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人化したら公爵に保護されました。ほんとは十歳の少女じゃなくて、黒竜に転生しちゃったギャルなんだけど  作者: 稲山 裕


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十七 力は王宮魔導士級?

「本当に、お嬢様に打ち込むんですか?」


「ええ、やってくださいまし」


 いやいやいや、勝手に話を進めないでよ。


 隣で訓練してた騎士さんたちの、一番近くにいた人をユリーシアがとっ捕まえてきた。


 他の騎士さんたち同様、大きくてがっしりしてる。他の人と違うところは、茶色い髪をかなり短く刈り上げてる軍人さんみたいな頭だった。


 だからか、黒っぽい訓練服が余計に似合って見える。


 幼そうに見える童顔で、茶色い目がぱっちりしてて、苦笑いしてても可愛らしい。


「ムリだってばユリーシア」


「大丈夫ですわ。わたくしの打ち込みの鋭さは、彼らに引けを取りません。男性の力でも耐えられるはずですわ」


「はず、って。やっぱり怖いよ!」


「その補助魔法の力、間違いなく王宮魔導士レベルですわ。あなたの力を信じなさい」


 そんな風に、ずいっと顔を近付けられても怖いものは怖い。


「そんなこと言われてもさぁ!」


「ユリーシア嬢。いくら何でも、本人が嫌がってるのに打てませんよ……」


 ナイス騎士さん! もっと言ってやって!


「もう。じれったいですわね」


 でもこのままじゃ、ユリーシアに押し切られて……あーし、ボコスカにされそう。


 何か他の案を考えないと――。


 あーしが殴られずに済む方法……って思ってたら、心配そうに困り眉をしてこっちを見てる、刈上げの騎士さんとめっちゃ目が合った。


「あ! じゃあさじゃあさ、その人にネイルするから。その人で試してよ」


 我ながら妙案!


「あら。では安全性などのチェックもこの方で試すのね?」


「あぁっ! そうだった!」


 ダメじゃん、あーし。


 やっぱ、試し打ちされるのは、あーししかいないか……。


「ネイルって、お嬢様が付けてる爪のやつですか? オレなら構いませんよ。強くなれるんなら試してみたいですね」


 めっちゃにこやかな刈上げ騎士さん。ばちーん、てウィンクしてくれた。


 庇ってくれたんだ。


「あらぁ。良かったですわねエルフィオラ」


 でも。でもだよ?


「つ、爪が凍っちゃったらどうすんのさ」


「爪が? まぁ、凍って剥がれるくらいなら……治癒魔法使えるヤツも居ますんで、大丈夫です。訓練でもミスって骨折とかありますからね。そのくらいまでの怪我なら」


「へ? そうなの?」


 治癒魔法とか、この世界は何でもアリか!


 でも助かる~。


「ま、まぁ、そゆことなら……身代わりになってもらっちゃおうかな……」


「すぐに出来ますの?」


「筆がないけど、雑でいいなら。……いや、やっぱそんなの自分が許せない。部屋から取ってくる」



 そうして戻ってくると、騎士さんたちは再開してた訓練を止めて、あーしに群がった。


 なんか、騎士だからかみんなおっきいんだよね。


 囲まれるとちょっと、今の自分がちっさいせいか、よけいにコワイんだけど。


「ちょっと皆様。騎士とはいえ男の面々で囲んでは、エルフィオラが怯えてるじゃありませんか」


「ああ、これは申し訳ありません」


 わー、ユリーシアあんがと。なんか、あーしって男の人怖かったっけ? なんでか側に来られると、殴られる気がして身構えちゃうんだよね。


「では、オレが試させていただきますね。どの指でも良いのですか?」


「あ、うん。大丈夫。それじゃいくよ」


 まだたったの二回しか試してないけど、液体を作り出すのも、カットしておいた花びら乗せるのも、固めるのも全部上手くいった。


 塗るのはずっとやってきてることだから、これは不安なんてないけど。


「花びら、わたしに合わせてカットしてたやつだからお兄さんの爪にはちっちゃくて。二枚で双葉模様みたいにしちゃったけどいいよね? 可愛く出来たし!」


 むふー。ちょい満足。


 可愛いは、強い。


「こ、これはちょっと、人に見せるのは嫌ですが……。まあ、強くなるなら」


「――嫌なんかい!」


 あ。つい被せ気味につっこんじゃったじゃん。


 イヤだとか言うからさぁ。


「エルフィオラ? 言葉遣い」


「あぅ」


 やっぱりおこられた……。


「では、騎士さん同士で打ち合ってみてくださいな」



 ――その結果たるや。


 あーしもびっくりしたよね。


「……これほどまでとは。オレ、皆よりも背が少し低いし、力が弱かったんです。だから訓練後もその倍はトレーニングしてたんですが……それがバカらしくなるくらい、凄まじい膂力(りょりょく)でした。自分じゃないみたいで、正直恐ろしくもありますね、この補助魔法」


