表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ななみけ  作者: るべの
18/22

第十七話:夢の傷心

“さあテレビの前の皆集まって、二重跳びの時間だよっ!! ”



「あ、始まった。お姉さんと二重跳び」

 

 テレビから陽気な音楽が流れてきたのを合図に夢が嬉しそうにテレビの前に駆け寄る。


「何、これ? 」

 

 仁は怪訝そうな顔を浮かべながら、コーヒーを片手にテレビを見つめる。


「知らないのか仁? これは今大人気のお姉さんと二重跳びじゃないか」

 

 そう述べると雪はテレビの前へと行くと雪の横に胡坐をかく。


「知らないな」

 

 仁はテレビから視線を外すとコーヒーをずるずると啜る。

 

 ふう・・・この一瞬のために生きてる感じ。などと、オッサンめいたことを思いながら何となく天井を見ていた。


 

 ふと、二人の楽しそうな笑い声がテレビの前から聞こえてきたので仁はそちらに視線を落とした。


「何、それおもしろいの? 」

 

 仁は率直に思ったことを訊いてみる。

 

 雪は口を綻ばせながら返事をする。


「うん、最高っ!! 」


「最高…なのか? 」



 仁は不審げな表情を浮かべながら首を傾げる。


 先程からテレビ画面を見ていると、お姉さんがひたすら二重跳びを跳んでいるだけの映像が終始流れているだけだ。


 これの何が面白いなのだろうか? と、思う仁なのだが、先程目をキラキラさせながらテレビを食い入るように見ている夢を見るとその思考を口に出すのは躊躇われた。



 てか、何で二重跳び限定? そんな考えも浮かんだが仁はすぐさま頭から捨てる。



 そんな風に考え込んでいると、仁はある事に気づく。


「なあ雪、この人どっかで見たことないか? 」


 そう問いかけると雪は一瞬、えっ、と息を漏らした後、ゆっくりと振り返る。


「仁、この人は花宮はなみや こころって言って今、大人気の女優さんだよ」


 そう雪が言葉にしたのを聞くと仁は、そういえば最近良くテレビに出ている女優と顔が一致することに気づく。


 仁はあまりテレビを見ないので一致するのに少々時間をかけた。



 だが、一致した今でも仁の中のもやもやは消え去らない。


 それが顔にも出ていたのだろうか雪が心配そうな目で仁に問いかけてきた。


「どうしたの? 」


「いや、何か引っ掛かるんだよな・・・」


 そう言いながらテレビの中の例の女優をじいーと見つめていた。


 雪は、ふーんと言いながら眉をひそめて、テレビに向き直った。



「どうした? 」


 不意に後ろから心配そうな声が聞こえたので、振り返ってみるとそこには頬に涙がつたった跡がある霞が立っていた。


「姉さんこそ、どうしたの? 」


「いや、この映画が何ていうかもう、な・・・」


 そうか細い声でボソッと呟きながら手に持っているパンフレット仁にみせる。


 そこには犬がドンッとアップで写っており、その映画が動物ものの映画であることを表していた。


 霞はその性格に似合わず動物をこよなく愛しており、彼女の部屋には犬のぬいぐるみなどが数多く置かれているのだ。



 そんな姉の女の子らしいところを見ると少し微笑ましい気分になる仁であった。



「コーヒー飲む? 」


 仁は少し微笑みながらいつもの調子でそう口にした。


「うん」


 そう漏らした彼女の口元は少しだけ緩んでいた。



「そう言えば、姉さんはこの人知ってる? 」


 仁はテレビを指差して霞に問いかける。


 霞は啜っていたカップを両手でゆっくり机の上に置くと、


「このムキムキの人か? 」


 女優の横にいる筋肉ムキムキの人に指をさすと、そうさも淡々と聞き返す霞。


「いや、違うからっこの女優の人っ!! 」


「冗談だ。知ってるに決まっているだろ―」



「えぇぇっ!! 」


 霞が言い切る前に夢の突然の叫び声が七海家のリビングに響き渡る。


「どうしたっ!? 」


 仁は慌てて夢が居るほうへと駆け寄る。



 そこにはテレビ画面を見ながら愕然とした表情を浮かべている夢がいた。


 仁は何事か? と、思いながら夢の震えた指で指差す先にスッと視線を巡らす。



 そこにあったものは・・・




《お姉さんと二重跳び、放送終了のお知らせ》


 と、書かれたテロップだった。



 仁はそれを見て思った。



「いや、そりゃそうだろ」



 だが、流石にこれほど傷心しきっている妹にそんな言葉をかけてやるのはあまりに酷なので、仁は暫しの間言葉を詰まらせていた。


 すると雪が夢の元にいそいそと近づいてきて膝をガクッと崩した夢の背中を摩ってやりながら、


「大丈夫だ夢」


 と、耳元で優しく呟いた。



 そんな姉妹を見ながら仁は少し口元を弛緩させるのであった。


 やっぱり、雪も姉なんだな。



「次からはきっと、三重跳びにグレードアップするんだよ」



 でも、もうちょっと気の遣いかた考えような。



 と、優しいながらも少しお馬鹿さんな雪を見ながらそう思う仁であった。




 ばたばたばたばたばたばたばたばたばたばた



「カスミーンっ」


「うおっ」



 一難去ってまた一難とはこういうことを言うのだろう。


 突然、廊下に慌しい足音が聞こえたと思い、後ろを振り返るとそこには霞が誰かに押し倒され宙に浮いている光景が広がっていた。



 そして、霞はその誰かと一緒にカーペットに落下する。


 ホカホカなカーペットだったので身の安全は保障できるだろう。


 冷静にも仁は一回胸を撫で下ろす。




 霞は気がつくと、訳がわからないといった顔で天井を見上げていた。


 体を上げようとしたのだが、上がらない。


 自らの体を見下ろしてみるとそこには女性が自分の胸に顔を埋めているのが見えた。


 霞は取りあえずその女性を自分から引き剥がそうと手を伸ばそうとした。


 だが、その女性は



「うぇぇぇぇん、カスミーンどうしよう~」


 と、悲痛な叫び声を上げ、霞に今にも泣きそうな顔を見せる。



 それを見た霞は彼女が誰かが分かった。


 サングラスこそしているが、その顔を見間違えるはずはない。


「心か? 」


 だから、確認の意味でそう優しく彼女に声をかけてやった。




 それと同時に、今まで何か考えを巡らしていた夢の顔がぱあっと明るくなって、叫ぶ。



「ああっ!! 二重跳びお姉さんだっ!! 」





 また、続いちゃった




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