3-4 いざ、魚釣り
「よし、魚でも釣るか」
ユウがそんなことを言い出したのは、俺が目を覚ましてから早くも一週間がたったころだった。
まだ食料備蓄には余裕があったが、あまりにも陸にたどり着けないので、ここが大洋であることも考慮して食料を温存する方針のようだ。水は魔法や魔法道具で生み出せるのでかぱかぱ使えるんだけど。食料ばっかりはそうもいかないからね。
仕方がない。
というわけで、ユウは魚釣りを提案したのだと思われる。
初めから釣りセットが船の中に積んであったのが、地味に怖い。
元々魚を釣らないと陸にたどり着けない計算なのか、それとも不慮の事故を考慮しているのか。前者なら結構つらい生活を送らなければならないことになる。
「竿は十本以上あるから、持ってかれても泣くなよ~」
笑いながら言うユウだが、レベルが上がった俺達なら、まあ竿を持ってかれることなんてないだろう。
それこそ、ここら一体の主でも釣れない限り。
ユウからルアー的な疑似餌とそれを取り付けた竿を受け取った。
アリシアとルルも、そろそろ船の中の生活に飽きていたのか、それとも単に目新しいことに惹かれただけなのか。楽しそうに釣りを始める。まあ、アリシアなんかは飽きてすぐに辞めるだろう。
そして、三十分後――
「全然釣れません!」
「ははは、オレはもう諦めたよ」
はははじゃねえよユウ。何言い出しっぺが一番初めに諦めてるんだ。
ちなみに俺は海に糸を垂らしてから三十分。一切釣れていない。にも関わらず全くめげずに釣りを続けているというのに....。
ユウはハンモックに寝転がって、魔法で何かをしている。遊んでいるようにしか見えん。まさにクズだな。幼女三人に食糧調達を任せて、自分は魔法で遊んでるんだから。
そう思わない?とルルに聞いてみたが、ルルからすればあれは仕事をしているようにしか見えないらしい。何故だ。異世界人の感覚だからか。確かに、魔法が普通に存在していて、それは基本的に研究や戦闘にしか使われないものとなると....仕事をしているように見えるのか。
そして、ユウの次に抜けると思っていたアリシアだが。
「また釣れたー」
そう言って運んできたのは、アリシアが両手に抱えても抱えきれないような巨大なサイズの魚。あまりの大きさに、おっぱいがむにんと押しつぶされている。
魚も驚愕のサイズだが、おっぱいのほうが驚愕のサイズだ。正直、目線はそっちにくぎ付けだぁ!
って、そうじゃないッ!
煩悩退散ッ!喝ッ!
はあ、はあ、はあ....。
そ、そこではなくて。
アリシアがまた、といった通り、実はこれで大物は三匹目なのだ。十分で一匹のペースである。真剣に釣りをやっている人間からすれば、発狂モノだろうな。
「そ、そうか」
ユウの腰も引け気味である。
ちなみに、これの一つ前にはもっと大きい魚が釣れている。
もはやドン引きするレベルだ。
アリシアは、楽しいのだろう。たたたーっとまた釣りに戻っていった。
....まあ、できれば楽しいの典型だよね、あれ。
そして、ルルだが。ルルも結構大量である。
アリシアよりも小物をたくさん釣っている。ちょうど今、ルルの隣に置かれたバケツが魚でいっぱいになったみたいだ。....ルルの隣には、いっぱいになったバケツが二つ置いてある。これで三つ目だ。何故こうも違う。
で、でもまあ、大物は一つしか取ってないみたいだし?俺と大物の数だけで言えば一匹の差しかない――
「釣れた」
はい大物二匹目来ましたー。
そもそも、大物の数勝負以前に一匹も釣れてない俺とバケツ三つ分の魚を釣ったルルとでは勝負にもならないもんね。しょうがないね。
というわけで、俺とユウは今、『ゲーセンで隣にめっちゃうまい奴がいるとなんとなくやる気がなくなってくる』現象を味わっているのであった。
「って、ユウさんだけずるいですよ、ハンモック。私にも貸してください」
「悪いな、この船にハンモックは一つしかないんだ。きっとロマンが分かるやつが入れておいたんだな」
全く退いてくれない。幼女(見た目だけ)が頼んでるんだから、退いてくれたっていいじゃないか!なんて強欲なやつなんだ。ユウって、基本的にだらしない上にケチだな。なんでこんなやつにアリシアは惚れるんだ?いっそ俺に惚れてくれたらいいのに。
ニコポってやつか?くそぅ、主人公め。
「むぅ....。そうだ、隣、使わせてくださいよ」
「え?いや、でも――」
「いいじゃないですか~」
もし寝転んでいるのがアリシアなら隣なんて絶対に無理だけどな。緊張して。
でも男なら、変に緊張することもないし、俺なら間違いもないはず!
