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第二十一話 中央通路を行く


翌々日。


最初の部屋の左右の扉はもう当分用がない。

あとは奥の扉の先の真直ぐな通路を行くばかりだ。


今日は、扉が開きっぱなしの部屋二つに入り込んで調べる予定。

通路から敵が来たら退路を塞がれて戦闘不可避なので、探索モードではなく、戦闘モードで扉の向こう側へ行く。

しっかり武装。

通路も部屋も広めなので、鮫剣を持参。

クロスボウは最初の部屋に置いてゆく。戦闘があるなら近接戦闘だから。

鋤も要らない。

奥の扉の隙間を少し大きく設定すべく、鉄鎖の連結器を調整。


マジックの線が完全に残っているのを確認。

こちらには、あの左側通路に居たような不可視の存在は居ないか、居てもずっと奥なのだろう。


カカシも転倒罠もバラ線フェンスも異状なし。


ガムテを剥がして、最初の部屋に入った。

大概なんにも無い部屋だ。

あるのは塵くらいだ。

塵というと、召喚の呪文を思い出すが、縁起でもない。

こういう場所で絶対に唱えたりはしねえ。


古い棚の跡が微かに壁面に残されてる。

かつては壁面の大部分を整然と棚が覆っていたようだ。


あと、配管跡もあった。今でもどこかに繋がってるのだろうか……あまり考えたくない。


それくらいで切り上げて、次の部屋へ進む。



ガムテを剥がして、入り込む。


こちらにはまだ金属製の棚が幾つも残っている。

棚だけでなく、抽斗や扉つきの保管庫もある。

ちょっと期待して、まず棚にランタンの光を当てると、瓶が整然と狂いなく二列に並んでいた。

どれも薬液で満たされているようだ。

底部に沈殿をつくり微かに濁ってるのが多い中で、完全に透明な液体を湛えているのも幾つかあった。


念の為に通路を確認。

異状なし。

また室内に戻り、探索を続ける。


金属製の軽く動く抽斗には、塵に混じって金属性の鍵もあった。

それを使って、保管庫の扉を開錠した。

扉の機械式のスイッチを複雑に押しながら開くと、極く微かに軋みながらゆっくりと、滑らかに左右に開き始めた。


気密保管庫には、塵の塊が幾つも残されていた。

3×4列に整然と並ぶ塵は、ほとんど幾何学的な原型を朧気ながら想起させる姿を留めており、僅かな呼気があたるだけで崩れてしまう。

手前二つの塵塊はまさに扉を開けた瞬間に生じた僅かな空気の揺らぎで崩壊したと思われる。

何を入れていたにせよ、一体どれだけの時間が経過すれば、こうなってしまうのだろうか。

遣る瀬無い気持ちになる。

そっと、ゆっくりと保管庫の扉を閉めた。


足音も立てないように部屋を出る。


ガムテを張りなおして、最初の部屋まで戻った。


本日はここまで。


----


翌日。


今日は探索ではなく、準備作業の日。

枝切れとバラ線を最初の部屋に搬入後、簡易鉄条網のフェンスを幾つも作製。

ダクテやガムテを戸口に貼り付けただけの部屋の前に、それらをガムテで簡易固定していく。

何事もなく完了。


日課となっている全力逃走訓練を一本やってから、片付けをして帰宅。


----


翌日。


今日は探索モードで中央通路を進む。

相変わらず真っ暗な通路を、10フィート棒で地道に前方をあちこち押しつつ、壁や天井にも警戒しつつ進む。

幾つもある開かない戸口は二本だけ横にガムテを貼る。


最初の部屋からもう何百メートルか分らないが、かなり長く進んできている。

背後まで暗闇に閉ざされると発狂しそうなので、処々にミニランタンを点灯させて置いてきている。

御蔭でその周囲前後10mくらいは、遠めにもぼんやりと明るく照らされて、人類の科学力の恩恵が及んでいる感覚を与えてくれる。

背後の暗がりの中にぽつん、ぽつんと、暗夜のビーコンの如く、点いている。

真直ぐに一直線に並んでいる。

光よりも闇の方が勝っている為、心細く、頼りないが、同時にいかにも正しい道を示す標識という感じもする。

地上で夕闇迫る頃合に初めて降り立った土合駅の地下ホームも暗い印象だったが、さすがにそれよりも暗い。

だが雰囲気は似ていなくもない。

辛うじてその僅かに細く人類社会と繋がってる印象を作り出しているのは、他の何者でもなく、ただ自分一人なのだが。


時計を見て、そろそろ刻限が迫ると判断し、撤収を決意。

ガムテを通路に張り渡し、マジックで到達を示す線を引き、メモを記す。

帰路は枝切れの先に固定したマジックで平滑な床面に線を引きながら、往路から変化が無いか周囲をチェックしつつ、小走りに帰る。

ミニランタンの灯りを直視しないように注意しながら回収してゆく。


多数のミニランタンを回収し終え、無事に最初の部屋に戻った。



予想を超えてひたすら真直ぐに伸びている中央通路にビビっている。

これがダンジョンだとしたら、非常に長大だ。

洞窟どころか、町ほどの規模ではないか。

ただ、横への拡がりに欠けている。

どこかで横穴があってもおかしくはないが……いざ、横穴に遭遇したら、今以上に恐怖することは疑い得ない。


----


そう思った翌々日に、右手に扉口よりも大きな開口部を発見。

ランタンに照らされたのは階段。

奥行きのある横穴でこそないが、上下に階層があるというのは、非常に大きなダンジョンである可能性。


中央通路は相変わらずまだまだ真っ暗で奥へ続いている。


この日の探索はここで打ち切り。


その後、今後の探索に備えてカカシと転倒罠をここまで一気に数百メートル前進させた。



拙作を御読みいただき、有難うございます

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