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人化したら公爵に保護されました。ほんとは十歳の少女じゃなくて、黒竜に転生しちゃったギャルなんだけど  作者: 稲山 裕


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二 木の魔獣

 あーし、気付いちゃったんだよね。


 水が出せるってことは、水たまりを作って自分を見られるってコトに!


 どれどれ……?


「ぎゃうるるる!」


 なんか、鋭い形しててイカつい!


 口の先から角の先までほとんど真っ直ぐで、顔と角が一対一くらいに角が太くてデカい。黒くてちょっと流線型なのがまた強そうだし。


 目つきも鋭いし真っ黒で、よく見ると瞳が縦割れでまた怖いし。


 狩る側の顔してるわ……。


 あと話変わるけど、問題があって。寝る場よ。


 どこに寝るのか本当に悩んだのよ。結局、いっぱい燃やしちゃった木が灰になってるココにしたけど。一時間かけて切り開いた場所だしね。


 最初は鳥みたいに木の上。って思ったけど体の大きさ的に難しそうだし、洞窟みたいな場所は飛んで探してみたけど見つかんなかった。その時、遠~くの方に大っきい街が見えたから行ってみたかったけど……さすがにドラゴンが行くのはマズイよね、って諦めた。


 飛んで行っても、たぶん何時間もかかりそう。歩いて行ったら何日かかるかわかんない。まぁ、歩く時の距離感は人間の時のやつだけどね。ここは木ばっかで、地面をどれだけ進んでも距離感ないんだもん。だからドラゴン歩きが早いのかどうかは謎。でも、茂みとか気にせず爪で引き裂きながら歩けるのはまじ便利。


 街の反対側は、もっともっとどこまでも森が続いてた。地平線ならぬ森平線だよ。広過ぎてビビったよね。


 所々、キラキラ光る線とか見えたけど。あれはたぶん水だね。つまり川!


 探せば魚も食べれんじゃん、って思ったけど、泳げないんだよね。釣りもしたことないし、一旦諦め~。


 あでも、クマがシャケ捕るみたいに、浅いとこがあれば出来るかも?


 それはさて置きよ。倒した木で家を……なんてあーし、じゃなかった、オレには作れないし。


 とゆーわけで灰と炭の上で寝ることにしたんだけど、これが割と心地良い。


 一番のお気に入りの理由は、虫が居ないこと!


 定期的に火を吹いて熱消毒すれば清潔だろうし、この体、全身硬いから正直どこで寝ても問題なさそうなんだよね。気になったら魔法で水出して浴びればいいし。


 ただ……どう寝るのか問題が解決してない。


 体は意外と柔らかいから、猫ちゃんの寝方を思い出して一通り試したんだけど……コレってのが見つからない。


 今は一応、原形を保ってる炭化した木を抱きまくらにして、うつ伏せ? で寝てるんだけど。


 ――ちなみに、仰向けは一生出来ん体になってしまった。


 角があんのよ。地面に頭が刺さんの。あと羽。それに背ビレみたいなトゲというか角みたいな突起も邪魔だし。


 でも、灰の上で寝るようになって一番のお気に入りは、スズメみたいな小鳥たちが砂浴びならぬ、灰浴びしに遊びに来てくれること!


 めっさいっぱい居んの!


 スズメ大好きだから、来てくれて嬉しい。何ならオレの角とか羽のとまりやすい所で毛づくろいとかしてるし。


 もふもふしてチュンチュン可愛くて、もうたまらん!


 こっちが襲ったりしないって理解してくれてるのか、安心しきってもっふりお団子みたいにリラックスしてる子もいる。


 んで、適当にゴハンとか探しにいくのか、ブワって皆で飛んでっちゃう。


 そこからオレもゴハン狩りに行くんだけど、オオカミだけじゃなくて、ブタみたいなイノシシみたいなやつとか、クマみたいなのとか、そういうのってオレを見たら攻撃してくるんだよね。トラ柄みたいな大型の猫系のも居て、同じく襲ってくる。


 だから大体一、二時間くらい? 長くても三、四時間。ウロウロさまよってたら向こうから来てくれるんだけど、なんでこんなヘイト高いん? もしくはエサと思われてるだけ?


