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人化したら公爵に保護されました。ほんとは十歳の少女じゃなくて、黒竜に転生しちゃったギャルなんだけど  作者: 稲山 裕


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三十四 知らないからね

 無事に街に戻って、屋敷に帰ったらマリアンの甘やかしがものすごかった。


 もはやペット状態で猫可愛がり。何もかもお世話してくれて逆に疲れるくらい……。


「エルフィオラちゃん、他に欲しいものはない?」


 お風呂では頭からつま先まで全身洗ってくれて、晩餐は特別豪華にしてくれて全部あーんで食べさせてくれて、髪の手入れも服の着せ替えも、全部……なにも自分でさせてもらえなかった。


「マリアン。もう寝るだけだから、ね? もうおやすみなさい」


 ようやくベッドに入る頃には、なんかあーしの方が疲れちゃったよね。


「そうなの? ほんとは添い寝したかったんだけど、ちょっとお仕事が残ってて……残念だけど、また明日の朝にね」


 他の仕事ほったらかしてたら、そうなるよねぇ!


 って、もう喉を通り越すくらいまで出掛かってたけど、なんとか呑み込んだよ。


「うん、また明日」


 めっちゃ名残惜しそうに出てったけど、まだドアの向こうに居そう。


 でも……やっと一人になれた。


 ていうかこんなだったし、お屋敷に戻ってから、ミリィとは晩餐の時にしか会えてないんだよね。


 ユリーシアとも同じ。顔見ただけ。二人で手ぇ振り合っちゃったよね、同じ食堂に居て、長テーブル越しの近さなのに。


 ミリィのことは、お屋敷のみんなには簡単な説明しか出来なかったけど、あーしと同じ物食べてたから受け入れてもらえてる……と思いたい。


 まぁ、ミリィなら文句があれば、あーしに言いにくるよね。


 マリアンが他の侍女さんに、部屋の用意を、って指示してたから大丈夫だよね。


 それより、レオナイル様がまだ森から帰ってないのに、みんな気にするそぶりがないんだけど。


 わざと心配してない風にしてる……って感じでもなくて、本気で信頼してるから安心が揺るがない、みたいな感じに見える。


 あーしもそこまで心配はしてないけどさ。


 だって、ミリィもあーしもここに居るから、レオナイル様が他の魔物にやられるハズないだろうし。


 あぁ、みんなもこういう感じなのかも?



   **



 あーしが帰ってから数日後に、レオナイル様たちは帰還した。


 みんな、負けちゃったからか浮かない顔だったけど、全員無事だった。


 レオナイル様が不機嫌なのを除けば、これまでと同じ日常がお屋敷に戻った。


 少なくともあーしは、やっぱりレオナイル様が居るほうがお屋敷の中も落ち着いてる気がする。


 そういえばロイ君は、フラグなんて無かったみたいに道中の魔物を倒して、意気揚々であーしたちと一緒に戻ってる。帰るまで無駄にハラハラしちゃったじゃんね。


 で――。


 レオナイル様への報告なんだけど……。


 まず、あーしが脱走――もとい、攫われたっていうのはみんなでナイショにした。


 ミリィについては、今からあーしとレオナイル様との三人で話をすることになってる。


 だけどあの執務室の雰囲気、ニガテなんだよねぇ。


「あの男と面談か。さて、見抜かれるだろうか」


 ミリィってば執務室の前で、あーしがドアをノックしようとしたらそんなこと言うんだよね。


 綺麗な顔で、口の端だけ歪めるみたいに笑ってる。


 一応、あーしの護衛兼専属メイドになる予定だからメイド服なんだけど……せっかくに合ってるのに、その悪そうな顔やめて?


「ミリィ……なんで楽しそうなのよ」


「正直、正体を隠してコソコソしているのが性に合わん。いっそ言ってしまったらどうだ」


「ダメだから。それさ、あんたが良くてもわたしはどうすんのさ」


「フッ。すぐそうやって顔に出す。まぁ適当に合わせてやるさ」


「むぅぅぅ」


 ていうか、この会話を誰かに聞かれたりしてないよね?


 とりあえずノックを三回して……。


「入れ」


 っていう声を聞いてからドアを開けた。


「失礼します。エルフィオラとミリィです」


「そこに座れ」


 愛想なっ!


 レオナイル様、機嫌悪いなら別の日にしてほしいよまったく。


 完璧なカーテシーを毎回褒めてくれてもいいのにさ。


 ていうか、ミリィも出来てるのがなんかハラ立つぅ。ちょっとドヤ顔でこっち見てるし。


 いろいろとモヤりながら、ドアに一番近いイスに座った。


 執務机で座ってるレオナイル様から、おっきな作業机を一つ挟んでの、二つ目の机だからちょっと遠い。


 でも、このくらいの距離がないとイライラ全開のレオナイル様と喋るのがイヤ。


「そのミリィというのは、どこの誰だ」


 ほら、トゲトゲしてるしさぁ。


「えっと、元の国で、護衛をしてもらっていました。母がミリィの主なので、私には友達みたいに接してました。それから……美人です」


 何かあーし、緊張してるかも。


「それは見れば分かる。他には? いつから雇っていた。護衛なのになぜ森に居た。素性が知れないから聞いているんだ」


 うへぇ。


 ほんとに美人なの見てるのかな? メイド服だからちゃんと見てないんじゃない?


 こんなの顔採用でいいじゃん!


 それなのに、めっちゃ掘り下げようとするじゃん。


「私が、護衛でありながら故あってはぐれてしまい、ずっと姫を探していた。あの森に入ったと聞いて、捜索していた」


 ミリィが勝手に話進めてる……。


 てか、マジメな顔も出来るんだ?


「それはいつだ」


 表情を全く変えないで、冷たく聞いてこられるとまじで怖い。


「さぁ。しばらく彷徨っていたから分からない」


「ふん。それで、お前は礼節を知らないのか」


「私は誰にも縛られない。そういう契約だ」


 ちょっ……ミリィ?


「ここでは俺に従え、と言ったら?」


「力で従えるか、権力で従えるか、好きな方を選ぶといい」


「ほう……」


「ちょっと、ミリィ!」


 ここでレオナイル様の、片眉だけがピクっと動いたんだよね。


 見なきゃよかった。絶対怒ってる。


 こいつ何言ってくれちゃってんの?


「俺を試すか。ならばお前が選べ。後になって女であることを理由に、言い訳をせんようにな」


「そんな品の無いことはしないさ。そしてもちろん、力で試させてやろう」


「試させてやるだと? 言うじゃないか。今からでも構わないのか?」


「いつでも」


 あ~あ。こいつアホでバカなの?


 レオナイル様に怪我させられてたくせに。


 ……でも、森では一対多数だったから?


 いや、今は人の姿してるの忘れてる?


「ねぇミリィ、本気?」


「お前も見ておけばいい。私の力量を」


 ミリィは無理して強がってる風でもない。


 ほんとに自信ありって感じで、肩に力も入ってない。


「いやカッコイイけどさ。負けても泣かないでよ?」


 どっちも応援したいけど、今はちょっとだけ、ミリィに勝ってほしいかな。


 だって今のレオナイル様、森で負けたからってめちゃ態度悪いし。


 ほんと、大人げないんだからさ。負けず嫌いの男の子を大人にした、みたいな。


「おい、いつまで喋っている。外に行くぞ」


「あぁもう、ほんと知らないから」


 この体じゃ、あーしは魔法使えないんだよ?


 二人とも、ケガしても治癒してあげらんないからね。


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