第71話 リーフェル村、追加布一枚だけを検討
三回分の試験記録が届いた日、リーフェル村は朝から妙に静かだった。
静か、といっても人がいないわけではない。
畑では鍬の音がしているし、井戸ではぷる太がいつも通り水面を覗き込んでいる。マルタさんの台所からは、煮込みの匂いも漂っていた。
けれど、外部対応広場の前を通る村人たちは、いつもより少しだけ足音を抑えていた。
みんな、分かっているのだ。
今日届くかもしれない報告書が、ただの紙ではないことを。
九歳の子の三度目の試験結果。
落ち着き布が本当に補助具として使えるのかどうか。
そして、リーフェン家が次に何を求めてくるのか。
俺は朝から落ち着かなかった。
畑の柵を直そうとして、釘を一本持ったまま三回も同じ場所を見直した。
それを見ていたミナに、真顔で言われた。
「アレンお兄ちゃん、柵じゃなくて頭の中を直してる?」
「……そう見える?」
「うん。釘がずっと同じ場所で待ってる」
釘まで待たせていたらしい。
ぷる太は井戸から転がってきて、外部対応広場の四角木片へぴたりと体を寄せた。
「ぷる」
「分かってる。報告が来るまで考えすぎない」
「ぷる」
「でも考えるよな?」
「ぷる……」
ぷる太は少し迷って、丸と四角の間へ移動した。
「考えるのは丸寄り四角?」
「ぷる」
ミナが横から頷く。
「考えすぎはバツだけど、考えないのもバツだよね」
「難しいな」
「だから四角なんだよ」
最近、ミナの方が俺よりリーフェル村式を使いこなしている気がする。
俺は釘をようやく打ち込み、深く息を吐いた。
頭の中には、ずっと同じ言葉が回っていた。
怖い夜が少し短くなった。
村の人にありがとうって言ってください。
まだ読んでもいないのに、リーフェン家から届くはずの報告の一部を、俺は何度も想像していた。
いや、想像していたというより、待っていた。
その言葉が本当に届くことを。
◇
昼少し前、門番老人の声が村の入口から響いた。
「王都経由の封書だ」
その瞬間、俺の手元の金槌が滑りかけた。
慌てて握り直す。
ミナが俺を見た。
「バツ?」
「まだ落としてない」
「落としかけたのは四角?」
「……たぶん」
ぷる太はもう外部対応広場へ向かっていた。
水鉢に入り、丸、バツ、四角を前に置く。
今日は、さらにミナが作った木片も並んでいる。
『よろこび』
『ふやす?』
『本人に聞く』
文字が少し曲がっているが、意味は分かる。
村長がそれを見て、少しだけ眉を上げた。
「また増えたか」
「必要だから!」
ミナが胸を張る。
村長は少し考え、頷いた。
「ならよい」
もう完全に板と木片の村である。
配達人は、いつもより慎重に革袋を差し出した。
封蝋は王国騎士団、冒険者ギルド、リーフェン家。
それに加えて、今回は医療記録確認印が二つ押されている。
シルフィが受け取り、いつものように確認する。
「封印術は開封確認のみ。攻撃性なし。精神誘導なし。追跡反応なし」
そこで一度、彼女は革袋の重さを確かめた。
「封筒が二つあります」
俺の胸が、どくんと鳴った。
二つ。
試験報告だけではない。
きっと、追加依頼だ。
村長もすぐに察したらしく、短く言った。
「村長の家で読む。外では開けん」
「はい」
俺は頷いた。
すぐに聞きたい。
すぐに読みたい。
でも、ここで急いでも中身は変わらない。
それどころか、急いだ俺の方が危なくなる。
俺は懐の四角を握った。
手の中で、木の角が指に当たる。
それだけで、少し呼吸が戻った。
◇
村長の家には、いつもの面々が集まった。
村長。
俺。
シルフィ。
マルタさん。
門番老人。
ぷる太。
それから今日は、ミナも許可された。
理由は本人いわく、
