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第35話:闇バイト適性


ーーひとみフェーズ


「まず確認するで」


私は真壁を見る。


「お前が行く」


「なんで俺なんだよ」


「森田は顔割れとるし、足がこんな状態やからな」


「俺もデポル側じゃそこそこ顔知られてるぞ」


「デポル何人おるとおもてんねん、田舎のデポル一人なんか把握してないやろ」


「こっちで出会う女、大体うぜぇな」


今回の役割。


森田。


情報提供と真壁の現地での行動をサポートする。


真壁。


闇バイトに応募し、実態を探る。


つまり、スパイだ。


私。


現場監督。


一番偉い。


山本。


遠隔で通信と情報解析。


(久世はあんな状態やし、めぐみも動かへん。それなら、かなも含めて守らせた方が安心して外へ出れる)


「ほな森田、新しいアカウント作って、お前のスマホで応募しろ」


「なんで?」


「最悪捨ててもええからや」


「……」


森田のスマホから、例の募集サイトへ入る。


応募。


数秒。


返信。


『ご応募ありがとうございます』


森田が情報を入力していく。


年齢。


住所。


職歴。


前科。


そして、免許証。


「ほら、これ使え」


真壁の写真が入った偽造免許証だ。


「山本はんに手配してもろたんや」 


真壁が興味ありげに近づく。


「政治家の側近てのは、こんなこともできんのか?あのおっさん、中々胡散臭えぜ」


「ま、それはあるな。そもそも別の世界線では久世たちの敵だったみたいやし。今もいつまで一緒に戦うかはわかれへんからな」


(まあそれは別に、山本だけの話ちゃうと思うけど)


森田が真壁の情報を入力し、最後に顔写真を送る。


数秒後。


『本人確認が完了しました』


そのまま簡単な適性確認へ進む。


運動経験。


長期間、家を空けても大丈夫か。


森田が横から真壁へ答え方を教えている。


「暴力は嫌い、命令には従う。これ大事」


「暴力は好き、の方がいいんじゃねえのか?」


「暴力は好きなんて奴は信用ならないだろ?気弱なふりしてた方が従わせやすいと思うさ」


「お前、闇バイトだけ妙に詳しいな」


森田の入力を進める。


しばらくして。


『適性:高』


画面に表示された。


「へえ、こんなんでんのか。よかったやん真壁。天職見つけれて」


「闇バイトが天職……」


指定されたのは、大阪市内の雑居ビルだった。


ただ、時間と場所だけ。


そこへ真壁を送り込む。


・

・

・


私は森田と部屋で待機する。


真壁には無線イヤホン。


長い髪のおかげで外からは見えない。


「聞こえるか?」


『聞こえてる』


「森田もおる。伝えられることあったら言うわ」


隣で森田が胸を張った。


「先輩と呼べ」


『ボケナス先輩、ここには来たことあんのか?』


「ない」


『二度と話しかけるな』


相性は最悪らしい。


雑居ビル三階。


指定された部屋には、男が二人いた。


真壁によれば、一人はわからない。


もう一人は、肌の特徴からデポルらしい。


肌の色で分かる。


真壁から聞く限り、普通の事務所というより、急ごしらえの仮アジトに近い。


家具も少ない。


荷物も少ない。


すぐ逃げられるようにしている。


男たちは真壁へ名前や職歴を確認した。


こちらで用意した偽名。


偽造免許証。


山本が作った経歴。


問題なく通る。


(ほんまに何でも用意するな、あのおっさん)


真壁は余計なことを喋らない。


聞かれたことだけ答える。


森田が横で小声を出す。


「それでいい。それでいい」


(後で、真壁キレそうやな)


その後、簡単な仕事をいくつか確認された。


運転。


荷物運び。


見張り。


真壁の返事は短い。


『何でもできるさ』


相手の反応が変わった。


どうやら気に入られたらしい。


(そらそうやろな)


元々。


井口の右腕であり、当人もデポル。


そして、危険なデポルを相手にしてきた男だ。


(こいつはデポルやのに、あんまり嫌悪感ないんは人間の振る舞いをするからか?なんでやろな)


真壁は、闇バイトの実行役として見れば、明らかにオーバースペックだった。


その場で簡単な確認作業もさせられたらしいが、問題なくこなす。


森田が少しずつ黙っていった。


「どないしたんや、静かになってええんやけど」


「俺より評価高い気がする、扱いが酷くない」


「気のせいやないと思うで」


少しして。


相手から次の仕事を提示された。


詳細はまだ伝えない。


指定された時間に、指定された場所へ来い。


それだけだった。


連絡用として、新しい端末を渡される。


「次からは別の仕事をやってもらう。報酬は五倍だ」


『楽しみにしておくよ』


真壁が部屋を出る。


一時間後。


こちらへ戻ってきた。


新しいスマホを机の電波遮断ケースに入れた。


「山本はんにまわそか。何か解析できるかも知らんしな」


森田は恨めしそうに呟く。


「俺の時は、いきなり五倍にならなかったな……」


真壁が椅子へ座る。


「次は恐らくガチの闇バイトだな」


ここまでは。


入口。


次から。


本当に中へ入る。


かなり危険な冒険だ。


しかし真壁は。


いつもの退屈そうな表情ではなく。


少しだけ楽しそうに見えた。

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