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第21話:ごめんね


ーー久世フェーズ


大阪。


東京へ向かう前、ひとみは本当に冴子さんの隣の部屋を押さえた。


仮事務所兼、かなの一時的な生活拠点。


冴子さんにも事情は説明した。


外出する時はできるだけ一人にならないこと。


何かあれば、すぐ俺へ連絡すること。


かなにも同じように伝えてある。


少なくとも。


守る対象が近くに固まっている方が動きやすい。


その準備を終え。


俺は一人、難波へ出ていた。


目的は単純。


ブエノサンの情報。


そして、増え続けているデポルの確認。


だが。


歩けば歩くほど、嫌なものが見つかる。


一人。


路地裏。


二人。


雑居ビルの裏。


また一人。


前世なら、ここまで短時間で遭遇することはなかった。


(カスどもが。我が物顔で歩きやがって)


見つけ次第、接触し対話を試みる。


しかし、ほぼ対話が叶わず、一方的な処理で終わっていた。


「これだと前世と変わらないな……」


めぐみと二人になった。


今度は二人で協力し、魔王を倒す。


そして、救える者を救うと決めた。


それなのに。


俺がやっていることは、昔とほとんど同じだった。


そんなことを考えながら裏通りを歩いていると、正面から一人の男が近づいてきた。


「君が久世恒一くんだね」


足を止める。


「違いますね。では」


横を通り抜けようとする。


「まあ、待ちたまえ」


呼び止められた。


「僕はね。自分から電話をかけてきておいて、『〇〇様のお電話でしょうか?』って聞く人が嫌いなんですよ」


男が固まった。


「……何の話かな?」


「なぜ突然電話を取らされた側が、先に自分の名前を渡さないといけないのか。まずそちらが名乗るべきでしょう」


「よ、よく分からないが……君が久世恒一くんだということは調べがついている」


男はグレーのスーツに身を包んだ、中肉中背の初老。


俺は。


こいつを知っている。


「それで、弁護士の播磨さんが僕に何の用ですか?」


男の表情が止まった。


播磨健二。


弁護士。


前世では二階堂大阪市長の犬となり。


途中で俺たちの側へ転び。


その後、再び二階堂の犬となった。


飼い主の間を一生懸命走り回っていた男だ。


そして。


俺とめぐみが画策し、初めて殺した人間の一人でもある。


「……なぜ、私の名前を知っているのかな」


「テレビで見ましたよ」


「そ、そうか。確かに一時期は出演していたからね」


その時。


播磨の後ろから、いくつかの人影が現れた。


一人ではない。


路地の出口にもいる。


「そう警戒しなくていい。少し話がしたいだけなんだ」


「難波の裏通り。人通りの少ない路地。多数の大人が、七歳の子供を囲む」


俺は周囲を見る。


「これで警戒しない方がおかしいでしょう」


播磨の顔が少し強張る。


「ああ、その前に」


俺には一つ。


言っておきたいことがあった。


播磨を見る。


姿勢を正す。


そして。


九十度、頭を下げた。


「その節は申し訳なかったです」


「……何?」


心からの謝罪だ。


殺したから。


瓦礫に押し潰され死んでいく様は、考えただけでも辛いものだ。


酷い殺し方をした。


播磨は、その殺され方の資格を十分に持ち得たのだが。


「な、何のことかよく分からないが……とにかく来てもらおうか」


黒いバンの扉が開く。


周囲には大人が複数。


逃げようと思えば逃げられる。


長方形魔法を使えば、全員倒すことも難しくない。


しかし。


播磨が今世でも俺の前へ現れた。


しかも向こうから。


なら、乗ってみる価値はある。


俺は抵抗せず、黒いバンへ乗り込んだ。


扉が閉まる。


車が動き始める。


(あれ……これって拉致では?)


今更ながら気づいた。


まあ。


前世でも似たようなことは何度かあった。


揺れる車内。


「ドナドナド〜ナ〜ド〜ナ〜、悲しみをたたえ〜」


俺は小さくドナドナを口ずさみながら、ポケットの中のスマートフォンを数回タップした。


助けを求めるためではない。


業務の基本、情報共有だ。


大阪には。


俺以外にも、動ける人間がいるのだから。

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