↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/44

第36話:実行役


ーー真壁フェーズ


目出し帽。


黒い上着。


手袋。


バール。


随分と分かりやすい格好をさせられた。


今回で五回目。


最初の二回は運搬。


三回目は見張り。


四回目は空き家への侵入。


そして今回は。


強盗。


四人と合流し、指定された一軒家の前に立つ。


全員、同じような格好。


そのうち三人とは前の仕事でも一緒だった。


俺以外は、もう何度もこういう仕事をやっているらしい。


指示は単純。


家に入る。


住人を拘束する。


金品を奪う。


抵抗された場合。


殺しても構わない。


イヤホンの向こうで、ひとみが小さく舌打ちした。


俺は何も言わない。


正義感で来たわけじゃない。


悪党になりたいわけでもない。


仕事として潜り込んだ。


なら。


やることをやるだけだ。


玄関をこじ開ける。


一人が先に入る。


その直後。


鈍い音。


メンバーの身体が廊下へ転がってきた。


中から大男が出てくる。


でかい。


住人らしい。


(外出しているって話だったが)


手には木刀。


もう一人が殴りかかる。


避けられる。


腹。


肩。


立て続けに打たれ、床に沈んだ。


残った一人がバールを構える。


男は怯まない。


(強えな)


イヤホンから森田の声が入る。


『やばいぞ。これ普通の家じゃねえんじゃないか?』


そうか?


構えを見れば誰でもわかる。


(剣道の有段者だろ)


男が三人目へ踏み込む。


木刀が振り下ろされる。


このままなら。


頭に入る。


俺は横から腕を掴み、止める。


男が振り向く前に足を払う。


体勢を崩したところで、首元を押さえて床へ落とす。


暴れる。


強い。


だが。


デポル相手に比べれば軽い。


関節を極める。


男の動きが止まる。


「今のうちに引け!」


不測の事態だ。


そういう場合は、何も盗まず去る。


大男を締め上げた。


顔色は紫。


これ以上やると死ぬ。


『真壁!』


俺は締めていた首から足を外した。


「なんだよ」


『いや……なんでもないわ』


住人をそのままに、俺も離脱する。


今日は何も得られず、引き上げることになった。


・

・

・


仕事を達成できなかった翌日。


いつもの端末に新しい通知。


『今日は◯時に、ここに来い』


前とは違う雑居ビル。


今度は部屋が違う。


中には三人。


一人は、これまで見たことがある男。


残り二人は初めてだ。


机の上。


複数の端末。


名簿。


指示書。


かなり上の立場らしい。


俺を見て。


一人が言った。


「上野さんから聞いてる」


空気が変わった。


イヤホンの向こうも静かになる。


(たかだか指示役でも、上野の名前が出てくる。思ったより距離が近いのか)


男がこちらを見る。


「真壁隼人」


俺は止まった。


「……」


「徳島。井口おさむの側近だな」


その瞬間。


身体が勝手に動いた。


男の懐へ入る。


腕を取る。


机へ叩きつける。


「はは、現場に出てねえから遅えな!」


隣の一人が立つ。


腹へ蹴り。


下がった頭に肘打ち。


もう一人。


首を掴み、壁へ押しつける。


数秒。


三人とも。


動けなくなった。


「デスクワークはほどほどにな。で、どうやって名前を知ったんだ? 教えてくれよ」


男の顔色が変わる。


「う、上野さんの指示だ」


「何を調べた」


「へっ、お、お前だけじゃない」


少し間。


「井口も。高宮も。水谷も。山本も。あのガキ二人も」


イヤホンの向こうで。


ひとみが息を呑む。


男は続ける。


「お前の関係者は全部洗った! 今頃それぞれ襲われてるはずだ!」


そこまで聞けば十分だった。


イヤホンから雑音。


連絡しているのだろう。


俺は男から手を離し、顎を殴る。


「とりあえず、こいつ一人でいいな」


気絶した男を担ぎ上げ、スマートフォンを取り出す。


「状況分かってんだろ? 車つけてくれよ」


『二分で着く』


山本はそれだけいい、電話を切った。


上野は。


俺たちが追っているだけじゃない。


とっくに、全員を追っていた。


だが。


「井口さんもそうだが、他の連中もそう甘くない」


井口さんや高宮まで割れている。


ここから、一気に物語が動き出す。


そんな気がしていた。


俺は再びスマートフォンを取り出す。


『はい』


「おう、久世。水谷から聞いたか?」


『いえ、まだ何も』


「いいこと教えてやるよ。上野の指示で、お前の愛しのめぐみちゃんを殺せって命令が出てるってよ」


久世の回答はない。


「それからな。水谷ひとみ。あいつ挙動がおかしいぜ?」


『そうですか』


「一度裏切った奴は、何度だって裏切る。忠告はしたぜ。じゃあな」


電話を切る最中に聞こえた言葉。


『自己紹介か?』


久世恒一。


なかなか面白い奴だった。


ムカつくが強い。


そして、脆い。


平静を装っていたが、内心は相当荒れているだろう。


派手に暴れてもらう。


その隙に。


「そうですよね、井口さん」


片耳のイヤホンは切り、もう片方のイヤホンに意識を向ける。


『ああ。下剋上といこうか』


ようやく、面白くなってきた。


使えるものは全て使う。


何が何でも目的を成し遂げる。


井口さんが、徳島県知事から総理大臣へ。


一気に駆け上がるために。


俺は、全てを裏切ってでもあの人を担いでみせる。




真壁と井口の業務委託契約が終了しました。


魔王討伐パーティ:

加藤ベアトリクスめぐみ

久世恒一

水谷ひとみ?

高宮誠司

山本誠

森田亮

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。