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人化したら公爵に保護されました。ほんとは十歳の少女じゃなくて、黒竜に転生しちゃったギャルなんだけど  作者: 稲山 裕


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三十五 だからギャルなんですけど?

 止めても聞いてくれない二人は、他に誰も居ない訓練場に出て早速、木剣を手に取った。


 でも、ミリィは気に入らないみたいでレオナイル様に何か言ってる。


 あーしはすでに、ちょっと離れたとこで見てるから何を話してるかは分からない。


 そしたら、レオナイル様が腰の剣を抜いた。


 ――えっ? 


 一瞬、ミリィが斬られるのかと思っちゃったよ。


 単に、ミリィが木剣より短いのが欲しいって言ったんだと思う。


 レオナイル様の剣が木剣を二本短くした。刃の部分を、三分の一くらいに。


 それから二人は背中合わせになって、お互いに五歩ずつくらい離れた。


 あれじゃん、西部劇の決闘みたい。


 で、そこからは正直、あーしじゃ見ても分かんなかった。


 竜の時は意外と細かい動きまで見えるのに、この体だと前世の時と同じ感じ。うわー、とか、ひゃー、みたいな声しか出なかった。


 なんか、二人とも格ゲーみたいに動き回って斬り合って、木剣とは思えない迫力で。


 ミリィはレオナイル様の懐に入りたいみたいで、レオナイル様はそれを交わしながら斬り込んで――。


 手も足も使うミリィは、レオナイル様の足を狙ったり目を狙ったり、とにかく動きが早い。


 レオナイル様は、体全部が一つのかたまりみたいに落ち着いた動きで、ミリィの手数をものともしない捌き方でカッコイイ。


 最後は、ミリィが下から潜り込むみたいな動きをしたところを、レオナイル様は体をねじったと思ったら、一瞬でその膝をミリィのミゾオチにクリーンヒットさせた。


 ミリィの体がくの字になって後ろに吹き飛んで、だけど何とか態勢を整えると――


 いつの間にか、レオナイル様の木剣の切っ先が、ミリィの喉元に当てられてた。


 正直、あんなのついていけないわ。


 あーしはどれだけ訓練しても、あんな風に動けない。


 ――あ、ミリィがちょっと凹んだ感じでこっちに来た。


「お、おつかれさまぁ……」


「くそ……なんだあの男は」


「なんか凄くて、あーしにはどっちも同じくらいカッコ良かったよ?」


「そんな次元の話ではない」


「えー?」


 どんな次元の話よ。


 とか思ってたら、レオナイル様もこっちに来た。


 ……勝ったのに、めちゃくちゃ不機嫌なんですけど?


「おい、ミリィだったか。お前、本当にエルフィオラを守るつもりがあるのか」


 なになに、何の話?


「……そのつもりだが? どのみち、逆らえん理由は他にもある」


「先約が居るのか」


「そういうことだ」


「ふん。まぁいい。つまらん気を起こすなよ?」


「わかっている! 言われるまでもない!」


 なんか……険悪なんですケド。


「あの、何で二人とも怒ってるの? なかよく――」


 って言いかけた瞬間。


「うるさい」


「黙れ」


 ミリィとレオナイル様から、ホントにまさしく、ピシャリって感じで遮られたよ。なんかハラ立つぅ。


「こいつを採用で構わんが、貴族の作法は覚えてもらうぞ。俺は戻る」


 めっちゃ八つ当たりじゃない?


 もう慣れてきたけどさぁ。


 一応、あーしのためにテストしてくれたんだし。


 それに、採用でいいって言ってくれてるし、ね。


「……行ったか」


「だね~。不機嫌が理不尽すぎたけどね」


「あぁ。だが、仕方がないだろうな」


「え、ミリィがかばうんだ」


 ほんとに不思議でそう聞いたら、ミリィはバツの悪そうな顔をして目を逸らした。


 何かしゃべってたのかな?


 いやでも、あの激しい戦いの最中に?


「それが、な。お前も怒らずに聞いて欲しいんだが……」


「もったいぶるじゃん」


「私が白の雷帝であると、おそらくバレた」


 ――は?


「……え?」


「ヤバいのはそれだけじゃない」


「……え、まって。バレたって言った? え? じゃあなんで採用……」


「あいつ、人間じゃない」


「はぁ?」


「あれは、火竜だ」


「……はい?」


 えっとぉ……。


 何言ってんのか、わかんないんだけど?


「あの赤い瞳……間違いない。黒竜に負けず劣らずの、最上位の竜種。火力だけなら、黒竜をも凌ぐ火竜。……それが、人化したものだ」


「…………なんて?」


「お前は本当に頭が悪いな!」


「は~? 知らない話が急に出てきて意味わかんないんですけど!」


 まじで意味わかんない。


 あの人が竜?


 あーしと同じ、人化した竜ってこと?


「お前のように人化して人間に紛れ込んでる上に、人の国でも権威を持ってる、ド級のヤバい奴だって言ってるんだ!」


「なんでそんなことしてんのさ」


 そんなのおかしくない?


 だったら、竜に戻ればミリィなんて簡単にやっつけてたでしょ。


「理由など知るか。ともかく、私は逃げられなくなった。くそっ。適当に暇を潰したら、また森に帰ろうと思っていたのに……。というか、お前も正体がバレてるんじゃないのか?」


「だったら、もっと何か違う対応されてそうだけど……。てか、バックレるつもりだったわけ? せっかく仲間になってくれたと思ってたのに!」


「子どもか! 何でずっとお前のお守りをせねばならん!」


「は~? まぁ? どうせ十歳のガキんちょですケド? 可哀想だからお守りしてくれてもいいんじゃないですかね!」


「はぁ……。どっちにしても、私はもう逃げられん。くそっ」


「ふん。いいじゃん、別に何も変わんないっしょ。あーしの護衛メイドしてくれる。それだけでしょ?」


「……それは、そうだが」


「ほんとに、よく分かんないけどさ。殺されるわけじゃないんでしょ? だったら、楽しく過ごせばいいじゃん。あーしはネイルが出来れば、今んとこ楽しいし」


「私には何もメリットがないが?」


「美味しいごはん。それで来てくれたんじゃなかったっけ」


「……あまりのことに、忘れていた」


「昨日の晩餐はどうだった? いつもより豪華だったんだよ?」


「そうか……。たしかに、美味かった」


「あれが毎日、とは言わないけど。いいでしょ?」


「……あぁ。まぁ、そうかもしれない」


「じゃ、細かいことは気にしな~い!」


「呆れた……。能天気な奴だな、お前は」


「前向きって言ってよね」


「前向き、か?」


「そうでしょうよ。このマインドが好きで、あーしはギャルやってんだから!」


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どうぞよろしくお願い致します。  作者: 稲山 裕




「なぜか皆から愛されて大公爵の養女になった話~内向的だけどそれなりに楽しく過ごしています?~『オロレアの民 ~その古代種は奇跡を持つ~』」

こちらも書いていますので、よろしくお願いします。

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