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第二十二話 階段の下と上と

半月後。


あれから、あまりにも長い中央通路を行くのに疲れてきたので、キックボードを持ち込んでいる。

時間短縮も重要だし。


二週間前に発見した中央通路右手にあった階段までは、通路入口から500mかそこらはある筈だ。

真っ暗闇だし、計ってないからよく判らんけど。

とにかく、これまで全く怪物に遭遇したことがない。

だから通路から怪物が最初の部屋に出てくる心配なし、と考えて、今ではもう最初の部屋の中央扉は左側を90度開放してる。

そうして、できるだけ温かな光が通路に差し込むようにしてから、通路に入るようにしている。


本当はキックボードよりも自転車の方が良いのだが、玄関前に駐めてる電動アシストのは自分で買い物に使ってる。

それをそうホイホイ押入れの襖を取り払って、狭苦しい押入れ下段の観音開きギリギリに出し入れできるかというと……


あ!


忘れてた……

使ってない、電動アシストでない方のが、庭にあったわ……

電動アシストの方で使うからって前カゴ取り外した時に、カゴに付いてたライトが足場を失ってぶらぶら垂れ下がって、そんなままじゃ道を走らせられないしってんで、そのままカバーかけて放置してたわ……

あれならモーター付いてないけど、どうせ坂道登らないし、ここで使うなら充分だわ……

ああ~、素で忘れてたわ……


ま、今日はもうボードでいい。

窓の外は雨。

まだ錆びてないと思うけど、雨の中で濡れてる自転車をメンテしてから家の中に持ち込んで、とか今はやりたくない。

ンなもんは、晴れてから、だ。


ほじゃ、行ってきまーす。

右脇に鮫剣と10フィート棒を抱え込み、左手でハンドルを握り、ボードを蹴り出す。


タッ、シャーッ

タッ、タッ、シャーッ


真っ暗な通路をキックボードのハンドルにつけたランタンとヘルメットのヘッドランプ、左腿のL字ライトを頼りに、ボードで軽快に滑り出す。

カカシも転倒罠ももう、通路入口近くには置いて無い。

ずっと奥、階段の先まで運び込んである。


----


この半月の間、中央通路の先への探査は一旦中止しておき、階段の先を探査していた。

階段は、上りと下りの二方向に階段があった。



下へ降りるとそこは、幾度か直角に曲がる短い通路の左右に、互いに隣接する多くの小部屋と謎の機械類の残骸が多数残る廃墟だった。

闇黒の曲がり角と、押し開けることが出来る扉の組み合わせが警戒心を刺激し、非常な努力で自制して、時間を掛けて一つ一つ探査していった。

十三日目の探査で初めてその通路の全貌が明らかに出来、物品を漁る余裕が出てきた。

その中で、筒状だが人間が着るには明らかに身体に合わない白い衣があり、太古の異種族の存在を想像させた。

同時にそれほど古いのに塵と化していない謎の素材でできている白衣に興味が湧いて、持ち帰ることにした。

鮫槍以来、初の獲得物。



その通路の突き当たりにある二重扉の先には、アンデッドが彷徨う真っ暗な荒野が広がっていた。

最初に二重扉を開けて真っ暗な中へ出る時には、既に立って動いている白骨が見えていたので、扉に付属している把手に、鉄鎖を巻いて開閉制限してから、外へ出た。

ゾンビー、スケルトン、ゴーストの三種類が居た。

初見時はさすがに恐がって、それでも最初はこちらに興味を示さないので、近寄ってみた。

ある程度近寄ったところで、急に近くのスケルトンが振り返って迫ってきたので慌てて逃げ帰ったが、扉まで追って来なかったし、また離れて行くのを眺めながらマントラを唱えてるうちに心が落ち着いた。


アンデッドは廃墟に入るどころか近寄ろうとさえしなかったので、境界を出たり入ったりして遠くから一体ずつ誘き寄せては灯油ベースのモロトフカクテルを与えて燃やしてみた。


ゴーストは燃えずに透過してしまったが、ゾンビーは燃えた。

ゾンビー三体燃やして飽きた。

臭いし。

スケルトンは、灯油が燃えてるだけで、骨は燃えておらず、ダメージを与えられなかった。

燃えてるところに近づいていって鮫剣ブチかましたら、一撃でバラバラになってそれきりだったが。

この荒野はソロでは到底突破できなさそうなので、諦めて階段を上へ上った。


挿絵(By みてみん)


----


階下を概ね把握し終えた翌日、今度は二階へ上り、新たな領域を探査し始めた。


そこには、まさにモノクロ画面のワイヤーフレームの頃から慣れ親しんだ3Dダンジョンの『どこを見ても同じような迷路』が広がっていた。

ゲームであればたのしい其処そこは、実物は暗闇での迷子の恐怖と、いつどこからなにが現れるか分らない、発狂せんばかりの恐ろしい場所であって、最初にあるただの直角ながりかどだけならともかく、最初の横穴が前方に見えた時点で総毛だって引き返した。

到底一人で入れるわけがない、と思った。

いつかパーティが組めるようになってから入ろうと思う。



そんなわけで、階段は当面は行かないことにした。

可能なら封印でもしたかったが、できないのでしかたなく、簡易フェンスを簡易固定するだけで。


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今日から再び中央通路の探査だ。

階段の前の通路上にミニランタンを置いて、進む。


いよいよ此処から、新たな探索が始まる。

キックボードを降りて、10フィート棒を左手に、警戒しつつ地道な罠探知作業を開始する。

鮫剣を右肩に担いでる。

盾はスリングで左肩にひっかけてる。


階段から先に進んだこのあたり、全く左右に扉がない。

今までと違うので違和感があるが、恐怖が少ない。


それでも体感で大体100メートルかそこら、地味な作業をし続けると疲れてしまい、ガムテを張って、本日はここまで。

階段のところからキックボードで軽快に最初の部屋まで戻る。


拙作を御読みいただき、有難うございます。

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