というわけで、隣にごろんとさせていただく。
幸い、ハンモックは地味に大きめだ。二人は無理そうだけど、俺くらいの大きさならいけちゃいそうな気もする。
「ん....しょっと。あれ、思ってたよりも狭いですね」
「お、おぉう....そうだな....」
う~ん、小学生くらいなら隣に寝転べるように見えたんだけど。まあ、俺の見た目年齢って小学校高学年から中学生くらいだし....。ちょっと無理があったのかもしれない。
でも、ハンモックに寝転べたからよしとするか。ハンモックを使うのは初めてだけど、案外いいものだな....。ゆらゆらと少し揺れているのが、なんだか安心する。
しいて言うなら、隣でユウが背中を向けてもぞもぞもぞもぞしているのが少し気になる。なんでそんなにもぞもぞしているのだか。まあ、仰向けで寝転ぶよりは場所を取らなくていいか。
俺も横に寝転ぶか、と思い、ユウの方に寝返りをうつ。
ユウのもぞもぞが多くなった。何故だ。
ゆーらゆら。
ゆらゆら。
ゆ~らゆ~ら....。
ん....なんだか眠たくなってきたな....。
う~ん....まあ、ちょっとお昼寝するくらい....いい、か.....。
□
目が覚めたら、目の前におっぱいがあった。
何を言ってるのか分からないと思うが、俺も分からない。そんな状況が実際に起こるなんて、思ってもみなかったよ....。
ちょっと落ち着いて、もしかして俺にも春が来たのでは!?と考えた。あまり落ち着けていない。その時点で寝る前の記憶はすっぽり抜け落ちていた。
体を起こして、ようやくそこがハンモックの上であること。そしてアリシアとルルまでハンモックの上に乗っかって来て寝ているということが分かった。
なんだ、春が来ていたのはユウだったか....。
が、起き上がろうとすると、おっぱいが顔に当たる。
というかそもそも、アリシアが俺の上に寝転んでいるのだ。アリシアを起こさずに抜け出すのは、簡単なことではない。俺は敷布団か。
その上丁度俺の顔の上におっぱいがあるものだから、起き上がろうとすると俺のゲイボルグが起き上がる――って、俺のゲイボルグはもういないんだった。
いや待てよ、今俺はアリシアと同年代かつ同性。なら、ちょっとくらい当たってしまってもいいのでは?いやしかしそれは道徳的にどうなのだ?でもすぐ横には幼女に手を出した犯罪者が――と葛藤していると、動きが伝わったのかアリシアが起きてしまった。
「ユウ....?」
俺の頭が動くのが、ユウが触ったみたいだと勘違いしたようだ。
なんで勘違いするんですかねぇ....それほど毎晩握られてるのでしょうか?
「なぁんだ、ゆっきーか」
ゆっきー固定なのか。と思うが早いか。
またのしっと乗りかかってきた。
「わぷ、アリシア!?」
窒息する!溺れる!おっぱいで溺れて窒息死する!
死ぬ!死にたくない!ああ、幸せ!
ユウが起きてこなかったら、死ぬところでした。
ユウは手を出していません。勘違いです。
オリハルコンの理性で我慢しています。
11/18 1-4話の説明を、一部変更いたしました。ストーリーの大筋に影響はありません。ご迷惑おかけします。




