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第六話

何度開閉ボタンを押しても一向にエレベーターの扉が閉まる気配はない。

3階のバックヤードの明かりは既に消しており、真っ暗なままだった。

すると、背後から誰かに見られているような気がした。

バッと振り向いてみたが、誰もいない。

が、正面を見るとバックヤードの明かりがついた。

照明は全て消さなくてはならない。

また社員に詰められる。

恐る恐るエレベーターを降り、照明のスイッチを押してみたが照明が消えない。

すると、パチっと音がした。

3階の照明がついたのだ。

バックヤードから出て、辺りを見回してみると、dスタジオの、扉が開いていた。

閉めた、閉めたはずだ。

気づけば足はdスタジオへ向かっていた。

怖い、まるで誘導されるかのように、dスタジオへと歩みを進めていた。


静寂、夜の映画館を知っているか?

私の足跡だけがひたひたと館内に不気味に鳴り響く。

帰り道だけが照らされる、レイトショーはそうなのだ。

それが、今、私のためだけに道が照らされている。


開いた扉の影からヒョコッと、5〜6歳くらいの男の子が出てきた。

流石に驚きで声が出た、なぜ、この時間に?子どもが?館内は隈なくチェックした。a〜cスタジオまで、このくらいの歳の男の子はいなかった。

突然現れたその男の子の頬は痩けており、私を見るとパァと笑顔になった。


「チン!今はそう呼ばれてるんだね!」

話しかけてきた、驚きでもう一度大きな声が出た。

「映画館行こうって約束してたじゃん!でもさ、いつまでたっても観ようって話してたコスモスの映画始まらないの、変だよね」

私の頭の中はクエスチョンマークで一杯だった。

誰だ?この子は、なんでここにいるんだ?

コスモス?なんだ?そんなタイトルの映画は今やっていないぞ。

とりあえず、退館してもらおう、そう思った。

子どもの悪ふざけにしてはタチが悪すぎる…と、逡巡した脳を否定するかのように、エレベーターや照明のことを思い出した。

なぜエレベーターは3階まで止まらなかった?なぜ照明はついた?なぜ…この子はdスタジオにいる?

怪異だ、こんな子どもが、まさか対面するとは思わなかった。

「ぼ、僕?お名前は?お父さんかお母さんを待ってるの?」

と念の為聞いてみた。

人ならざる力でここまで導かれたのだ、絶対にそんなことはない、とわかりながらも質問した。

「ママも来るよ!」

ゾッとした、一人ではないのか?

「ねえ、それにしてもひどいじゃん!コスモス観ようって約束してたのに、なんで来なかったの?」

なんで来なかった…コスモス…ウルトラマンか?そんなの、20年以上前の作品だ。

今やっているはずがない。

「ぼくだよ!ユウタだよ!サクライユウタ!チン、忘れちゃったの?この間も会ったじゃん!」

いつの話をしているんだ?サクライユウタ?

いくつもの情報が私の頭を駆け巡った、どうしようもなかった。

とりあえず、今はやっていないんだよ、と説明すると

「じゃあ、やる時になったら教えて!」

とエスカレーターの方へと駆け出して行った。

すると振り返り、「僕、ウルトラマンになるんだ!悪い怪人はコズミューム光線で倒すんだ!」とポーズをとり、振り返ることなく駆けていった。

足音は消え、3階の照明が、全て消えた。


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