【神回】ユンボでS級魔獣を掘り起こす動画、世界トレンド1位になる
【神回】ユンボでS級魔獣を掘り起こす動画、世界トレンド1位になる
ズズンッ……ズズンッ……!
地響きを鳴らしながら森から姿を現したのは、体高5メートルに迫る巨獣だった。
全身がミスリル鉱石に匹敵する硬度の「岩の鎧」で覆われたS級魔獣、アーマード・ベア。
その一歩ごとに地面がえぐれ、周囲の木々がマッチ棒のように薙ぎ倒されていく。
「駄目……逃げて、鷹人さんっ!」
脇腹から血を流し、地面に座り込んだままキャルルが悲痛な叫びを上げた。
「あいつの鎧は、中級魔法すら弾き返すの……! 剣や槍なんて、いくら束になっても通じないわ!」
だが、鷹人は咥えたゴールデンバットの煙を細く吐き出し、まるで図面でも眺めるかのように巨獣を観察していた。
「魔法も剣も通じねぇか。そりゃあ厄介だな」
そう呟きながらも、鷹人の声には焦りの欠片もない。
「あかん! あかんて!!」
そこへ、壊れた商店の陰から、算盤を小脇に抱えた男が悲鳴を上げながら飛び出してきた。
仕立ての良い商人の服を着た、猫耳族の青年。ゴルド商会ゴールドランクにして、ポポロ村の財務担当を務めるニャングルである。
「S級魔獣て! 村の防壁から家屋まで全部ぶっ壊されるやないか! 復興費用だけで金貨数千枚……ああっ、ワイの胃に穴が空くぅぅっ!」
頭を抱えてしゃがみ込むニャングルを横目に、鷹人は「おい、あんま騒ぐな。見積もりが狂うだろうが」と短く言った。
「はぁ!? あんた、あれ見てどうやって見積もり立てるっちゅうねん!」
「カンタンな話だ。あんなデカブツが歩き回ったら、現場(村)の安全が確保できねぇ。さっさと『整地』して、地盤を固め直す」
鷹人は両手を広げ、脳内のシステムにアクセスした。
(村人救助とオーク討伐で貯まったスクラップPt、全部突っ込む。召喚対象――『産業廃棄物』)
その瞬間、鷹人の目の前の空間が歪み、巨大な魔方陣……ではなく、幾何学的な『転送陣』が展開された。
ガァァァンッ!!
地響きと共に現れたのは、アーマード・ベアにも劣らない巨大な『黄色い鉄の獣』だった。
太いクローラー(キャタピラ)、頑強な運転席、そして何より目を引くのは、先端に鋭い鉄の爪を備えた長大なアーム。
かつて地球の解体現場で酷使され、廃車置場に捨てられていた産業廃棄物――コマツ製の中型油圧ショベル、通称『ユンボ』である。
「な、なななな、なんやこれぇぇぇッ!?」
ニャングルが目をひん剥き、算盤をガクガクと震わせた。
「おい兄ちゃん! これ全部純鉄の塊やないか! こんなゴーレムみたいな兵器、金貨何万枚すんねん!? どこの国から借金してきおったんや!」
「あ? 廃車置場(ゴミ捨て場)で拾ったから、原価はゼロ円だぞ」
「ゼロぉぉぉ!? んなアホなことあるか! 異世界の経済システムがバグるわ!!」
ニャングルの悲鳴を背に、鷹人はひらりと身をかわしてユンボのキャビン(運転席)に飛び乗った。
埃まみれのシートに座り、キーを回す。
キュルルルル……ズドォォォォォンッ!!
腹の底に響くような、重厚なディーゼルエンジンの咆哮がポポロ村に轟いた。
黒煙を噴き上げ、死んでいた機械の心臓が、異世界で再び力強く脈打ち始める。
「グルルルルルァァァッ!!」
未知の咆哮に激怒したアーマード・ベアが、鷹人の乗るユンボへ向けて突進を開始した。
その剛腕が振り下ろされれば、並の城壁など一撃で粉砕される。
「鷹人さんッ!!」
キャルルが絶望の声を上げた。
だが、キャビンのガラス越しに、鷹人はニヤリと笑った。
「現場にヘルメットも被らずに入ってくる馬鹿には、痛い目見てもらうしかねぇな」
鷹人の両手が、慣れた手つきで操作レバーを握り込む。
プシュゥゥゥッ!と油圧シリンダーが甲高い音を立て、巨大な鉄のアームが生き物のように躍動した。
ガギィィィィィンッ!!!
アーマード・ベアの渾身の岩砕きパンチを、ユンボのバケット(鉄の爪)が正面から受け止めた。
火花が散り、強烈な衝撃波が周囲の土煙を吹き飛ばす。
「なっ……!?」
驚愕したのはアーマード・ベアの方だった。ミスリルの硬度を持つ自分の拳が、見慣れぬ黄色い鉄の塊に完全に止められていたのだ。
「悪いな。うちのバケットの前じゃ、魔法障壁も岩の鎧も、ただの『土塊』と同じなんだわ」
鷹人がレバーを引く。
ユンボのアームが唸りを上げ、バケットの爪がアーマード・ベアの装甲の隙間にガッチリと食い込んだ。
ディーゼルエンジンが限界まで回転数を上げ、黒煙を噴き出す。
数十トンの油圧パワーが、5メートルの巨獣の重心を完全に持ち上げた。
「ブギィィィィッ!?」
「さあ、整地の時間だ」
鷹人がレバーを横に倒す。
宙に持ち上げられたS級魔獣は、そのまま巨大な弧を描き――
ズッドォォォォォォォォンッ!!!