 意味わからーん。


 こいつらのどれかと出会うじゃん? 大体、お互いに同じくらいで気付くの、「はっ」みたいに。こっちは毛むくじゃらが居てドキっとしてさ。


 やっぱ、積極的に行けるほど覚悟は決まってないってゆーか……。命を奪うのは、しんどいわけ。


 そんなこと迷ってるうちに、向こうがゆら~っと近付いてくる。あでも、クマなんかさ、一旦「お前なんか興味ないですけど?」みたいにフェイント入れて来るの。


 そっからよ本番は。


 向こうは完全にスイッチ入ってるからさ、こっちの嫌なタイミングでぐわー! って襲ってくんのよ。


 なんか、それぞれ「殺(ヤ)っちまうぜ」な距離があるっぽい。


 でもま、こっちは迷ってるから助かるのよ。向こうから襲ってくるからしょーがないよね、って感じで爪で倒せるから。


 だから、お陰でゴハンには困らない。


 んで寝床を血とか油で汚したくないから、今んとこ狩った場所の木をちょっと倒して開いて、そこで焼いて食べちゃう。ちさんちしょー、ってやつ?


 捌くのも慣れてきたんだよね。これは誰かに褒めてもらいたい。


 おいしー! って食べた後は火事になっちゃダメだから、魔法の水で残り火を消すのを忘れずに。んで、その場所でついでに体をバシャバシャ洗って、帰って寝る。


 とゆー、完璧な生活になっちゃった。この体も魔法も便利過ぎる、たまらん。


 ちなみに一番おいしいのは、鹿っぽいやつ。大体はこっちが見つけた瞬間には逃げちゃうんだけど、たまーに襲ってくるのが居て、そういう時だけ倒して食べちゃう。こっそり、ごちそう君と呼んでる。


 そんなまったり生活が結構続いて、三週間くらい経った? ちゃんと数えてないけど。


 なーんか、元の世界よりもジュウジツしてる気がする。生きてる~って感じなんだよね。それに前世のことは、誰とどんな生活してたのか……覚えてないっぽいんだよね。


 動画のこととか、つまんないことは覚えてんのに、変だよねー。だから、もう考えてもしょーがないって言うか。


 それよか、なんかヒマかも、って思い始めた昨日くらいから、変なことが起きたんだよね。


 チュンたちの言葉がさ、わかんの。スズメが何言ってるのか分かっちゃう。


 チチチチ!

 チチチ、チチチチ!


 みたいな警戒の鳴き方でも、意味が理解できちゃう。


「昨日はあっちにアレが出たよ!」


「きょうもあっちに居たよ!」


 アレってなにー? って、なんとなく喋ったらさ、向こうもオレの言葉が分かるみたいで。


「ぐるぅぁるる?」


 って声出したら。


「あ! ドラさんしゃべった!」


「ドラさん、アレたおして!」


 チュンチュンしか聞こえないのに、意味分かるのすごくない?


「アレはね、うちらを食べるわるいやつ!」


「ニンゲンにも化けるよ!」


「ゆだんさせて、枝がいっぱいのびてくる!」


「木のマジュウだよ!」


 チチチチチチ!

 チュクチュクチュク!


 スズメが警戒してる時の声とか、怒ってる時の鳴き方で喋ってる。


 木のマジュウ……魔獣か。


 この子たちを食べるなんて、ちょっと許せないな。


 オレに懐いてて、毎朝カワイイ姿を見せてくれるのに。


 これは……倒すしかない!


「ぐあー。ぎゃおるるる!」


 どこにいんの? 倒してくるよ!


 そう言ったつもりで喋ったら、スズメたちが一斉にバッって飛び立った。


「あっち!」


「こっちだよ!」


 チュン! チュンチュン!