「効果時間は? やはりまだ続いていまして?」


「えぇ、おそらくは。しかもこれ、常時発動というよりは、まるで自分の体の一部のようです。必要な時に、望んだ分だけの力が発揮できる。そんな気がします」


「と、言いますと?」


「今は打ち合っていませんから、普段通りです。ですがいざとなったら、手加減しなくては木剣ごと砕いてしまえそうなほどに、自在に力を出せる感じです」


「それはすごいですわね……」


「へぇ~……そんな感じなんだ」


 あーしはゲームとかやんないから、効果がどうだとか、詳しく調べる方法が分からないけど。


 この人たちは、ずっと体張って戦ったりしてるから、本気なんだね。


 めちゃ真剣に検証し出して、何をどう試せばいいかとか、わちゃわちゃ楽しそうに話し込んでは打ち合ったり……あーしたちはもうお邪魔みたい。


「エルフィオラ。わたくしたちも邪魔ではありませんよ? 彼らの検証を、次の改良に生かすために見ておくのです。彼らが民を護るために、どれだけ真剣なのかも」


「……そっか、そうなんだよね」


 自分でもうっすらと思ったけど、生きるために、護るために、戦ってくれてるんだ。


「――ね、ユリーシア。国の成り立ちでも習ったけど、魔物と戦うのってそんなに大変なの?」


 竜の時は、だいたい爪で一撃か、火ぃ吹いたら勝てちゃったから。……唯一あの、クソデカ猫にはワンパンどころか、尻尾で吹っ飛ばされたけど。


「そうですわね。実際に体験してみないことには、本当の恐ろしさは分からないですわね」


「え、その口ぶりって、ユリーシアも戦ったの? 魔物と?」


「ええ、もちろん。この国の貴族は、誰もが成人の儀でその力を示すことと、戦闘の恐ろしさを学ぶのですわ。だからこそ、最前線で戦う騎士の皆様に、心からの敬意を持てるのです」


「そうなんだ……」


 ちょっとジーンとした。


 映画のワンシーンみたい、なんて言ったら分かってないって言われそうだけど。そうじゃなくて。


 遠い世界みたいに思ってたのが、本当のことなんだなってイメージ出来て、身近に思えたんだよね。


「エルフィオラも、成人の儀をすると思いますわ。それも、意外と近いうちに」


「え? 成人ってここだと十五歳なんじゃないの?」


「上限が十五歳というだけで、その力が確かならもっと早く執り行いますのよ?」


「それ、わたしもするの……?」


 レオナイル様と約束した契約家族って、ほんとの子どもにするようなことも、やらせるの?


「するのではなくて? 賓客(ひんきゃく)扱いとは聞いていますけれど……どう見ても我が子にするような情の注ぎ方ですもの」


「え? 情? えっ?」


 待って。


 家族って、契約上の、だよね?


 我が子の情までは注がないでしょ?


 他人よ?


「もう、エルフィオラったら。いくら大切な客人でも、最上級のドレスや宝飾品をいくつも買い与えたり、わざわざ年の近い有能な家庭教師を高給で雇ったりしないものよ? あなたの国では、誰でも同じようにするものなの? 逆に」


「……しないと思う」


 いや、最初はおかしいと思ってたよ?


 でもなんか、なし崩しに与えられて……お返しできるようにとは思ってたけど、なんか、甘えちゃってたっていうか……。


「今ごろ理解なさったの? 呆れた……。年齢よりは賢そうと思いましたけれど、やっぱりお子様でしたわね」


 ほんとにちょっと残念そうな顔、しないでよ。


「ごめん……」


 めっっっっちゃ、反省してる――今。


「まぁよろしいのではなくて? エルフィオラが楽しく暮らせているのなら、レオナイル様のご厚意は無駄になっていないのですから。それが一番の恩返しですわよ?」


 小首を傾げて、お分かりになって? みたいな仕草されてる。


 でも、その声の感じはちょっと優しい。


「ユリーシア……。刺すか慰めるか、どっちかにしてよ」


「フッ。フフフ、ごめんなさい。レオナイル様の情をもらっているあなたへの嫉妬と、あなたを可愛らしいと思うわたくしの素直な感情が両方とも出てしまいましたの。おっほっほ」


 出た。久しぶりのお嬢様笑い。


 これって絶対、相手を煽る時用の笑い方だよね?


「こっわ……。ユリーシアこわい」


 え、まって。剣術訓練で本気なのも嫉妬で……?


「ま、冗談はさておき。レオナイル様に報告に行きますわよ。あなたのその力……どう扱うか決めていただかなくては」


「じょ、冗談って言う名の本気じゃん! べつにいいけどさぁ。隠されるより、ぜんぜん」


「ええ、あなたならそういう反応をすると思っていましたから言ったのです。これからも良き友でいてくださいませね?」


「む~。ユリーシアの肝っ玉をちょっと分けてくれるならね」


 おもいっきり腹の中見せてくる女なんて、いい奴に決まってるし。


 でもちょっと怖かったわ、まじで。これが散々言われてた、貴族の腹の探り合い?


 ……あーしにはムリ。ぜったい無理だわ。


「さあ。小隊長さんと今の騎士さん、レオナイル様の所へご一緒していただきますわね」


「はっ。了解しました」


 この切り替えの早さも、貴族って大変なんだろうなっていう、ひとつの勉強になったけど。


 正直知りたくなかったかもだよ、まじヤバイ。


「エルフィオラ、何をぼさっとしていて? あなたも来なければ始まらないでしょう」


「あ、はぁい」


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どうぞよろしくお願い致します。  作者: 稲山 裕




「なぜか皆から愛されて大公爵の養女になった話~内向的だけどそれなりに楽しく過ごしています?~『オロレアの民 ~その古代種は奇跡を持つ~』」

こちらも書いていますので、よろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n5541hs/


小説の宣伝くらいしかしませんが、よかったらフォローしてください。無言フォロー歓迎。

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