四 騎士団
人間に見つかっちゃった!
街はこの先。なのに、後ろから人間が来た。左右は森が続くけど――。
暗くても分かるくらい、馬に乗った鎧の人がいっぱい……こわ。
ほんとにあーゆう西洋の甲冑? 着てるんだ。てかさ、何十人いんのよ。
それになんで、街の方からじゃなくて森の奥から?
どうしよう。あぁぁ喋れたらなぁ!
あのデカ猫は喋ってたのに、オレは口の形が違い過ぎるからダメなん?
ていうか、逃げるなら右左どっち? 街と鎧の人達に挟まれてるんだけど!
「あれは……黒竜です! 空飛ぶ災害の幼体です!」
「取り乱すな! 黒竜とはいえ幼体、こちらの数なら問題ない! 魔法障壁準備!」
「はっ!」
なんか叫んでるけど、戦う気満々じゃん! なんで話し合おうとかしないワケ?
あぁもう、あの人達、全部でどんだけ居んだろ。逃げた先にも居たら……。
「距離三十まで接近! ショートボウの射程範囲です!」
「あれには弾かれるだけだ。魔法攻撃に専念。だが奴は炎と魔法抵抗も高いぞ! 火炎系以外の最大火力で準備! 前衛は突発的な突撃に備えろ!」
最大火力とか聞こえた!
……こうなったら、オレの強さを見せつけて追い払う方がいいのかも。
あのクソデカ猫にやられた腹いせじゃないけど、脅かすくらいしてもいいよね。
「ぎゃるぅおおおおおおん!」
向こう行けー! 食べちゃうぞー!
人間なんて絶対食べないけど。
「ひぃっ!」
「怯むな! 魔法攻撃、撃てぇ!」
「はっ! アイスランス!」
「サンダー……ブレード!」
えっ?
体がビリビリする。
――そう思った瞬間、目の前にビカビカに光る剣みたいなのがイキナリ出た――放電してバチバチ当たってるうううう痛ぃ痛ダだダ!
その向こうでぶっといツララみたいなのがこっち向いてて――あれが後から飛んで来るっての?
ぁイダダだだだダダだダ!
やっぱり電気びりびり痛ぁああああい!
あ、ヤバ。もう激太ツララが飛んできてる――
すんごい勢い。大砲かっての。
顔と、首のあたり。羽にも当たりそう。避けなきゃ。
ああでも! 体がびりびりして痺れてる! 当たっちゃう!
――いっっっっ……たあぃ!
なんとか直撃は避けたっぽいけど、かすった!
かすっただけで滅茶苦茶痛い!
「あいつ! 電撃にも耐性があるようです! 動けるはずないのに!」
「サンダーブレードをまともに受けて、なおアイスランスを躱すか」
ああっ! 首の付け根のとこ! 自慢の鱗がちょっと剥がれてる!
最悪! さいあく過ぎる!
怒ったから。
死んじゃったら悪いと思って、使わないでおこうと思ってたのに!
どうなっても知らないから。
「黒竜が頭を起こしました!」
「ブレス来るぞ! 魔法障壁多重展開!」
オレの火炎放射を浴びればいいんだ!
くらえ~~!
「ごはああああああああ!」
いつ見ても、すっごい炎。
触れてない地面が、ボコボコ沸騰してるくらいの物凄い熱。
あ~あ。これは絶対に死んじゃったよね……。
でも、あんたたちが悪いんだから。
「障壁、五枚まで割られました! 地面が……まだ沸騰しています」
「くっ! 幼体でこの威力か! だが残り一枚でも残れば十分だ! このまま直進は無理だな。次の攻撃急げ! 障壁も再準備!」
ぅえ? まだ生きてる!
……良かったけど、良くない。
どうしよ、このままじゃとことんやり合うしかなくなる。
こっちはケガしたってのにあっちは全員無傷。不利過ぎん?