 あぁ可愛い。


 この子たちのためなら、絶対倒す。


 それに木の魔獣なら、火を吐くだけで勝てそうだし。


 念じて飛ぶのにも慣れてきたから、チュンたちに追い付くのもカンタン。


 で、そこは何分か飛んだ所でわりと近くだった。たぶん五百メートルくらい?


 寝床にしてる場所から、そこまで離れてない。


 景色はほとんど変わらないけど、他よりもちょっとだけ開けてる気がする。それに、チュンたちが好きそうなサラサラの砂場がちょこちょこある。


 このくらいの距離なら一回は通ったことがあるはずけど、その時はこんな感じの景色じゃなかったのに。


 ……わかった。スズメを追いかけてこっちに来てるんだ。皆、オレの寝床に集まってるっぽいから。


 なおさら許せない。


「めのまえ!」


「そこにいるよ!」


 チチチチチチ!


 皆が警戒の声を出してる。


 でも、どこに居るのか分からない。


 近付くと危ないのか、チュンたちは逃げていった。


 つまり、本当に近くに居るんだ。


 飛んでるから見えないのかな?


 見渡した感じ、他は緑が茂ってることしか分かんないから地面に降りてみよう。


 ――って、女の人が倒れてる!


 上からじゃ見えなかった。


「ぎゃおるん!」


 大丈夫?


 おっきな葉っぱで、体を包むようにして大事なところは隠してる女の人。少しうずくまってて体調悪そう。色白で茶髪の綺麗な人……だと思う。あと、ふとももの後ろ側とお尻がちょっとだけ見えててエロい。


 いや、まてまて。


 待てよ?


 チュンたちが、「ニンゲンにも化けるよ」って言ってたよね。


 え、でも、こんなのどう見ても人だし。


 相手は木の魔獣だから、ここまで完璧には化けれないっしょ。だからこの人は本当の人間なんじゃ……。


 どうしよ。こんな所で遭難してたんなら、あの人間の街に、せめて近くに連れてってあげなきゃ可哀想。


 うん、そうしよう。


「ぎゃおるる?」


 大丈夫ですか?


 いちお、数歩手前で一旦声かけとこう。


 あでも、言葉はわかんないか。てか意識なさそう。


 いや、あったらあったで、ドラゴンが近寄ってきたらふつーパニクっちゃうか。


「ぎゃるるぅぉ」


 抱きあげますよ~?


 爪で傷付けないようにそっと。そーっと抱き上げて……。


 うわ~、キレイな顔――って!


「ギシャシャシャシャシャ!」


 ――ぬわあああああああああ顔が裂けた!


 女の人の顔が、鼻から縦横十字にバックリ裂けたああああああ!


 中身赤グロくてきっっっも!


「ギャシャシャシャー!」


 あああああああくそう! あれだけチュンたちが警告してくれてたのに!


 あっという間に、こっちの全身が木の枝みたいな蔓みたいな、とにかくそういうのでグルグル巻きにされてる。


 逃がさないって?


 いやいや、こっちが許さないから。


 こんな風に、チュンたちも騙して食べたんでしょ?


 とか思ってたら、女の人だったはずが一瞬でクソデカくなって、丸太の化け物みたいに本性現しやがった。


 だけどよく見たら、蔓と枝の集合体みたいな、ウネウネグネグネした丸太で、触手みたいにいっぱい枝と蔓を伸ばしてきてる。


 その先っぽに、毒々しい花のつぼみが……ってそれ口かーい!


 牙がいっぱい並んでた。その毒のつぼみも、十文字にガバーって口開けて牙だらけだった。


「ギュシシシシシ!」


 笑ってんの?


 どこが顔だか、わっかんないけどさぁ!


 ってなんか、オレのウロコ剥がそうとしてる? すっごい嫌な感触。食い込ませようとゾリゾリ逆撫でされてる。


 そーいう地味な攻撃って厄介かも――。


 しかも粘液? きっしょい!


 頭の上のつぼみがグパ~って開いて、緑色のドロドロかけられてる~!


 毒とかだったらどうしよう!


 溶けたりはしてないけど、油断した――


 焦っちゃダメ。手はまだちょっと動く……?


