第49話 参加決定、ただし条件付き
リーフェル村の朝は、いつも通りに始まった。
井戸端では水桶が並び、畑へ向かう若者たちが鍬を担ぎ、マルタさんの台所からは豆を煮る匂いが流れてくる。
ぷる太は井戸の縁で朝の点検をしていた。
ミナが横で木片を並べる。
「ぷる太、今日の確認!」
「ぷる」
「丸!」
「ぷる」
ぷる太が丸の木片へ寄る。
「バツ!」
「ぷるっ」
勢いよくバツへ。
「四角!」
「ぷる」
すっと四角へ。
「よし! 今日も完璧!」
「ぷるる」
ぷる太は得意げに揺れた。
その光景だけ見れば、何も変わらない朝だった。
けれど、村の空気は少し違っていた。
森術学術会議。
リーフェン家からの招待。
こちらが出した条件への返答。
王都側の同行者の決定。
すべてが揃い、今日、村として参加するかどうかを決めることになっていた。
俺は井戸のそばで顔を洗い、冷たい水を両手で受け止めた。
目が覚める。
水面に映った自分の顔は、少し緊張していた。
「師匠」
背後からシルフィの声がした。
振り返ると、彼女は記録板を抱えて立っていた。いつもより少し早い時間なのに、もう身支度を整えている。
「おはよう」
「おはようございます」
「眠れた?」
「少し」
「俺も少し」
二人で顔を見合わせ、少しだけ笑った。
会議に出るかどうかを決める日だ。
ぐっすり眠れる方が難しい。
シルフィは井戸の水面を見つめながら言った。
「今日、決まりますね」
「うん」
「怖いです」
その言葉は、とても静かだった。
でも、逃げではなかった。
怖いと認めた上で、彼女はここに立っている。
「俺も怖い」
俺も正直に言った。
「何を言われるか分からないし、俺、たぶん揺れると思う。助けられる人がいるって言われたら、やっぱり考えてしまう」
「はい」
「シルフィも、昔のことを出されたら苦しくなるかもしれない」
「はい」
「でも、行くなら一人じゃない」
シルフィは胸元の木札に触れた。
『付与相談役補佐兼記録係 シルフィ』
「私は、リーフェン家の失敗作として行くのではありません」
「うん」
「リーフェル村の記録係として行きます」
その声は、小さいけれど強かった。
ぷる太が井戸の縁から、ぷる、と鳴いた。
丸でも、バツでも、四角でもない。
ただ、聞いているよ、と言ってくれたようだった。
◇
村長の家には、朝食後すぐに人が集まった。
村長。
俺。
シルフィ。
マルタさん。
クラウディア。
王都から到着したばかりのマリナさん。
門番老人。
そして、ぷる太。
ぷる太は小さな水鉢に入って机の端に置かれている。ミナは「ぷる太は村の大事な判断に必要」と強く主張したが、本人は子供なので会議室の外で待つことになった。
ただし、木片係として丸、バツ、四角の予備を託していった。
机の上には、書類が並んでいる。
リーフェン家からの招待状。
リーフェン家の返答書。
こちらが出した条件書。
王国騎士団と冒険者ギルドの同行者確認書。
クラウディアが持ってきた王国側の写し。
マリナさんが用意した記録体制案。
こうして見ると、紙だけで小さな山になる。
少し前の俺なら、こんな量の書類を見ただけで「たぶん大丈夫ですよ」と言ってしまったかもしれない。
今は違う。
書類は、一つずつ見るものだ。
そして、分からない時は四角だ。
村長が咳払いした。
「始める」
部屋が静かになる。
「今日の議題は、リーフェン家の森術学術会議に参加するかどうかだ。まず確認する。参加は義務ではない。断る選択肢もある」
俺は頷いた。
シルフィも頷く。
村長は続ける。
「ただし、条件は多く受け入れさせた。王国騎士団とギルドの同行者も決まった。向こうの場に無防備で行くわけではない」
クラウディアが言った。
「王国騎士団側は、私が同行します。会議中、条件違反や同意を誘導する発言があれば止めます」
マリナさんも続く。
「ギルド側は、私が記録補助として同行します。会議内容は逐語に近い形で記録します。アレン様やシルフィ様が返答に迷った場合、その場で判断しないことを確認します」
「心強いです」
俺が言うと、マリナさんは微笑んだ。
「そのために行きます」
マルタさんが腕を組む。
「で、村側は誰が行くんだい」
村長が俺を見る。
「アレンは当事者だ。シルフィも当事者だ。だが、この二人だけでは行かせん」
「村長さんが来るんですか?」
俺が聞くと、村長は首を横に振った。
「儂は村を空けられん。世界樹、井戸、畑、外部対応広場。残って見る者が必要だ」
「では」
「マルタに行ってもらう」
マルタさんは、少しも驚かなかった。
最初からそうなると分かっていたような顔だった。
「分かったよ」
「えっ、マルタさんが?」
俺が思わず声を上げると、マルタさんはこちらを見て笑った。
「何だい。不満かい?」