「『ありがとう』が来たら、子供も聞いた方がいいと思う」
だった。
村長は最初、少し渋い顔をしたが、マルタさんが「大人だけで抱える話でもないね」と言ったため、ミナは部屋の端に座ることになった。
ただし、発言は村長が許可した時だけ。
ミナは両手で口を押さえながら頷いた。
たぶん、守れるかどうかは四角だ。
シルフィが一つ目の封筒を開ける。
「三回分の試験報告です」
部屋の空気が引き締まった。
シルフィは、まず確認文から読んだ。
「本報告書は、落ち着き布試作品二号の第三回短時間試験および三回分の経過記録を共有するものです。本報告により、追加布の作成、量産、強化版、別症例への適用、アレン師匠本人の移動、直接施術を求めるものではありません」
ぷる太が丸へ寄った。
「ぷる」
村長も頷く。
「まず、よい」
シルフィは続けた。
「第三回試験。対象、第三症例。九歳。前回と同じ落ち着き布試作品二号を使用。設置位置、前回と同じ。身体接触なし。固定なし。道具、人数の追加なし」
「条件通りですね」
俺が言うと、シルフィは頷いた。
「はい。ここまでは条件通りです」
その声が少し柔らかくなった。
「本人確認。布設置を了承。理由……『無理やりではないと説明を受けたため』」
マルタさんが小さく息を吐いた。
「そこ、大事だね」
「はい」
シルフィは目を伏せた。
「無理やりではない。それを確認してから置いたことが記録されています」
俺は胸の奥が温かくなるのを感じた。
落ち着き布は、布だ。
でも、それを置く人たちが条件を守ってくれている。
そのことが、何より大事だった。
「試験中の本人申告。『今日は、怖い夜が短かったです』」
部屋が静かになった。
俺は息を止めた。
怖い夜が短かった。
たったそれだけの言葉に、胸の奥が強く締めつけられる。
眠れない夜を、九歳の子が怖い夜と呼んだ。
その夜が、少し短くなった。
俺の作った布で。
いや、俺だけじゃない。
みんなで条件を決め、みんなで止め、みんなで送り出した布で。
シルフィの声が続く。
「試験中、発熱は残る。魔力回路損傷そのものの治癒は確認されず。ただし、睡眠導入および精霊刺激感の緩和を補助する可能性が高い」
「治ってはいない」
村長が言った。
「はい。治癒ではありません」
「でも、眠れた」
「はい」
シルフィは少しだけ微笑んだ。
「三回目は、一刻半ほど眠ったそうです。うわ言はなし。布を離した後も睡眠継続。目覚めた後、本人より『長く寝た気がしました』との申告」
ミナが口を押さえたまま、目を潤ませていた。
約束を守って黙っている。
でも、感情は完全に顔へ出ていた。
ぷる太が、そっと丸の木片へ寄った。
「ぷる」
喜び丸。
今日は、本当に丸だった。
俺は、手元の四角を握りながら言った。
「よかった……本当に」
声が震えた。
マルタさんが、俺の肩に軽く手を置いた。
「うん。これは喜んでいい」
「はい」
「ちゃんと、喜びな」
俺は頷いた。
嬉しい。
とても嬉しい。
九歳の子の怖い夜が、少し短くなった。
その事実を、まず喜ぶ。
まだ次を考える前に。
まず、喜ぶ。
◇
報告書の最後に、別紙があった。
シルフィはそこを見て、少しだけ息を吸った。
「本人申告の抜粋です」
部屋の全員が、自然と耳を澄ませた。
「『怖い夜が少し短くなった』」
すでに読まれた言葉だ。
でも、抜粋としてもう一度聞くと、さらに重く感じる。
「『一枚なら、たぶん平気』」
マルタさんが頷く。
「一枚なら、だね」
「『いっぱいあるのは、まだ怖い』」
村長の眉が少し動いた。
「そこも大事だ」
「はい」
シルフィの声が、ほんの少し震えた。
「最後に……『村の人に、ありがとうって言ってください』」