決めた、左に逃げる。けど、いきなり後ろ向くのは恐いから――。
もっかい!
「ごはあああ!」
軽く火炎放射して、その間に逃げる!
「さらにブレス! 多重障壁全ては間に合いません!」
「ぬぅぅ! 障壁、鋭角展開しろ!」
「障壁鋭角展開!」
オレってば、あったま良!
相手なんかしてられませーんよーだ!
さっきクソデカ猫に吹っ飛ばされて――負けたワケじゃないし――その上人間とも戦うとか。しかもあっちはいっぱい引き連れてさぁ。
暗くなってるし、飛んで逃げたら追い付けないっしょ。
「黒竜、逃げました! 飛行しています!」
「なにっ? 魔力追跡急げ! 見失うなよ!」
「西の方角です! 照明魔法飛ばします!」
「よし、追って止めを差すぞ! 適宜追撃の手を休めるな!」
え、眩しっ!
なんで明りが――って追いかけてきてる?
うわわわ。魔法もまだ飛ばしてきてるし。チチッって頭と羽かすめた!
さっきより小さいので撃ち落とそうっての?
……羽に当たって穴空いたらヤだな。
もうちょい引き離したかったけど、こんなに明るく照らされたらただの的になっちゃう。
森の中、どっか隠れる場所があればいいけどさぁ。
超不安なのに森に入り直すの、最悪なんだけど。
あぁもう木が邪魔。真っ直ぐ走れないじゃん。
って、うそでしょ? 後ろから音が――ドドドッって馬の走る音が――ちょっとずつ近付いてる気がする。
なんであいつらの方が早いわけ?
……オレは四つ足で、馬も四つ足で走ってる。
あ、そうか、馬のが足長いんだわ。
ってそんなこと考えてる場合じゃない!
距離詰められてるよ……ドドドッって音がさっきより近い。
こっちはこんなに必死に走ってるのに!
めっっっちゃしつこい!
どうしよう。追い付かれる。
やだ。あいつらオレを殺す気だった。
何かない? 火炎放射も効かないし、逃げるのも無理そうとか反則じゃん。
最悪、爪で戦う?
でも、これももし何かで防がれたら……しかもあっちはいっぱい居るし、木の魔獣みたいに絡みつく魔法とか使われたら……。
こっちの動きが止まった瞬間に、あのビリビリ魔法とかツララで刺される――。
あぁ駄目だ。なんか滅茶苦茶ヤバい気がする。
なんとか逃げるための手を考えなきゃダメな気がする。
どうしよう? どうしたら…………あ!
人化の術!
木の魔獣が使ってたじゃん!
チュンたちが、オレも使えるみたいなこと言ってた。
どうするのか聞いとけばよかったぁぁ!
もう念じるしかない!
人になれ人になれ! オレなら出来るきっとできる!
あああああ激ヤバなんだよ何とかなってよおおお!
――っあ?
体が熱い――。
動けなくなった。オレの体なのに、勝手に走るのやめないで。
こんなとこで止まったら……。
いや……これ、イケんじゃない?
頼むよ?
変われ変われ変われ! 人に変われ~!
頼む頼むお願いほんとお願い! なる早で頼むぅぅ!
謎に動けんし、祈るしかない。
ドドドッって音がめっちゃ近い!
恐い恐いお願い! このとおりだから!
――そう思って、ぎゅって目を閉じて祈り倒してたら。
地面に触れてる手の感触が、今までと違うくなった。
姿勢もなんか違う。いつもの四つ足の感覚じゃない。
膝ついて四つん這いしてるし、膝に当たってる地面もなんか気色悪い。
ふかふかの落ち葉が多いと思ってたのに、ざりざりゴワゴワする。
これ、もしかしていけた?
「全体止まれ~! 人が居る!」
ああっ! もう追い付かれた!
あでも人が居るって言ったよね? それ、オレのことだよね?
