3-3 銃のこと
今回適当に切りのいいところで切り上げたので、少し短めになっています。申し訳ありません。
翌日、昨日の出来事を忘れるべく、掃除に専念した。
しかし掃除に専念すると、すぐに終わってしまった。
「ユウサン。ユウサンの場所は私はやりますヨ」
「な、なんでそんなカタコト....いや、違うからな?本当に。嘘じゃないから」
「だからまんざらでもない自分がいたのでは――」
「違うから!掃除ありがとな!」
なんとユウは、幼女な俺に掃除を任せてぴゅーっと逃げていった。
男的にどうなのだ、それは。流石はヘタレ。いや、ヘタレでもないのか。むしろ自分に勝てなかった的な意味でヘタレなのか。
難しい問題である。
そんなことをぼんやりだらだらと考えながら、掃除をする。
そういえば、朝起きてすぐに掃除を始めたのにまだ朝ご飯を食べてない。
....あ、船の上にいる間はいつ食料が尽きるかわからないから一日二食にするって言ってた気がする。寝起きの時だったからぼんやりしてて忘れてた。
仕方がない、昼のごはんまで掃除をしておくか....。
と考えていたけど、残念ながら広いとはいえ、ユウの家よりも掃除する場所は少ない。
昼までたたずに、掃除は終わってしまった。
地味に掃除は嫌いじゃないんだけども。
仕方がないから、スキルレベルを伸ばすことにした。
短剣スキルを取るべく、甲板の中でも広い場所に出て、銃ナイフを振る。
突き、突き、突きまくる。
似たようなフォームで、突きを繰り返す。
初めの内は違いが分からなかったが、途中からなんとなくもっと早い突き方や、力の入れ方がなんとなくわかってくるようになる。端的に言うと、コツをつかめてきた。それまでの時間、わずか一時間。
地球でスポーツやらを練習しているよりも、ずっと楽だし早い。
頭上でアリシアが「あ~ああ~」って言いながらロープで遊んでいる。
いや、それは関係ない。集中集中。
たぶん、このコツが掴める感覚というのが、熟練度が貯まる感覚なのだろう。これを繰り返せば、きっとスキルを手に入れられる。
そして、それを繰り返すこと二時間。
なんか、壁を超えた....ような気がした。
ふんわりとした感覚なので、よくわからない。
もしかして、という気持ちで、ユウに検査板を借りる。
気まずそうな顔をしていたけど、正直それどころではない。
そのとき、謝罪の意を込めてか、普通の検査板より小さな『スキル検査板』とやらをくれた。普通の検査板がタブレットくらいの大きさで、スキル検査板はスマホくらいだ。
せっかくなので、受け取っておく。まあ、これからはユウが間違いを起こさないように適当に見守ってやるか。
昨日のことは見過ごしてやろう。
「スキルステータス」
というわけで、表示されたのは。
『銃:E
ナイフ:F
料理:E
性技:F』
アルファベット表記だった。
数字で表記されるよりも少しわかりにくいけど、まあ大体はわかるな。
やっぱり、この小ささになるとレベルと称号の表記だけでなく、スキルの表記までも削らなければいけなかったんだろうな。
しょうがない。けど、ナイフスキルを取ることができたのは確認できた。
ほくほく顔だ。
それを見たユウが、機嫌を直してくれたかと息をついたのが見えた。
ちょっと違うけど、訂正するほどのことでもないか。
□
「なあ、その銃ってほかの人にも使えるのか?」
「え?....どうなんですかね、試したこともないので....」
仲直り(?)をして気を良くしたのか、ユウがそんなことを聞いてきた。
確かに、思いつきもしなかったけど....。それができれば強い気がする。軍隊で銃無双とかできる気がする。俺の疲労がマッハだけど。
まあ、軍隊とまではいかなくとも、普通にこのメンバーに持たせるだけでも十分な戦力になりそうだ。
「ちょっと貸してみてくれ」
何が起こるか分からないので、常に身に着けているFN57を手渡す。常在戦場の心構えといえば聞こえはいいんだけど。ようはビビってるだけです、ハイ。
まあ、今はわけあって全身銃火器で固められてるから、別に困ることはない。どうせ返してもらえるし。
「えっと、セーフティーはここでいいのか?」
「はい、そこをこうして....はい、これで撃てるはずです」
ユウが、それっぽい構えで海に向かって銃を向ける。俺よりも様になっているのがいちいち癪に障る。
そして、引き金を引くと同時に乾いた銃声が――とはならなかった。
「....あれ?」
何度も引き金を引こうとするが、ガッガッ、とセーフティーがかかったままのようになっている。もしかして、セーフティーがちゃんと開き切ってないのかな?
確認してみるが、セーフティーの不具合ではなかった。
銃口を除いて引き金を引けば何かわかるかな?と一瞬思ったが、弾が出なくとも銃口は除かないのが鉄則だ。マガジンが入っていなくても、弾が薬室に残っている場合がある。そんな想定外を考慮して、銃口は決して除かないのがルールなのだ。
銃の中には、引き金を引いてないのに弾が出続ける粗悪品とか、引き金を引いたのに弾が出ない粗悪品とか、そのどちらもを達成したパーフェクト粗悪品があるからな。
念のため銃を海に向けて引き金を引くと――
パン!
拍子抜けするほどあっさりと引き金は引かれ、銃が発射された。
「あ、治りました。もっかいやってみてください」
「わかった、やってみるよ」
ユウがもう一度トライするが――
「駄目だな、何かに引っかかって撃てない」
ここまでくると、さすがに分かる。
どうやら俺が召喚した銃は、俺以外には使えないようだ。
そういえば、奴隷になっていた時に銃を取り上げられて、使われようとしたことがあった。でもそのときはセーフティーがかかっていたから「ぷーくすくすでるわけねーじゃん」と思ってた。けど、セーフティーがかかってなくとも撃つことはできなかったんだな。
お、ユウが珍しくしょぼんとしてる。銃が撃てなかったのがそんなに悔しいか。さぞ悔しいだろうよ。
だって銃は男のロマンの塊だもん。日本人なら、普通は銃を撃つ機会なんてないし。たぶん、ユウも撃ったことがなかったんだろう。
ここに来てまさか撃てるとは思わなくて、ワクワクしてたところで「やっぱ撃てません」ってわけか。
うん、俺でも落ち込むね。
でも、一つだけ言わせてもらうと。
日本人なら、普通は異世界で最強魔法をぶっぱしてハーレム作ったり、できないからね?
隣の芝が青く見えるとはこのことか。




