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12・能力創造


 「冒険者の登録と詳しい内容について質問してもいいですか?」


 俺は状況の打開の為に、賭けの要素はあるが、冒険者として登録す事を考えていた。

 登録に必要なものや次第では冒険者もアリだという考えに至ったからだ。


 「えぇっと~、冒険者は依頼を受けて、それを熟すお仕事ですね~。魔物の討伐もそのお仕事の一つなんですけど~、魔物の討伐の仕事が主な依頼なので、冒険者は魔物退治の専門家みたいなイメージですね~」


 ハーミアさんが仕事の内容を語っていく。


 「魔物討伐以外の仕事ってのは何があるんです?」


 「そうですね~。例えば、旅商人の護衛ですとか、採取の仕事もそうですよ~。他には戦時下に軍に雇われる事もありますね~」


 「さっきの話からしても、依頼の討伐内容の魔物以外の素材も買い取ってくれてるんですよね?」


 「一応は買い取ってますけど~、依頼料がないと安過ぎて冒険者なんてやってられませんよ~?」


 だろうな……。

 命を懸けるには銅貨三枚は安過ぎる。

 けど、今は状況の打開を出来る可能性があるのも冒険者だ。

 冒険者になれば、領主の件以外が上手く行く可能性がある。

 一、生活費の意味での金銭。

 これは領主に搾取され、今年の冬を越せないという食糧問題を解決できる。

 二、安全の確保によって生まれる輸送路の安全化。

 これは魔物の厄介さにも依るが、この村に来るまでの道が危険な為、また、来た際の実りが少ない事が商人がこの村に来る頻度が少なく、商品の値段が高い事にも関係している。

 三、特産品の材料の確保。

 ナターシャやアンナさん、ハーミアさんから聞いた内容からも魔物の素材はナターシャの発明品の素材に利用できる可能性がある。

 ナターシャの発明品は現状で村に人を呼び寄せる事が出来る可能性のある唯一のものだ。これに使う可能性が高いなら金銭的にも自分での確保が望ましい。

 四、村で冒険者ギルドが稼働する。

 これもすぐに効果は出ないだろうが、上手く働いてくれれば村の発展は勿論、元の世界に帰還する為の一助となる可能性がある。

 まず、ギルドの支部があれば定期的にギルドとの連絡の必要が生まれるので、ギルドの職員が直接か、商人を介してかは不明だが、何らかの形で誰かが訪れるので、その際に情報の仕入れは出来るし、商人であれば次回訪れる際に買い出しをついでに頼める。

 他にもギルドの支部があれば、この村に滞在する冒険者も今後出てくるだろう。

 勿論、現状の村では無理だろうが、今後村に冒険者が滞在する場合、冒険者の中には貴族の生まれで魔法を使える人のいるというので、その人達に遺跡の調査の依頼などが出来るかもしれない。


 「冒険者になったからと言ってノルマなんてのはないんでしょう?」


 「ノルマですか?」


 「このくらいの期間の間にこのくらいは狩らないといけないとかそういうのです」


 「ないです!ないです~!状況も整ってないのに無理に狩りに出て死んでしまったらギルド的にも損失しかないですし~、そんなことしませんよ~」


 ノルマが無いのであれば、とりあえず登録しておくだけでもしておこう。


 「だったら、とりあえず冒険者として登録させてください」


 「分かりました~」


 ハーミアさんはそう言うと手持ちのショルダーバックから一枚の紙を取り出す。


 「これが冒険者の登録書、というよりもステータス表ですね~」


 ステータスとは、なんとも安っぽく聞こえる単語が出て来たものだ。

 この世界では人の能力を数値化できるという事なのだろうが、便利なのと同時に少し怖くもある。

 数値化出来る能力など極一部に過ぎないだろうにその一部がそいつの評価とされるのだろう。

 まぁ、理解は出来る。

 人は見えないものと見えるものであれば、見えるものを信じる傾向にある。

 正確に言えば、自分で確認出来る事しか信じる事が出来ないと言った方が正しいかもしれないが……。

 だから、分かり易い実績とステータスが他の人から見たその人の全てとなるのだろう。


 「この液体を手に付けて、それからこのステータス表に触れてください~。そうするとその人のステータスが表に記されるんですよ~」


 「なるほど」


 小さいに瓶に入った液体を傾けて手に乗せる。


 「それを両手で馴染ませてから手で表に触れてください~。あ、触れるのは片手でいいですよ~」


 「そうか」


 両手で触れようとした所で止めに入られるが、両手に塗りたくったのに触れるのは片手でいいのか……。

 妙にべたべたとするし、もう少しなんとかならなかったのだろうか?