ドラゴンのままの姿なら、絶対攻撃されてるよね?
大丈夫。
きっと大丈夫……目、明けるよ?
…………って、暗くてあんま見えんが? さっきの明りはどこ行った。
黒っぽい地面と、うっすら人の腕みたいなものしか見えん。
これオレの手で合ってる?
「大丈夫か! 竜にやられたのか? 傷は?」
一人、人間がめっちゃ側まで来た。後ろに立ってる。
振り向くのめっちゃ恐い。顔だけ竜のままとかだったらどうしよ?
「どうした。痛みで話せないのか。少し触れるぞ」
うわぁ……あれだよね。なんか喋んないと――。
「団長! いきなり近寄るとか危険です!」
「魔力量で分かるだろう。これは子供だ。なぜこんな所に居るのかは分からんがな」
えー、やっぱオレって子どもなんだ。
「おい、長い髪で顔が見えん。動けるなら体を起こせ」
耳元で言われた! いつの間にかしゃがんで側に居るし!
だめだもう、どうとでもなれ……!
でも何話せばいい?
「あ……っと。その……」
って、やたら声高いなオレ。男の子ってこんなもんだっけ。
「やっと反応したか。おい小娘、こっちに竜が来なかったか? まさかとは思うが……」
オーマイガー!
いや待って、どっちから動揺すればいい?
え、小娘って言った?
んで、竜が人化したか疑ってる?
あああああああああもうワケわからんしヤバくて死ぬ!
「……いや、こんな僅かな魔力量で竜なわけがないな。しかし、なぜこんな場所に居たんだ?」
「団長、その子あれじゃないスか。少数民族の」
「なるほど、少数民族の迷子か」
「いや、あの種族は髪の毛の色、茶系じゃないですか。照らせ、光球。ほらやっぱり黒色だ」
うわうわうわ。
皆さん馬から降りて来ちゃって、鎧のガシャガシャって音に囲まれちゃったよ。
ていうか、魔法使いこなしまくりじゃん。明っかる~。
「ふむ。だからこそ忌み子として、生贄にでも使われたか」
このしゃがんでる人が団長さんか。
おー、めっちゃ顔良! びっくりするくらいイケメンじゃん。
少女漫画の王子様みたい。
「逃げて来たんでしょうか。可哀想に縮こまっちゃって。しかも服着てないし」
あそっか。竜の時はアレずっと裸だもんね。言われてみれば。
「かもしれんな。仕方がない。保護するか。おい、これでも羽織っておけ」
わー、マントだ。
――っぷ。あせくさ!
「えー、誰が面倒見るんです?」
……まぁとりあえず、バレてないし大丈夫そうね。
「嫌そうな顔をするな。お前の所は確か……」
「無理ムリ無理です! ダメですようち、子ども生まれたばっかなんですから!」
「チッ。そうだったな……」
頭の上で会話が……。
ていうかさ、さっき、小娘って言われたんだよ。どゆこと?
「今、舌打ちしました? もー、団長独り身なんですから、責任持って保護してあげてくださいよ。他も皆、そんな甲斐性ないですからね」
「くっ……仕方ない」
今のうちに体チェックしとこ。さすがに付いてるでしょ? 前世では付いてなかったものが。
「……あれ?」
「うん? どうした小娘。口が利けるようになったか?」
ない。ないのよ。
オレ……。
メスだったんかーい!
前世とおんなじかっ!
いや何も付いてないとは思ってたよ!
でもさトカゲとか竜とか、どこで見分けるかなんて知らないじゃん!
強さ的に勝手に雄だと――。
思い込んでたじゃんかああああああ!
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どうぞよろしくお願い致します。 作者: 稲山 裕
「なぜか皆から愛されて大公爵の養女になった話~内向的だけどそれなりに楽しく過ごしています?~『オロレアの民 ~その古代種は奇跡を持つ~』」
こちらも書いていますので、よろしくお願いします。
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