その瞬間、俺は何も言えなくなった。
村の人に、ありがとう。
アレンにではない。
村の人に。
その言葉が、胸の中にまっすぐ入ってきた。
俺だけじゃないと、あの子は分かっているのかもしれない。
いや、詳しくは分からなくても、布が一人の手だけで届いたものではないと感じたのかもしれない。
シルフィが報告書をそっと机に置いた。
ミナはもう口を押さえきれなくなっていた。
「よかったね」
小さな声だった。
村長は怒らなかった。
「ああ」
門番老人も静かに頷く。
「よかった」
ぷる太が丸の木片へ強く体を押しつけた。
「ぷる」
俺は目元を指で押さえた。
「作ってよかった」
思わず出た言葉だった。
マルタさんがすぐに言う。
「うん。作ってよかった」
そして、間を置いて続けた。
「でも、次は考えてからだよ」
その言葉で、部屋の空気が少しだけ四角に戻った。
そうだ。
二つ目の封筒がある。
追加依頼。
嬉しさでそのまま丸にしてはいけない。
シルフィが、俺を見た。
「師匠。二つ目を開ける前に確認します」
「はい」
「感謝の言葉を受け取ります。でも、それだけで追加作成を決めません」
「はい」
「怖い夜が短くなったことを喜びます。でも、強化版を作りません」
「はい」
「一枚なら平気、いっぱいは怖い。その本人申告を尊重します」
「はい」
村長が言う。
「もう一つだ」
「何でしょう」
「アレンは、同等品を作る時に『少し良くしよう』としない」
ぷる太が四角からバツ寄りへ移動した。
「ぷる」
俺は苦笑した。
「見抜かれていますね」
「見抜かれるくらいには顔に出ている」
「はい。正直、思いました。次に作るなら、もう少し楽にできないかって」
シルフィが即座に記録する。
『師匠、同等品作成前に改善欲ありと申告』
「そこ、記録する?」
「します」
マルタさんが頷いた。
「大事だよ。隠れて改善される方が怖い」
「隠れて改善って言葉、危ないですね」
「危ないから書くんだよ」
俺は素直に頷いた。
◇
二つ目の封筒には、予想通り追加依頼が入っていた。
シルフィが読み上げる。
「三回分の短時間試験記録を踏まえ、第三症例に限り、落ち着き布試作品二号と同等品一枚の追加作成について、正式に検討を依頼します」
同等品一枚。
第三症例に限り。
まずは条件内だ。
「目的は、現在の試作品に過度な連続使用を避け、使用間隔を確保するため。強化版、量産、別症例適用、アレン師匠本人の移動、直接施術は求めません」
ぷる太が丸と四角の間へ移動した。
「ぷる」
村長が腕を組む。
「丸寄り四角か」
「条件は守っています」
シルフィが言った。
「ただし、作るかどうかはこちらの判断です」
俺は、すぐに言った。
「作りたいです」
今回は、迷わなかった。
いや、迷わないというより、隠さなかった。
「一枚だけ。同じ子に。同じように使うためなら、作りたいです」
部屋の全員が俺を見る。
俺は続けた。
「怖い夜が短くなったって言ってくれた。ありがとうって言ってくれた。今の布を使い続けるより、もう一枚あった方が間隔を空けられるなら、その方がいいと思います」
マルタさんが静かに聞く。
「もっと良くしたい?」
「思っています」
正直に言った。
「でも、しません。しない条件なら、作りたいです」
シルフィが少しだけ目を細めた。
「師匠、それは大事な言い方です」
「そう?」
「はい。作りたい気持ちと、強くしない条件を分けています」
村長が頷く。
「よい。では、検討に入る」
作ると決まったわけではない。
でも、拒否でもない。
検討。
四角から始まる。
◇
午後、外部対応広場に村人たちも集まり、三回分の記録が共有された。
今回は、村全体にとっても重い話だった。