 ならオレの爪、なめてもらっちゃ困るわけ。


「ぎゃるぉおおおん!」


 ズバーっと!


 ほらやっぱ、グルグル巻きにされても簡単に千切れる!


 ズバズバっと千切って、


 からの――


「ごはあああああ!」


 ドラゴンの火をくらえ!


 至近距離の火炎放射だぞ~! 燃えろ燃えろ~!


「ギシャアアアアアア!」


 どこからその声出してんのさ。


 とにかくもう一撃、爪でズタズタにしてやりたい。


 とか思ってる間に、すぐ燃えちゃった。予想通りガチで火に弱いじゃん。


 一瞬で燃えカスになるとか草。……木じゃなくて草の魔獣だったとか?


 まぁいいや。


 離れとかないと自分も燃えちゃう? って思ったけど、ほぼ密着でもぜんぜん熱くなかった。


 この体、硬いだけじゃなくて火にも強いんだ。


 オレ最強じゃん!


 あ、いっぱい水出して謎の液体、洗い流しとかないと。こいつ、ドロドロかけるとかマジで最悪。


 ……はぁ。なんか疲れた。


 でも、すごいなードラゴンって。


 そりゃあファンタジーでも、伝説の怪物になるわけだよね。


 これを倒せる英雄って何者? ウケる。


 あ。チュンたちに教えてあげなきゃ。倒したよーって。


 でも、日中はどこに居るのか知らないんだよね。


 んじゃあ……とりま、自分のゴハン探しに行きますか。



  **



 でさー、こう、ガバっと口開けて火を吹いたワケ!


 そしたらもう、一瞬よ!


 ――チュンチュンチュン


 すごいすごい、だってさ。


 かわいいなぁもう。


 昨日倒して、今朝はもう明け方からチュンたちに起こされちゃった。


 心配してくれてたみたい。で、朝イチで様子見に来てくれたってさ。


「こわくてにげちゃった」


「たおしてくれてありがとう!」


 チヨッチヨッチヨッ!


 あんまり聞いたことのない、めっちゃカワイイ鳴き声。


 いいのいいの、チュンたちが平和で暮らせるのが一番だからね。


 あ~毛づくろいしてるの、かわちぃ~!


 チュチ、チュチチチチ――


 え、森の主も倒すのかって?


 そんなの考えたことなかったけど、この力ならヨユーかもね。


 あえてこっち仕掛けるとか、そんな気はないよ。戦闘狂じゃあるまいし。


 ……って思ったけど、やっぱ戦ってみたいかも? 


 なんか、ウズウズってした。


 これって、ドラゴンの習性かな。


 そうだ。別に殺し合いするんじゃなくて、腕試し的な?


 楽しそうって、思っちゃったんだよね今。


 うーん。森の主ってのを探してみようかな。


 チュイ!

 チュチュチュン!


「ドラさんもニンゲンに化けないの?」


 そんなこと出来るわけ……。えマジ?


 チュン! チュン!


「まほうで化けるんだよ」


 魔法で出来るんだ?


 チュンたちは何でも知ってるんだねぇ。


 てかめっちゃ色々喋るじゃんね。うれしい。


 もっと仲間だって思ってくれたのかな。


 まあでも人に化けるのは、今は何のメリットもないからね。出来てもしないかな。


 この体、かなり気に入ってるし。


 それより、森の主がどこに居るのか知らない?


「森のおくのおくだよ」


 なるほど、なんかボスみたいだね。奥って言ったら、人間の街とは反対の方だよね。


 そうだ。ガチに戦わなくても、軽くやって友達になったら楽しそうだし。


 会いに行くって感じで行けばいいんじゃん。んでちょっと、勝負しよ、って。


 オレがこの森で一番って分かったら、チュンたちも安心できるし一石二鳥ってやつ!


 そうと決まれば、早速探しに行こうかな!

 

この作品は『アルファポリス』様にて、先行して投稿しております。


もしも続きが気になる時は、そちらで少し先まで読むことが出来ます。

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