く、火属性に弱い。

これは色付きの個体特性らしく、属性魔法習得での耐性上昇と傾向が異なる。

僕は敵が単体である事と周囲に被害を出さない為に、単体火属性魔法の《ファイアジャベリン》を《ショートカット》から使用した。

各属性を用意している為に火属性の単体魔法は一種類しか《ショートカット》に入っていない。

《危険感知》で感じられる反応はこのグリーンオーガ一つであったので馬車を止めて迎撃する。

姉さんが攻撃魔法では無く、《フルブースト》を使って一気に接敵したからだ。

その動きは正直今の僕では全てを完璧に捉える事すら出来ないスピードだった。

敵の直前で僕から見て左へ方向を変えて姿勢を低くした状態から、すれ違いながら足を引っかけて転ばしたのは理解できた。

転んだ瞬間に脇腹に爪先からの蹴りを一撃、即離脱。

グリーンオーガが全くその動きに反応出来て居ない速度で反撃の為に姉さんの足があった場所に手を伸ばした。

《スキル:握り潰し》が敵スキル欄に現れる。

一瞬姉さんが喜びの表情を見せたのは見なかった事にする……。

姉さん、《フルブースト》を使いだしてからかなり野蛮になっていますよ……。


 そこからは完全に姉さんの独壇場だった。

蹴っては離れを繰り返す、《握り潰し》を誘発させて聖眼の確率を上げているのがあからさまだ。

100%になった途端に戦い方が変わった。

蹴った後に適当に掴めそうな箇所に手を伸ばすのだ。

一瞬だけ掴んで一気に離脱する。

その一瞬だけで掴まれた場所が紫色に変色している。

亜人は基本的に赤い血をしているので内出血をしているのだろう。

恐ろしい勢いで目の前を出入りする姉さんに全く対応出来ずにグリーンオーガは生命力を削られていき、ついにその命は潰えた。


「流石お姉様、凄いです!」


お嬢様がそう言っていたが……確かに凄いです。

でも、姉さんは魔法の修行をしていたはずで……どうしてこうなった……。

しかし姉さんからは真逆の答えが返ってきた。


「これは実戦ではまだまだ使えるレベルとしては厳しいわね。グリーンオーガは精々ランク四で相手する程度の魔物で動きは直線的かつ単純、それを単体相手にこんなに手こずる様ではまだまだね。スピード重視のタイプや技をメインに戦う相手にはこんなに簡単には行かないと思うしね」


あれだけ余裕で勝っていたのに不満だらけのようです。

しかも、《通話》で更に追加情報を伝えてきました。


『前に魔素を使用して《フルブースト》で蹴った際に私が再取得したスキルがあるんだけど、《格闘術(異世界)》ってのがあるのよ。まぁ私が前世で使っていた戦い方なんだけど、思いっきり現在の熟練度が1だったわ……。これから再度熟練度を上げて行かないとこの先役にたたないわね』


あれでまだまだとか、先は長そうです……。


 とりあえず《握り潰し》は僕も習得したが、確かにこれは良いスキルだった。

どうやら《握力強化》というスキルの上位であるらしく、文字的には凶悪なイメージだが力加減を調整する事が可能で武器や盾を衝撃で離してしまう事を抑止できるようだ。

非戦闘時にはスキルをオフにしておけば間違ってしまう事もないし日常生活にも問題ないはず。

まぁ、姉さんは確実に肉弾戦の為に使うだろうけどね……。




 ◇ ◇ ◇




 この辺りで遭遇する魔物や亜人は姉さんなら余裕な相手が多い事が判ったので、その後は僕の修行を兼ねた戦い方にしている。

《危険感知》に反応があった場合にはすぐに姉さんと御者を代わり、僕が剣と盾を装備して開幕は魔法を使ってから接近戦で戦い、幅広く色々なスキルを使用して戦力の強化に励んだ。

ちなみに盾はこの旅に出る際に購入して使い始めたばかりだ。

回避メインの戦い方だったので使用して居なかったのだが、これからは後衛を守る戦い方も必要になるので現在練習している。


 日が暮れる前に森を抜けた。

多少の起伏はあるが魔物が潜める場所は確実に減ったので今日はこの辺りで移動を終わる事になった。

道から少し外れてあまり目立たない場所を探して小屋を《アイテム》から出す。

馬達を馬車から外して馬小屋に入れて、水や食事を与えてから馬車を《アイテム》に仕舞い、居住エリアへ入る。

先に小屋に入って紅茶の用意をしていた女性陣が全員中に居る事を確認して入口の前に入浴小屋を出す。

手の空いていたメイドのルルさんがお風呂の準備をする為に中へ入っていく。


 僕はすぐに手を洗ってから(姉さんは昔からこれに関しては恐ろしく五月蠅うるさいので習慣になっている)淹れて貰った紅茶を飲んだ。


「ルーク様、今日もお疲れ様でした」


お嬢様がそう言って優しく微笑みながら労ってくれる。

こんな綺麗なお嬢様と話す機会なんて皆無だった僕が、こんな面と向かって話をさせて貰えるなんて恐れ多いとは思うのだがこの旅の間はメイドさんも含めて同じテーブルに着いて食事をする事になって居る。

紅茶を飲むのも当然同じテーブルとなる訳だが一つ問題もある。

姉さんいわく、


「ルルはほんわか、ラナは若干キツイ性格ね」


と言う感じなのだが、ラナさんの視線がお嬢様と話をしている時はかなり険しい顔をしてこちらを見ている。

どう見ても好かれているとは思えない。

お嬢様に下賤な冒険者風情が親しくするなという事なのかもしれない。

少し悲しいと思う感情もあるが事実である以上諦めても居る。

失礼にならない程度に返事をするがこちらからはほぼ話しかけない、それがこの数日で学んだ対応だった。


 この後はお風呂が沸いたら順番に入る。

先ずはお嬢様が入るのだが、ラナさんが一緒に入って御世話をする。

次に姉さんとルルさんが入り、僕が最後に入ってその後に食事となる。

食事は基本的に準備してある物を食べるのであまり準備に時間は掛からない。

食事の後は食器を片付けてから後は寝るだけだ。

流石に食べてすぐ寝る訳にもいかないので暫く自由時間となるが、僕は大体今後必要な本を読む事にしている。

領主様の所に有った本を借りているのだが、お嬢様を送り届けた際に返却する必要がある。

移動中には読めないのでこの時間しかない。

貴重な本なのでしっかりと覚える為には真面目に頑張るしかない。

まぁ、そうは言っても疲労からくる睡魔には負ける事もある訳で……。


……おやすみなさい!

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