↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/28

第17話:三角関係


ーーめぐみフェーズ


「と、いうことで。よろしくね!」


恒一が、嬉しさのあまり震えている。


とっ散らかったひとみの事務所で、ことの経緯を恒一に向けて説明した。


「相変わらずとんでも思考で大胆な行動力だね。そこに痺れるし、憧れるんだけど」


相変わらずどこぞのモブキャラのようなセリフを吐いている。


恒一は、前世と比べて丸くなった。


私に素直に何でも話してくれるようになった。


ただ。


女神メル。


その呪いの因子の影響が残っているのか。


元々なのか。


敵を殲滅する時の躊躇のなさ。


複雑に考える前に、力で解決しようとする悪癖。


これらは健在といえばそうだが、今後は注意して見ていこうと思う。


一人近づいてくる女がいる。


「おい。そろそろ答えろや」


見上げると、怒り顔の美人が立っていた。


「ひとみ、久しぶりだね。今世もメルがついてたの?」


「なにわけわからんこというてんねん。この事務所とドアと廊下の共有部分どないしてくれんねん」


腕を組み、足先を上下させながらキレている。


「まあまあ。久々の再会だし、そこは喜ぼうよ。かなさん、乾杯のお茶をお願いします」


「なんでやねん! 事務所ムッチャクチャにしたやつと何で私らが乾杯せないかんねん!」


恒一が寄ってきて、真剣な表情で口を開いた。


ひとみも注目している。


「めぐみ。風◯螺旋手裏剣作るにはどうやるんだ?」


「お前、まだそんなこと言うてんのか! そもそもデポル来たんはお前のせいやろが! ギエエエエエエエエ!」


騒ぎ散らすひとみを置いて、私たちは帰宅した。


・

・

・


ーー久世フェーズ


冴子さんは、驚きを隠せない。


それもそのはず。


見た目が七歳児とはいえ、中身は三十五歳のおっさんだと知っている冴子さんからすれば、目の前では恐ろしいことが起きているように見えるのだろう。


「久世さん……その子は……?」


「恋人の加藤ベアトリクスめぐみさんです……」


冴子さんの顔が、みるみるうちに性犯罪者のゴミクズを見るような目へ変わっていく。


「冴子さん、違うんです!」


「まず『違うんです』って言う人は信用ならない」


分かる。


それは分かる。


だが。


「児◯案件ではありません! それは僕が最も許せないことの一つだから、何度生まれ変わってもそれだけはあり得ません! おい、めぐみ! 君からも説明を」


めぐみが、ゆっくりと冴子さんに近づく。


「久世くんと今日恋人になりました。一緒に住もうと言われたのでついてきました。これからは一生離さないとも言われました!」


冴子さんは何も言わず、重い足取りで部屋の奥へ消えていった。


間違いではない。


間違いではないが。


説明が足りない……。


俺は恐る恐る、冴子さんが消えていったキッチンへ向かう。


ちょうどこちらを向いた冴子さんの手には、出刃包丁が握られていた。


出刃包丁。


魚の骨を断ち切るために使う、刃の厚い包丁だ。


なぜ今そんな知識が頭に浮かんだのかは分からない。


「冴子さん。僕は魚ではありません」


「性犯罪者候補ではあるけどね」


言い終わると同時に、冴子さんが包丁の先をこちらへ向ける。


冗談。


だと思いたい。


だが。


距離が近い。


(まじか……盾が間に合わねぇ)


腰を抜かして倒れる俺。


その前へ、めぐみが滑り込んだ。


長方形。


高い金属音が響き、包丁が弾かれる。


「えっ……」


冴子さんの表情が変わる。


めぐみは何事もなかったように長方形を消した。


「冴子。恒一はバカで無鉄砲で、考える前に力で解決しようとするところもあるけど、性犯罪だけは絶対にしないよ」


フォローなのか。


悪口なのか。


判断に困る。


けれど、冴子さんの視線はもう俺には向いていなかった。


めぐみの手元。


さっきまで長方形があった場所を、じっと見ている。


「……あなたも、それ使えるの?」


「まあね。元女神だし、そもそも恒一のこの魔法を与えたのは私だから」


七歳の俺。


同じく七歳のめぐみ。


二人とも同じ魔法を使う。


しかも片方は、元女神。


冴子さんは、めぐみを見つめたまま動かなかった。


その目はまるで、ようやく縋ってもいい何かを見つけた人のようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。