 この村じゃ綺麗な水だって貴重品なのに……。

 飲み水には使えない程度の水で洗うのでもいいかもしれないが、その手で調理した物や掴んだ物を食べる訳で、どうにも衛生面で気になる。


 「おぉ!?」


 紙に触れると触れている手が発光し、その輝きは紙にまで伝播する。

 その光景が物珍しくて感心していると、徐々に光が落ち付いていき、白紙だったモノには何かが記されている。

 

 「あっ?!」


 紙から手を挙げるとハーミアさんが紙を掬い上げる所で、俺はその紙をそれより早く手に取る。


 「ふ~ん。これが俺のステータスか」


 「何するんですか~」


 「まぁ、自分のだし気になって、すいませ―――」


 謝ろうとした所で紙を眺めていた視線がとある文字を発見する。

 その文字を視界に入れた途端に、俺は両手にしていた紙を力いっぱい引っ張り、紙が二つに別たれた。


 「なんでぇっ?!」


 ハーミアさんが奇妙な声を上げるがそれ処ではない。


 「あぁ、すいません。今日は調子が悪いみたいでステータスを記すのはまた後日でーーー」


 「体調の良し悪しでステータス表には変化はでませんよ~」


 「そうなんですか……。あ、でも、破けちゃいましたし、ステータスの登録はまた後日で―――」


 「大丈夫ですよ~。それを元に職員が登録したのが正式なステータス表になりますので~。さ、紙を見せてください?」


 「……」

 「……」


 「あ、ファティマさんに呼ばれているんでした!詳しくはまた後日でー!」


 無言の末に俺は取って付けたかのようにその場を立ち去る。


 「紙ぃ~!?なんでぇ~」


―――――――――――――――――――――――――――――――


 「ふぅ、危なかった」


 溜め息を零して二つの紙切れを雑につなぎ合わせる。

 

 「これはイカンよな~」


 そこに記されたのは―――


橘 蒼司


筋力  A

頑強さ B

素早さ A+

魔力  SS

抗魔  S

運  B


固有能力アビリティー

 能力創造スキルクリエイトSS


特性スキル

 


 ―――の文字列。

 上記の部分はいい。

 低くはないと思うが、比べる対象もいないので低いも高いも比べようがないからだ。

 けれど、下に描かれた部分は別だ。

 俺が僅かに知っている情報では個人で持っている可能性がある特殊な能力の存在は知っていたが、それは特性、スキルと呼ばれているものの筈だ。

 特性と書かれた文字の下には何も記載なし。

 恐らくは何もないという事だろう。

 けれど、その少し上に書かれている内容はその特性を作ると読み取れるものだ。

 さらに下に視界を滑らせていくと能力の詳細と思しき内容が書かれている。

 内容をザッと読み飛ばしていくと能力創造は魔力を使用し特性を生み出すものの様だ。

 

 「これはありがたいが、同時に面倒になった……」


 場合に依っては俺自身が戦争や争いの火種になりかねない。

 個人の強過ぎる力なんて国管理する者に取っては邪魔でしかないだろうからな……。

 国の様な大規模な事に巻き込まれなくても目立ちすぎて、見知らぬ誰かに目の敵にされ、恩人でもない人に異様に頼られる可能性がある。

 これが恩人相手であれば命を懸ける程度容易いのだけれど……。


 「いやいや、待て待て。アビリティーがレアとは限らないだろう……ってそんなわけあるかっ!特性がどれ程のものかは知らんが、魔力があればそれを作れるというのでそれの有用性はどの程度の能力を作れるのだとしても優秀だ」


 なら、これは隠して置きたい。

 けれど、そうなると冒険者として登録できない……。


 「グタグタ考えても仕方がないな。とりあえずどの程度の能力を作れるのか確認するか」


 先程までは全く気が付かなかったのに、あると知るとそれが当然の様に頭に使い方が浮かぶ。

 

