三十五 だからギャルなんですけど?
止めても聞いてくれない二人は、他に誰も居ない訓練場に出て早速、木剣を手に取った。
でも、ミリィは気に入らないみたいでレオナイル様に何か言ってる。
あーしはすでに、ちょっと離れたとこで見てるから何を話してるかは分からない。
そしたら、レオナイル様が腰の剣を抜いた。
――えっ?
一瞬、ミリィが斬られるのかと思っちゃったよ。
単に、ミリィが木剣より短いのが欲しいって言ったんだと思う。
レオナイル様の剣が木剣を二本短くした。刃の部分を、三分の一くらいに。
それから二人は背中合わせになって、お互いに五歩ずつくらい離れた。
あれじゃん、西部劇の決闘みたい。
で、そこからは正直、あーしじゃ見ても分かんなかった。
竜の時は意外と細かい動きまで見えるのに、この体だと前世の時と同じ感じ。うわー、とか、ひゃー、みたいな声しか出なかった。
なんか、二人とも格ゲーみたいに動き回って斬り合って、木剣とは思えない迫力で。
ミリィはレオナイル様の懐に入りたいみたいで、レオナイル様はそれを交わしながら斬り込んで――。
手も足も使うミリィは、レオナイル様の足を狙ったり目を狙ったり、とにかく動きが早い。
レオナイル様は、体全部が一つのかたまりみたいに落ち着いた動きで、ミリィの手数をものともしない捌き方でカッコイイ。
最後は、ミリィが下から潜り込むみたいな動きをしたところを、レオナイル様は体をねじったと思ったら、一瞬でその膝をミリィのミゾオチにクリーンヒットさせた。
ミリィの体がくの字になって後ろに吹き飛んで、だけど何とか態勢を整えると――
いつの間にか、レオナイル様の木剣の切っ先が、ミリィの喉元に当てられてた。
正直、あんなのついていけないわ。
あーしはどれだけ訓練しても、あんな風に動けない。
――あ、ミリィがちょっと凹んだ感じでこっちに来た。
「お、おつかれさまぁ……」
「くそ……なんだあの男は」
「なんか凄くて、あーしにはどっちも同じくらいカッコ良かったよ?」
「そんな次元の話ではない」
「えー?」
どんな次元の話よ。
とか思ってたら、レオナイル様もこっちに来た。
……勝ったのに、めちゃくちゃ不機嫌なんですけど?
「おい、ミリィだったか。お前、本当にエルフィオラを守るつもりがあるのか」
なになに、何の話?
「……そのつもりだが? どのみち、逆らえん理由は他にもある」
「先約が居るのか」
「そういうことだ」
「ふん。まぁいい。つまらん気を起こすなよ?」
「わかっている! 言われるまでもない!」
なんか……険悪なんですケド。
「あの、何で二人とも怒ってるの? なかよく――」
って言いかけた瞬間。
「うるさい」
「黙れ」
ミリィとレオナイル様から、ホントにまさしく、ピシャリって感じで遮られたよ。なんかハラ立つぅ。
「こいつを採用で構わんが、貴族の作法は覚えてもらうぞ。俺は戻る」
めっちゃ八つ当たりじゃない?
もう慣れてきたけどさぁ。
一応、あーしのためにテストしてくれたんだし。
それに、採用でいいって言ってくれてるし、ね。
「……行ったか」
「だね~。不機嫌が理不尽すぎたけどね」
「あぁ。だが、仕方がないだろうな」
「え、ミリィがかばうんだ」
ほんとに不思議でそう聞いたら、ミリィはバツの悪そうな顔をして目を逸らした。
何かしゃべってたのかな?
いやでも、あの激しい戦いの最中に?
「それが、な。お前も怒らずに聞いて欲しいんだが……」
「もったいぶるじゃん」
「私が白の雷帝であると、おそらくバレた」
――は?
「……え?」
「ヤバいのはそれだけじゃない」
「……え、まって。バレたって言った? え? じゃあなんで採用……」
「あいつ、人間じゃない」
「はぁ?」
「あれは、火竜だ」
「……はい?」
えっとぉ……。
何言ってんのか、わかんないんだけど?
「あの赤い瞳……間違いない。黒竜に負けず劣らずの、最上位の竜種。火力だけなら、黒竜をも凌ぐ火竜。……それが、人化したものだ」
「…………なんて?」
「お前は本当に頭が悪いな!」
「は~? 知らない話が急に出てきて意味わかんないんですけど!」
まじで意味わかんない。
あの人が竜?
あーしと同じ、人化した竜ってこと?
「お前のように人化して人間に紛れ込んでる上に、人の国でも権威を持ってる、ド級のヤバい奴だって言ってるんだ!」
「なんでそんなことしてんのさ」
そんなのおかしくない?
だったら、竜に戻ればミリィなんて簡単にやっつけてたでしょ。
「理由など知るか。ともかく、私は逃げられなくなった。くそっ。適当に暇を潰したら、また森に帰ろうと思っていたのに……。というか、お前も正体がバレてるんじゃないのか?」
「だったら、もっと何か違う対応されてそうだけど……。てか、バックレるつもりだったわけ? せっかく仲間になってくれたと思ってたのに!」
「子どもか! 何でずっとお前のお守りをせねばならん!」
「は~? まぁ? どうせ十歳のガキんちょですケド? 可哀想だからお守りしてくれてもいいんじゃないですかね!」
「はぁ……。どっちにしても、私はもう逃げられん。くそっ」
「ふん。いいじゃん、別に何も変わんないっしょ。あーしの護衛メイドしてくれる。それだけでしょ?」
「……それは、そうだが」
「ほんとに、よく分かんないけどさ。殺されるわけじゃないんでしょ? だったら、楽しく過ごせばいいじゃん。あーしはネイルが出来れば、今んとこ楽しいし」
「私には何もメリットがないが?」
「美味しいごはん。それで来てくれたんじゃなかったっけ」
「……あまりのことに、忘れていた」
「昨日の晩餐はどうだった? いつもより豪華だったんだよ?」
「そうか……。たしかに、美味かった」
「あれが毎日、とは言わないけど。いいでしょ?」
「……あぁ。まぁ、そうかもしれない」
「じゃ、細かいことは気にしな~い!」
「呆れた……。能天気な奴だな、お前は」
「前向きって言ってよね」
「前向き、か?」
「そうでしょうよ。このマインドが好きで、あーしはギャルやってんだから!」
『評価』や『ブックマーク』していただけると作者が喜びます。
どうぞよろしくお願い致します。 作者: 稲山 裕
「なぜか皆から愛されて大公爵の養女になった話~内向的だけどそれなりに楽しく過ごしています?~『オロレアの民 ~その古代種は奇跡を持つ~』」
こちらも書いていますので、よろしくお願いします。
https://ncode.syosetu.com/n5541hs/
小説の宣伝くらいしかしませんが、よかったらフォローしてください。無言フォロー歓迎。
https://twitter.com/yu_inayama