「不満じゃないです。ただ、危なくないですか?」
「危ない場所にあんたたちだけ行かせる方が、よほど危ないよ」
言い返せなかった。
マルタさんは続ける。
「クラウディアさんは騎士として止められる。マリナさんはギルドとして記録できる。シルフィちゃんは記録係として戦える。でもね、あんたたちが苦しくなった時、ただの村の大人として『ちょっと待ちな』って言える人間も必要だろ」
クラウディアが頷いた。
「同感です。会議の形式では、騎士団やギルドが止めると政治的な意味が強くなります。しかし、村側同行者としてマルタ殿が発言することで、生活者の言葉として場を止められます」
マリナさんも言った。
「マルタ様のような方がいることは、アレン様とシルフィ様にとって大きいと思います」
「様はやめとくれ。むずむずする」
「では、マルタさん」
「それでいいよ」
マルタさんは満足そうに頷いた。
俺は改めて彼女を見る。
台所で鍋を作り、村人の体調を見て、俺が働きすぎると叱ってくれる人。
その人が会議に来てくれる。
それは、想像以上に心強かった。
◇
次に、持参するものの確認が始まった。
シルフィが記録板を開く。
「条件書の写し。リーフェン家返答書の写し。王国共同確認書の写し。会議参加条件一覧。回答禁止項目一覧。記録用羊皮紙。予備インク。記録用魔道具はマリナさんが持参」
「はい」
マリナさんが小さな箱を見せる。
「音声記録用魔道具です。ただし、魔力干渉に弱いため、必ず手書き記録と併用します」
クラウディアは自分の荷を確認した。
「騎士団身分証。王国側確認文書。条件違反時の退席宣言書。護衛用短剣。検査札。魔術封印確認具」
「退席宣言書?」
俺が聞くと、クラウディアは真顔で答えた。
「会議条件が破られた場合、こちらが退席する権利を明記した文書です。口頭で言うだけだと揉めるので、書面で示します」
「そんなものまで」
「必要です」
シルフィが即座に言った。
「師匠、退席する権利は大事です。場に留まらされるだけで圧力になります」
「そうか」
「はい」
マルタさんは荷物が少なかった。
布袋一つ。
中身は、薬草茶、乾いた麦餅、塩、針と糸、小さな布、そしてなぜか木の匙。
「マルタさん、それは?」
「何があるか分からないだろ。会議だろうが何だろうが、腹が減ったら人は弱る」
「確かに」
「向こうがきれいな菓子を出してきても、食べたくなけりゃこっちの麦餅を食べればいい。香りの強い茶が嫌なら、こっちの茶を飲めばいい」
シルフィが少し目を見開いた。
「それは、とても助かります」
「リーフェン家の茶は意味があるんだろ?」
「はい」
「なら、意味のない茶を持っていく」
マルタさんはあっさり言った。
意味のない茶。
ただ温かいだけの茶。
その言葉に、シルフィの表情が柔らかくなる。
「ありがとうございます」
「礼は帰ってきてからでいいよ」
そして、最後に俺の持ち物。
俺は小さな布袋を開いた。
中には三つの木片が入っている。
丸。
バツ。
四角。
ぷる太に確認してもらった、小さな木片だ。
「これを持っていきます」
俺が言うと、ぷる太が水鉢の中で揺れた。
「ぷる」
ミナが外から叫ぶ。
「ぷる太の代わり!」
扉越しに聞こえた。
村長が苦笑する。
「聞いていたな」
「聞こえる場所にいるだけだよ!」
完全に聞いている。
でも、誰も怒らなかった。
俺は三つの木片を机に並べた。
「丸は、確認できたことだけ進める」
「はい」
シルフィが頷く。
「バツは、嫌なこと、条件違反、危ないこと」
「はい」
「四角は、分からない、保留、持ち帰って相談」
「はい」
ぷる太が四角の木片に体を寄せた。
「ぷる」
「会議中、迷ったらこれに触れます」
俺は言った。
「それで、一人で答えないようにします」
クラウディアが静かに頷いた。
「とても良い方法です」
マリナさんも微笑む。
「では、記録上でも『アレン様、四角確認』と記しましょう」
「それ、王都の記録に残るんですか」
「残ります」
「少し恥ずかしいですね」
「でも分かりやすいです」
マルタさんが笑う。
「恥ずかしくても命綱なら持っていきな」
命綱。
木片が命綱。
おかしな話だ。
でも、たぶん本当にそうなのだと思った。
◇
参加する理由についても、改めて確認した。
これはクラウディアの提案だった。
「行くと決める前に、なぜ行くのかを言葉にしておくべきです。理由が曖昧だと、会議中に相手の理由へすり替えられます」
「相手の理由へ?」
「はい。『森術の未来のため』『苦しむ者を救うため』『学術の発展のため』。それらは向こうの言葉です。こちらが参加する理由を持っていないと、流されます」
村長が頷く。
「よし。アレン、言ってみろ」
「俺ですか」
「当事者だからな」
俺は少し考えた。
なぜ行くのか。
リーフェン家に協力したいから?