 「ふむ。俺の魔力じゃ一日に生成出来る能力は一個が限界か」


 魔力は休めばある程度回復するようなので一日に一個、あるいは三日に二個程度なら作れそうだな。

 

 「それで適性がない能力は作れないと……」


 能力創造が聞いて呆れるが、すでに存在する能力を作るのがこのアビリティーの能力で創造ってのは過分に過ぎる。

 しかも、その中でも元々の適性が俺にある物だけと来た。

 思ったよりも問題ないかと考えていたが頭に浮かんだ二つの内容で衝撃を受ける。

 一つは俺の魔力では足りないが、俺の魔力がもっとあれば能力の創造が出来るって内容。

 これは元の魔力が足りないので、魔力を外部から補充出来るかも不明な現状ではどうしようもない……。

 それともう一つは、検索した能力の内容にだが、能力欺瞞のスキルがあり、それのSランクのものであれば、精霊の目、つまりはステータスシートの記載の件も掻い潜れるという事だ。


 「待てよ?手っ取り早く、これで元の世界に帰れないのか?」


 能力創造で検索しようとした所、ワードの検索、つまりはこういう能力を作りたいと調べた時点で魔力を消費する為、能力の欺瞞が出来ないかと調べた時点で今日の魔力は使用しているらしく、異世界の転移に関する事は調べる事すらできなかった。


 「駄目か……」


 まぁ、それも明日以降に調べればいいだけだ。

 無理なら無理でこの能力は取っておこう。

 検索した能力欺瞞の能力を手に入れた。

 頭に浮かんだそれは"能力偽装S"。

 どうやらだが、能力創造で創れるのはSランクが最大で、それ以上のランクのは作れない。

 つまりはランク的に同ランクのものはアビリティーという特殊な物であっても、干渉出来ないという事なのか?

 それとも、スキルは最大がSランクとか?

 詳細はこれから調べるしかないな……。


 「どちらにしろ、便利だが同時に厄介ごとになりかねないな」


 これで元の世界に帰れるとかそういったモノではない様だし、便利すぎる能力だが、その割にこの能力単体でどうとでもなる物でもない。

 単純な話、どの程度の能力―――この世界じゃスキルか―――があるかにも依るので安心できない。

 それでも現状を覆す一手の一助とはなるだろうが、周囲にバレた際にこの力単体では役に立たない癖に周囲からはそうは見られない。

 端的に言えば、命を狙われる危険性もある。


 「個人が強過ぎる力を持つのを許容出来る為政者なんている訳もないか……」


 その力が自らに向いても対応可能な力ならともかく、相応の被害が出る可能性があるのなら先に処分をした方が効率がいい。

 何よりもリスクが少ない。

 だから、この能力の事は可能な限り隠しておくに限る。

 

 「問題は何処まで隠し通せるかだな」


 隠すだけであれば簡単だ。使わなければいい。

 けれど、この世界で自分の考えを変えずに生きていくのは難しいだろう。

 だから、この能力の優位性を利用する。だとすれば、隠し通す事は難しいだろう。

 バレた時にどうするか、バレるにしても可能なら相手は選ぶべきだ。それが可能かどうかは別問題として……。


―――――――――――――――――――――――――――――――


 「―――はい。登録完了しました~」


 ハーミアさんのややおっとりとした声が響く。

 光を放ち終えたステータスシートを今度はハーミアさんがしっかりと確認する。


 「おぉ~、魔力値と抗魔値がかなり高いですねぇ~」


 橘 蒼司


筋力  A

頑強さ B

素早さ A+

魔力  SS

抗魔  S

運  B


特性スキル

 無し


 アビリティーは能力偽装の効果で表示を消すだけで留めた。

 この世界老いての基準値も分からないのでとりあえずアビリティーがない事に偽装してのステータスシートがこれだ。


 「そうなんですか?」


 「魔法師でも無いので魔力値が高くても無駄ですけどね~。ぷふぅ」


 急に笑われたんだが?