ポポロ村の大地に、背中から強烈に叩きつけられた。
地響きが鳴り、アーマード・ベアの誇る絶対防御の岩鎧が、衝撃で粉々に砕け散る。
間髪入れず、鷹人はバケットを上段に振りかぶり、トドメとばかりに魔獣の脳天へ『プレス(押し潰し)』を敢行した。
メシャァッ!!
悲鳴を上げる間もなく、S級魔獣は完全に沈黙し、地面と平らに均された。
「ヤ、ヤバいヤバいヤバいヤバいッ!! 何今の!? 魔法陣なしのゴーレム(?)が、S級魔獣を一本背負いしたんだけどぉぉぉッ!?」
上空でドローンカメラを構えていた天使キュララは、興奮のあまり羽をバタバタと痙攣させていた。
彼女の視界に浮かぶ『ゴッドチューブ』の配信画面は、かつてない異常事態に陥っていた。
同時接続数が、見たこともない速度で跳ね上がっている。
コメント欄は、完全に滝と化して文字を追うことすら困難だった。
『はああああ!? なに今の鉄の塊!?』
『S級魔獣が物理でペチャンコにされたんだがwww』
『魔法使わずに圧倒的パワーとか最高すぎるだろ!』
『ゼロスの配信で「無能」って追放されてたおっさんじゃん! どこが無能なんだよ!』
『ゼロスの魔法よりよっぽど火力高ぇぞwww』
『神回キタコレ!!! スパチャ止まらん!!』
「い、1位……! ワタシのチャンネルが、世界トレンド1位になってるぅぅっ!!」
キュララは歓喜の悲鳴を上げ、天界の上司のことなど完全に忘れてガッツポーズを決めた。
プシュゥゥゥ……。
エンジンを止め、鷹人がユンボのキャビンから降りてきた。
片手には、変わらずゴールデンバットが握られている。
「ふぅ。とりあえず、基礎工事はこんなモンでいいか」
鷹人は煙を吐き出しながら、座り込んでいるキャルルの元へ歩み寄った。
「立てるか、村長さん?」
差し出された無骨で大きな手。
キャルルは、呆然とその手を見つめた。
魔法も使えない、追放されたはずのただの男。
だが彼は、絶望的なS級魔獣から、自分を、この村(現場)を、たった一人で守り抜いたのだ。
ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ。
キャルルの胸の奥で、かつてないほど激しい警鐘――否、熱烈な感情が暴れ出した。
(この人は……私の、私のヒーロー……!)
「あ、ありがとう、ございます……鷹人さん……!」
キャルルは頬を真っ赤に染め、震える手で鷹人の手を取った。その瞳には、すでに底知れぬ重い愛情(ヤンデレの兆候)が宿り始めていることに、鷹人は全く気づいていない。
「気にするな。現場の安全を守るのは監督の仕事だからな」
鷹人が笑いかけた、その時だった。
――ギュルルルルルルルゥゥゥゥッ……!
落雷かと思うような、とてつもなく巨大な腹の虫の音が、静まった村に響き渡った。
「……ん?」
鷹人が音のした茂みを振り返る。
そこには、ルナミスデパートのワゴンセールで買ったであろうヨレヨレの『芋ジャージ』に身を包み、健康サンダルを履いた一人の少女が倒れていた。
その顔立ちは、絶世の美女と呼ぶにふさわしい人魚姫。
だが彼女――リーザは、両手で大事そうに『パンの耳』を握りしめ、口から涎を垂らしながら白目を剥いていた。
「ぱ、パンの、みみ……もう、だめ……お腹、すいた……」
「……」
鷹人は咥えていたタバコを携帯灰皿にしまい、大きくため息をついた。
「しゃあねぇな。次は、昼飯の支度(現場の炊き出し)か」
こうして、追放された現場監督・赤城鷹人の、地球の産廃とジャンク飯で異世界をDIYする狂ったスローライフが、全世界に生配信されながら幕を開けたのだった。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!
鷹人の『ユンボ無双』、いかがでしたでしょうか?
魔法を重機で物理的に粉砕するこの爽快感、楽しんでいただけていたら嬉しいです!
「このおっさん、やっぱり最高だ!」「ゼロスのざまぁが楽しみ!」「続きが早く読みたい!」
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皆様の『★』が鷹人のスクラップPtとなり、さらに強力な重機や武器を召喚する原動力になります!
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次回:【飯テロ】廃棄肉とニンニクのスタミナ炒め、人魚姫とヤンデレ村長の胃袋を掴む
お楽しみに!




