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第39話:エンカウント


ーー上野フェーズ


テレビをつけても、スマートフォンを開いても、新聞にも。


井口徳島県知事。


集団告訴。


「随分と人気者になったな」


地方議員や県議、市議まで巻き込み、一斉に告訴。


トクリュウ側のこちらの拠点が次々と潰されている。


指示役同士の連絡が切れ、実行役だけ残った。


一部は勝手に強盗へ入り、住人に抵抗され。


最後は警察に囲まれ逮捕。


「馬鹿だな」


だが。


デポルはいる。


人間もいる。


仕組みもある。


また、作り直せばいいだけだ。


俺はいつだってそうしてきた。


秘書が資料を置く。


「総理、会見の時間です」


俺は立ち上がった。


・

・

・


記者は多い。


しかし、問題はない。


井口知事らからの刑事告訴。


政治工作。


ハニートラップ。


不正アクセス。


質問が一斉に飛ぶ。


私は一つずつ答えた。


否定する。


逃げない。


怒らない。


「事実無根ですねぇ。せやから、私は全面的に、捜査協力しますよ!」


親しみのある関西弁を忘れずに。


それだけ。


総理大臣が狼狽える必要はない。


会見を終え。


執務室へ戻る。


机の上には。


告訴した政治家たちの資料。


金。


女。


過去の発言。


家族。


後援者。


探せば何かある。


何もない人間など。


ほとんどいない。


「順番に出せ」


翌日。


一人。


告訴団から離脱。


翌々日。


もう一人。


記者会見を中止。


ネットでは。


井口側への疑問も出始めた。


ニュースの扱いも。


少しずつ、小さくなる。


これでいい、消す必要はない。


薄めればいい。


問題は裏側。


大阪と東京で暴れているデポルたち。


井口の兵隊と真壁隼人。


「随分と壊してくれたな」


だが、動きは分かりやすい。


私は地図を見る。


まだ使っている拠点。


もう捨てる拠点。


そして。


最初から捨てるために残してある場所。


「ここを空けろ」


部下がこちらを見る。


「襲わせるんですか?」


「ああ」


井口は、自分が追い詰めていると思っている。


だから、もっと進ませればいい。


深く、こちらへ。


戻れなくなるところまで。


「集まったところで拠点ごと潰せ」


部下が頭を下げる。


私は椅子へ戻った。


有利なのは、まだ俺だ。


魔法も効かない。


兵隊の数も違う。


政治権力も、まだこちらにある。


「まずは、井口勢力から一網打尽だ」


今頃、潰し回ってる連中は、計画通りいってると思っている。


恐らく次に狙うのは大規模拠点。


意気揚々と大勢で攻めてくるだろう。


「はは、飛んで火に入る夏の虫、だな」


魔王に楯突く貧弱な勇者は、こうして潰されていく。


始まりの街(とくしま)から出て、大冒険だ、とワクワクしているところ悪いが。


さっさと死んでもらおう。


魔王討伐に出た勇者一行に、死はつきものなのだから。

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