 「あっと、大丈夫ですよ~。魔力値は無駄でも抗魔値は高いと色々と役に立ちますし、それに何よりもソージさんは他の能力も軒並み高いですから~!私が担当した冒険者の中でも一番の総合値だと思いますよ」


 笑った事に対して気まずさを覚えたのか、慌ててフォローが入る。


 「そいつは良かったよ。それよりも特性、そのスキルってのか?それについて詳しく聞きたいんですが」


 「ま~ま~、無くても落ち込まなくても~」


 「いや、別に落ち込んではいないが―――」


 「うんうん~、そぉうですよね~」


 なんだか励ます様に言われているが、本当に落ち込んでる訳ではないのだが……。

 どうやら強がってると思われたみたいだ。


 「スキルがない人なんてあんまりいませんけど~、ほとんどの人が自分のスキルに自覚ないままに生きてますから~、それほど気にしなくても大丈夫ですよ~」


 「自覚がない?」


 「はいはい~、冒険者とかの特殊な役職でもないと普通の人は鑑定を受けたり、ステータスシートを作ったりなんてしませんからね~」


 「それはつまりあれか?何らかの事が無ければ自分のスキルにも気が付かずに一生を過ごすって事か」


 「そうですね~」


 同じ事を復唱しただけになったが、その事実に少し驚く。

 この世界では自らの才能とも呼べるものを可視化出来るにも関わらず、極一部の人しかそれを実践していないのだ。

 別に能力主義を訴える訳ではないが、それは少し勿体無いと思う。


 「別に必ずしも自分の利になる能力ばかりとは限りませんしね~」


 「そうなのか?」


 マイナス効果のスキルもあるって事か?


 「耳が良すぎて自らの耳を潰した人の話って聞いた事あります~?」


 「……いや、知らないが」


 「あれ~?結構有名な話なんですけどね~?」


 あぁ、そう言えば、俺の事を伝えてなかったか。

 簡単に俺の事を伝えた。


 「ほへ~!異世界人さん?!初めてみましたよ~。あんまり面白くないんですね?」


 それは見た目からって事か?

 言動には気を付けろよ?面白くないって相手によっては一発アウトのセリフだぞ。

 あと、見た目が面白いってのはそれはそれで悪口だと思う。


 「面白いかはともかく、その耳が良すぎて潰したって、どういうことだ?」


 「あぁ~、それですか~。何だったかな~、確か聴覚強化だったかな~?それのAランクのスキルに目覚めた方が居まして、風が自分の肌に当たる音、虫の鳴き声、人の話し声、周辺の人の服の擦れる僅かな音、そういったモノの音に苦しんで気が狂って、最終的には木の枝を自分の耳に突き立てて『これで静かになった』って安らかに笑ったらしいです~」


 えっぐ……。

 そこらの怪談話よりも怖い。

 何よりも事実としてあった可能性が高い所がまたなんとも……。


 「しかし、スキルに目覚めるか」


 「そうですよ~。まだ目覚める可能性もありますし~!ふぁいと~、お~!」


 未だに励ますかのような視線にうんざりしつつも質問を重ねる。


 「スキルってのは一人に一個なんですか?」


 「ん~、少なくとも私は二つ持ってる人は知りませんね~」


 「そうか。……じゃあ、スキル以外に能力みたいのはないんですか?」


 「―――ないと、思いますけど~?何か気になる事でも~」


 なるほど、どうやら嘘は着けない質の様だ。

 明らかに動揺している。


 「いや、異世界人でこの世界に疎いもんでな。どうなのか気になったんですよ」


 「あ~、そうですよね~。私の知る限りではないですね~」


 今度は上手く言葉は話しているが、視線などの身体の挙動が不審だ。

 アビリティーについて、ギルドは何かを知っていて、その上で隠蔽―――どのくらい知っているかは不明だが―――しているようだ。

 スキルに関しても簡単にだが情報収集出来たのは良かった。

 ハーミアさんに別れを告げて、今後の対策を考える為と今日の寝床の確保にナターシャの所に向かう。

 小屋の前の資材置き場でもその辺の森で眠るよりは寝心地はマシだし、あそこは大木の幹で囲まれている安全地帯だからな。

 まぁ、空からと木を登れる生物に関しては防御出来ないが、それでも何もないよりはマシだ。


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