落ち着き布は、ただの試作品ではなくなってきている。
人が眠れた。
感謝が届いた。
そして、追加依頼が来た。
村長はまず結果を短く伝えた。
「九歳の子は、三回目も眠れた。前より長くだ。怖い夜が短くなったと言ったそうだ」
村人たちは静かに喜んだ。
大きな歓声ではない。
でも、あちこちから「よかったな」「それはよかった」と声が漏れる。
ミナは、ぷる太の丸木片を両手で掲げた。
「喜び丸!」
ぷる太は誇らしげに揺れる。
そして、村長は続けた。
「ただし、発熱は残る。病が治ったわけではない。布は補助具だ」
ぷる太は四角へ移動する。
「ぷる」
「さらに、追加布一枚の依頼が来た。同じ子へ。同じ布を一枚。強化版ではない。量産でもない。アレンを呼ぶ話でもない」
畑の若者が言った。
「それなら、作ってもいいんじゃないか?」
別の村人も頷く。
「一枚だけならな」
マルタさんが手を上げる。
「一枚だけ、って言葉は簡単だけどね。その一枚が次の二枚、三枚になるかもしれない。だから、作る前に条件をつける」
「条件って?」
シルフィが前へ出た。
記録板を抱え、村人たちに分かるようにゆっくり話す。
「まず、同じ症例だけです。他の症例には使いません」
「うん」
「次に、同等品です。強くしません。師匠が『少し良くしたい』と思っても、同じ反応を目指します」
村人たちの視線が俺へ来る。
俺は素直に頭を下げた。
「思っています。でも、強くしません」
畑の若者が苦笑する。
「自分で言うんだな」
「隠すと危ないので」
「なるほどな」
シルフィは続ける。
「三つ目。使用回数と時間を管理してもらいます。一枚目と二枚目をどう使うか、記録が必要です」
門番老人が補足する。
「布が増えると、使いすぎる危険がある」
「そうです」
「四つ目」
シルフィの声が少し強くなる。
「保管場所と管理者を確認します。誰が布を持ち、誰が使い、誰が止めるのか。リーフェン家側に文書で答えてもらいます」
村人たちは頷いた。
マルタさんが言う。
「布だけ送って、あとは勝手にどうぞ、じゃないってことだね」
「はい」
「落ち着き布の保管場所か。村なら外部対応広場の棚に札つけるところだね」
「リーフェン家にも、それに相当する手順を求めます」
ぷる太が丸へ寄った。
「ぷる」
どうやらそこは丸らしい。
◇
その後、追加布を作る前に送る確認文書を作ることになった。
シルフィが中心になり、俺、村長、マルタさん、門番老人が意見を出す。
正式文書の題名はこうなった。
『落ち着き布同等品一枚の作成検討に先立つ使用管理確認書』
「長い」
マルタさんが即座に言った。
「でも、意味は正確です」
シルフィが言う。
「村側名は?」
「作る前に聞く紙」
マルタさんが即答する。
ミナが拍手した。
「分かる!」
ぷる太も丸へ寄る。
「ぷる」
正式文書と村側名の差がひどい。
でも、どちらも必要なのだろう。
確認文書の内容は、かなり細かくなった。
一、追加布は第三症例エナに限る。
二、用途は睡眠補助時の枕元設置のみ。
三、身体固定は禁止。
四、一枚目と二枚目を同時使用しない。
五、部屋の複数箇所配置は禁止。
六、使用時間、睡眠、発熱、本人申告、異常の有無を毎回記録する。
七、本人が嫌がった場合は即停止。
八、保管者をヴィオラまたは同等の責任者に限定する。
九、若手研究者による無断試験、素材分析、魔力抽出、複製試験は禁止。
十、布の追加作成は、これ以上自動的に認めない。
十一、アレン本人の移動、直接施術、強化版作成は別問題として扱い、現時点では不可。
九番を読んだ時、村人たちが少しざわついた。
「魔力抽出なんてするのか?」
畑の若者が聞く。
シルフィは真面目に答えた。
