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第37話:下剋上開催


ーー井口フェーズ


「契約終了、だな」


形式上は。


これで終わり。


随分と短い付き合いだった。


違うか。


最初から長く続けるつもりはなかった。


私は椅子にもたれた。


知事室。


机の上には、資料が広げてある。


写真。


録音。


送金記録。


偽名義。


そして。


女性との写真。


「随分と豪華な罠だったが、ようやく証拠が揃った」


全て。


上野陣営へ繋がっている。


それだけではない。


知事室へ送り込まれた職員。


内部資料への不正アクセス。


周辺人物への接触。


側近。


後援会。


随分と丁寧に調べてくれたものだ。


スマートフォンが鳴る。


真壁。


「どうだった?」


『名前まで割れてましたよ』


声が少し楽しそうだ。


『俺だけじゃないですけどね』


「そうか。じゃあ久世君が黙っていないな」


『はい。念のため少し煽っておきました』


予想通り。


上野は。


久世君だけを警戒しているわけではない。


自分以外の人間を、駒として見ている。


それなら。


駒なんて関係ない。


盤面ごとひっくり返せばいい。


『あと一つ』


「何です?」


『水谷ひとみ。あいつ、ちょっと変ですね』


私は資料から目を離した。


『急にぼうっとする時がある。というのは聞いてましたが。独り言みたいに喋る。口調も変わる』


「具体的には?」


『いつもの関西弁じゃない時がある。目つきも違うんですよね』


水谷ひとみ。


頭の回転が速く、判断も早い。


久世君たちに混ざっても埋もれない。


「二重人格みたいなものか」


『そんな感じですね』


「彼らが女神だの、何だのと言っていたな。その類かもしれない。だがもう関係ない。お前は部下を引き連れて、作戦に移れ」


『了解』


通話を切る。


水谷ひとみ。


女神メル。


久世恒一。


前の世界線。


いくつかの言葉が頭をよぎる。


ただ、今は。


それより先にやることがある。


私は机の引き出しを開けた。


告訴状。


刑事告訴の準備はできている。


総理大臣の座から、上野を引き摺り下ろす。


そして。


デポルを管理する国を作ってみせる。


記者会見を開き、総理大臣が地方知事を潰すために、どこまで手を伸ばしていたのか。


全国へ見せる。


私と同様に陥れられた政治家たちとともに。


当然。


上野側も反撃するだろう。


それでいい。


「反撃してもらわないと話題にならないからな」


私は笑った。


上野の攻撃をそのまま。


駆け上がるための階段にする。


もう一つ。


大阪に送り込んだ真壁による調査。


私が上野と明確に敵対すると同時に、真壁には上野のデポルを削らせる。


強攻策に走らせないためだ。


手勢を大阪と東京へ分散させ、調査済みの拠点を同時に攻め落とす。


「さて始めようか。城崩しを」


表から。


裏から。


同時に。


魔王の城を、崩しにかかる。

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