【飯テロ】廃棄肉とニンニクのスタミナ炒め、人魚姫とヤンデレ村長の胃袋を掴む
【飯テロ】廃棄肉とニンニクのスタミナ炒め、人魚姫とヤンデレ村長の胃袋を掴む
ポポロ村の村長宅。
その裏庭にある野外調理場に、強烈な食欲をそそる香ばしい匂いが漂っていた。
「……う、んん……」
ゴザの上に寝かされていた芋ジャージ姿の少女――人魚姫リーザの鼻腔がピクピクと動き、半開きの口からツーッと涎が垂れる。
「お、起きたか? ちょうど飯が炊き上がったところだ」
調理場に立っていたのは、カーゴパンツにタフジャケット姿の赤城鷹人だった。
彼は咥えたゴールデンバットの煙を横に吐き出しながら、巨大な中華鍋を豪快に振るっている。
カンッ、カンッ、と鉄のお玉が鍋肌を叩くリズミカルな音が響く。
「な、なんやその美味そうな匂いは……! っちゅうか兄ちゃん、その食材、どっから湧いて出たんや!?」
算盤を抱えた猫耳の商人、ニャングルが目を見開いて叫んだ。
鷹人の手元にあるのは、透明なパックに入った『豚肉』と書かれた薄切りの肉や、不揃いな形のニンニク、そして真っ白い米だった。
「ん? これか。地球のスーパーで『賞味期限切れ間近』で廃棄される予定だった肉と、規格外の野菜だ。あっちじゃゴミ扱いだからな。俺のスキルならスクラップPtはほとんどかからねぇ。実質タダだ」
「タダぁ!? あんな綺麗なサシの入った肉がタダやと!? 異世界の流通と経済が完全に崩壊するわ!! ワイの算盤が爆発するっちゅうねん!」
「うるせぇな。現場の炊き出しに原価計算なんか持ち込むな。ほら、出来たぞ」
鷹人が中華鍋を一気に煽り、大皿にドサッと盛り付けた。
完成したのは、地球の底辺男たちが愛してやまない至高のB級グルメ――『廃棄肉とニンニクの特盛りスタミナ炒飯』である。
醤油の焦げた匂いと、これでもかとブチ込まれたニンニクの香気。その上に乗せられた半熟の目玉焼きが、暴力的なまでの食欲を煽る。
「おおおおおおっ……!?」
その匂いを嗅いだ瞬間、瀕死だったはずのリーザがゾンビのように跳ね起きた。
「た、食べる! 私、それ食べるですぅぅぅっ!!」
リーザは芋ジャージをはためかせて飛びつくと、スプーンを引ったくり、山盛りのスタミナ炒飯を大口を開けて掻き込み始めた。
「あむっ、はむっ、ふごぉぉぉっ! ……んんんんまァァァァァァァァイッ!!!」
リーザの瞳に大粒の涙が浮かんだ。
これまでルナミス帝国でパンの耳や公園の雑草を齧って生き延びてきた彼女にとって、地球のジャンクな化学調味料とニンニクのパンチ力、そして豚肉の圧倒的な脂の甘みは、まさに脳髄を直接揺さぶる麻薬的美味だった。
「ゆっくり食え。おかわりならまだ鍋に死ぬほどあるからな」
鷹人は100円ライターで新しいタバコに火をつけながら、呆れたように笑う。
「鷹人さん、私もいただいていいですか……?」
脇腹の傷の応急処置を終えたキャルルが、少し頬を染めながら近づいてきた。
「おう。村長さんも食ってくれ。怪我してんだ、栄養つけねぇとな」
鷹人から皿を受け取ったキャルルは、お淑やかに一口分をスプーンですくい、口に運ぶ。
その瞬間。
「…………っ!!」
キャルルの兎耳がピンッ!と直立し、全身に電撃が走ったように硬直した。
「な、何これ……。お肉が信じられないくらい柔らかくて……ニンニクの香りが、私の中の『野生』を爆発させるみたい……!」
ガツッ、ガツッ、ガツッ!
お淑やかさは一瞬で消え去り、キャルルもまたリーザに負けない勢いで炒飯を掻き込み始めた。
「美味しい……鷹人さん、すごく美味しいです……!」
「そりゃよかった。紛争地でジャンクな野戦飯ばっか作ってたからな。大味だけど、活力だけは保証するぜ」
鷹人がそう言った、次の瞬間だった。
ボォォォォォォォォォォォォンッ!!!