「リーフェン家の若い森術師の中には、研究熱が高まっている可能性があります。リュシア姉様の報告からも、その気配があります」
「熱が高いなら、落ち着き布を頭に巻かせたらどうだ」
門番老人がぼそっと言った。
少し間が空き、マルタさんが噴き出した。
「それ、いいねぇ」
ミナも笑う。
「研究者用落ち着き布!」
ぷる太が四角へ寄った。
「ぷる……」
「ぷる太、本気で検討しなくていいから」
俺が言うと、ぷる太は丸へ戻った。
笑いが起きたことで、少し緊張が緩む。
でも、九番は消さなかった。
むしろ太く書いた。
◇
夕方、俺は試作用の布を前に座っていた。
まだ作るわけではない。
確認文書への返答が来てから。
そう決めている。
それでも、布を前にすると指が少し動く。
同等品。
強くしない。
良くしようとしない。
同じように。
それが難しい。
普通なら、前回より良いものを作りたいと思う。
特に、相手が苦しんでいる子供なら。
でも、今回は違う。
良くすることが善とは限らない。
同じであることが安全になる。
俺は布に触れず、ただ見ていた。
そこへ、シルフィが来た。
「師匠」
「うん」
「触っていませんね」
「触ってない」
「丸です」
彼女は少し笑った。
「ただ、顔は触りたそうです」
「それは記録しなくていい」
「します」
「するんだ」
シルフィは本当に書いた。
『師匠、確認文書返答前の布には触れず。ただし触りたそう』
俺は肩を落とした。
「もう何でも記録される」
「大事なところだけです」
「これ、大事?」
「はい。師匠が止まれた記録です」
そう言われると、文句が言えなくなる。
止まれた記録。
たしかに、それは大事かもしれない。
「シルフィ」
「はい」
「追加布、作ってもいいと思う?」
彼女はすぐには答えなかった。
少し考えてから言った。
「作ること自体は、私は反対しません」
「うん」
「ただし、条件が守られるならです。エナのためになる可能性があり、師匠が強くしすぎず、リーフェン家が勝手に使わず、記録が共有されるなら」
「条件だらけだな」
「助けるための条件です」
「そうだな」
シルフィは布を見た。
「師匠。エナの『ありがとう』は、師匠を縛る言葉ではありません」
俺は顔を上げた。
「……うん」
「感謝されたから作らなければならない、ではありません。感謝を受け取った上で、安全なら作る。危ないなら作らない。それでいいのです」
「分かってる」
「本当に?」
「……半分くらい」
「では四角です」
「はい」
ぷる太がどこからともなく現れ、四角の木片へ寄った。
「ぷる」
「いたのか」
「ぷる」
どうやら聞いていたらしい。
◇
その夜、外部対応広場に新しい板が立った。
『ありがとうで縛られない』
ミナが読んで、少し首を傾げた。
「ありがとうって、いい言葉だよね?」
「いい言葉だよ」
マルタさんが答える。
「でもね、ありがとうって言われたから、何でもしなきゃいけないわけじゃない」
「そっか」
「ありがとうは受け取る。次は考える」
ミナは少し考え、隣に小さく書き足した。
『ありがとうは丸、次は四角』
村長はそれを見て、頷いた。
「残せ」
ぷる太が丸から四角へ移動する。
「ぷる」
今日の答えは、それだった。
ありがとうは丸。
次は四角。
そして、作る前に聞く。
助けたい気持ちがあるからこそ、リーフェル村はまた一つ、言葉を増やした。
封書は翌朝、王都経由でリーフェン家へ送られることになった。
追加布を作るかどうかは、まだ決まっていない。
でも、作るための条件はできた。
喜びを受け取り、感謝を受け取り、それでもその場で丸にしない。
それが、今のリーフェル村の強さだった。