「ふぇッ!?」
突如、リーザの全身から、凄まじい黄金色のオーラ(魔力)が火柱のように噴き上がった。
芋ジャージの裾がバタバタと激しく煽られ、周囲の小石がフワフワと宙に浮き始める。
「な、なんやこれぇぇッ!? リーザちゃんの魔力値が、ワイの算盤のケタをぶち抜いて跳ね上がっとるで!?」
ニャングルが悲鳴を上げた。
「力が……みなぎってくるです! これなら、ルナミスデパートの試食コーナーで、おばちゃんたちを蹴散らしてウインナーを全回収できる気がしますぅぅっ!!」
リーザは両手を握り拳にして天に掲げ、完全復活の雄叫びを上げた。
底辺地下アイドルの彼女が持つスキル【貧乏神】の悪運耐性に、鷹人の作った『ニンニクマシマシ炒飯』の超絶カロリーがバフとして乗った結果、一時的にS級魔獣すら素手で殴り倒せそうな異常なステータス強化が発動したのだ。
「マジか。地球のニンニクって、異世界人にはカンフル剤みてぇなモンなのか?」
鷹人は顎をさすりながら、自分の作った料理の規格外な効果に少し感心していた。
一方、その様子を見ていたキャルルは、炒飯の皿を抱きしめながら、トロンとした熱い瞳で鷹人を見つめていた。
(鷹人さんのご飯……こんなの食べちゃったら、もう他の男の人が作った料理なんて、一生食べられない。胃袋も、村も、私の命も……全部、鷹人さんに握られちゃった……♡)
キャルルの瞳の奥で、重くて暗い『ヤンデレ』の炎が静かに、だが確実に燃え上がっていた。
「鷹人さん。私、決めました。鷹人さんには、このポポロ村の『現場監督』として、ずっと、ずぅっと……私のそばにいてもらいますからね?」
「ん? ああ、残業代とメシ代さえ出してくれるなら、俺は一向に構わねぇよ」
自分の命(貞操)が完全に狙われていることなど露知らず、鷹人はあっさりと頷く。
「よーし! それなら今日は宴会です! ニャングルさん、イモッカ(芋酒)を持ってきて!」
「しゃあないなぁ! 今日はワイの奢りや! 鷹人兄ちゃんのチート産廃があれば、この村はボロ儲け間違いなしやからな!」
かくして、追放された現場監督と、重い愛を向けるヤンデレ村長、食い意地の張った人魚姫、そしてツッコミ商人の、奇妙で騒がしい同居生活が幕を開けたのだった。
だが。
ポポロ村の平穏な宴の裏で、世界の『メタ的』な思惑は確実に動き始めていた。
「クソッ! クソッ! クソがあああぁぁぁッ!!」
ルナミス帝国の超高級ホテルのスイートルーム。
勇者ゼロス・ディバインは、最新型のエンジェルすまーとふぉんを床に叩きつけ、怒りに任せて踏みつけにしていた。
その不自然なほど白い歯が、ギリギリと嫌な音を立てている。
「なんでだ!? なんで俺が追放したあのゴミの動画が、ゴッドチューブの世界トレンド1位になってんだよ!!」
ゼロスの目の前にあるモニターには、キュララが配信した『ユンボでS級魔獣を整地するおっさん』の切り抜き動画が再生されていた。
再生数はすでに数千万を突破し、コメント欄は鷹人への称賛で溢れかえっている。
逆に、ゼロスのチャンネルのコメント欄には『お前、あんなバケモノを無能扱いして追放したのかよw』『見る目なさすぎだろエセ勇者』といったアンチコメントが殺到し、評価はストップ安だ。
「俺は勇者だぞ!? 課金してステータスを盛って、見栄えのいい魔法でPVを稼いできた、この世界のトップインフルエンサーだぞ!? あんな泥臭い現場作業員に、俺の数字が奪われてたまるか!!」
『――その通りだとも、ゼロスくん。君は間違っていない』
突如、スイートルームの空間が歪み、一人の男のホログラムが浮かび上がった。
専用のマイタンブラーでカプチーノをすする男。
神界『GOD』の第3種惑星創造神格公務員にして、過激なヤラセ配信を裏で操る黒幕――『炎上神ワイズ』である。
「ワ、ワイズ様……!」
『キュララとかいう下級天使が勝手にバズらせたようだが……あんな泥臭い物理兵器など、神の視聴者はすぐに飽きる。エンタメにはもっと、過激なスパイス(炎上)が必要だ』
ワイズは薄く笑い、エンジェルすまーとふぉんを操作した。
『あのポポロ村……生意気な兎の村長がいる目障りな緩衝地帯だったね。あそこに、死蟲軍の残党の大群を差し向けよう。万の群れが村を焼き尽くし、人々が絶望に染まる悲劇……』
「!」
『そこへ、君が華麗に駆けつけ、すべてを魔法で焼き払って村を救う。これこそが最高のシナリオ(ヤラセマッチポンプ)だ。あのゴミの重機無双など、悲劇を前にしては霞んで消える』
ワイズの言葉に、ゼロスの顔に歪んだ歓喜の笑みが浮かんだ。
「素晴らしい……! さすがワイズ様だ! そうだ、俺が主役なんだ! あのゴミは、無惨に虫けらに食い殺される無様な姿を配信されればいいんだ!!」
ゼロスは新しいすまーとふぉんを取り出し、ニタニタと笑いながら自撮りの準備を始めた。
「待ってろよ、赤城鷹人。お前が地球のゴミで作ったちっぽけな居場所ごと、俺の炎上配信の餌食にしてやる……!!」
ポポロ村に迫る、かつてない悪意と数万の魔物の大群。
だが、彼らはまだ理解していなかった。
『工期厳守』を掲げる日本の現場監督を怒らせることが、どれほど恐ろしい物理的結末を招くかということを――。
【次回予告】
大群の襲撃に対し、鷹人が召喚したのはデッドストックの『超合金プレート』!
「防衛線のDIYだ。残業代は弾んでくれよ?」
ドンガンの鍛冶師もドン引きする鉄壁の要塞化が始まる!
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!
鷹人の特製・廃棄食材の『ニンニクマシマシ炒飯』、いかがでしたでしょうか?
胃袋を掴まれたリーザと、ヤンデレ化が進行するキャルル、そしてツッコミ過労死枠のニャングル。
この騒がしいメンバーで、いよいよポポロ村の要塞化が始まります!
「飯テロ最高!」「ヤンデレ村長可愛い!」「ゼロスのヤラセを早く粉砕してほしい!」
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皆様の『★』と応援が、鷹人の現場を支えるスクラップPtとなり、さらに強力なバフ飯と重機を生み出す力になります!
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次回:【内政】産廃資材で防衛線DIY。ドンガンの鍛冶師もドン引きの超合金
お楽しみに!