研究したいから?
違う。
苦しむ人を完全に見捨てたいわけではない。
でも、それだけでもない。
「……相手の話を、こちらの条件で聞くため」
まず、そう言った。
シルフィが記録する。
「それから、リーフェン家が何を求めているのか、ちゃんと知るため。知らないまま怖がるだけだと、次もずっと怖いから」
言葉にしながら、自分でも少し分かってきた。
「あと、助けられる人がいるかもしれないなら、話を聞く意味はあると思う。でも、そのために自分やシルフィを差し出すつもりはない。だから、行くなら条件つきで、みんなと一緒に行く」
部屋が静かになった。
シルフィの羽ペンが止まる。
村長がゆっくり頷いた。
「よい」
マルタさんも言う。
「うん。いい理由だね」
クラウディアが言った。
「会議中に迷ったら、今の言葉へ戻ってください」
「はい」
次に、シルフィが問われた。
彼女は少しだけ目を伏せ、木札を握った。
「私は……リーフェン家の場へ行くのが怖いです」
部屋の誰も、否定しなかった。
「でも、私が逃げている間にも、リーフェン家は私のことを失敗作だった記録や古代森術の発現例として扱うと思います。それなら、私自身の言葉で、私は今ここにいると伝えたいです」
シルフィは顔を上げた。
「私は、リーフェン家へ戻るために行くのではありません。リーフェル村の記録係として、私自身の記録を取り戻すために行きます」
マリナさんが小さく息を呑んだ。
クラウディアも、ほんの少し目を細める。
マルタさんは、静かに笑った。
「よく言ったね」
シルフィは少し照れたように目を伏せた。
ぷる太が丸の木片へ体を寄せる。
「ぷる」
丸。
今の言葉は丸だ。
◇
参加者が正式に決まった。
アレン。
シルフィ。
マルタ。
クラウディア。
マリナ。
村長は残る。
門番老人も残る。
ぷる太も残る。
ここで、ミナがついに我慢できずに部屋へ入ってきた。
「ぷる太、行けないの?」
その顔は真剣だった。
ぷる太も水鉢の中で、少し揺れた。
村長が穏やかに答える。
「ぷる太は井戸守りだ。村に残る」
「でも、アレンお兄ちゃんたち、バツが必要だよ」
「だから木片を持っていく」
「ぷる太じゃなくて?」
ミナの声が少し寂しそうになる。
俺はしゃがんで、ミナの目線に合わせた。
「ぷる太が村に残ってくれるから、俺たちは安心して行けるんだ」
「本当?」
「うん。井戸と村を守るのは、すごく大事な役目だろ」
「……うん」
「それに、ぷる太が選んでくれた木片を持っていく。だから、ぷる太のバツと四角も一緒に行く」
ミナはぷる太を見た。
「ぷる太、それでいい?」
「ぷる」
ぷる太は少しだけ丸の木片へ寄った。
ミナはまだ寂しそうだったが、頷いた。
「じゃあ、ぷる太は村を守る。アレンお兄ちゃんは、ぷる太のバツを持っていく」
「うん」
「絶対、少しならって言っちゃ駄目だよ」
「言わないようにする」
「言ったら?」
ぷる太がバツへ飛んだ。
「ぷるっ!」
「ほら!」
「分かった。言わない」
部屋に笑いが広がった。
緊張が、少しだけほどける。
こういう瞬間があるから、この村は強いのだと思う。
◇
午後、外部対応広場で正式な村の決定が確認された。
これは村長の考えだった。
村の大事な判断だから、関係者だけでなく、村の皆にも知らせる。
隠して出発すると不安が広がる。
なら、きちんと説明する。
広場には村人たちが集まった。
畑仕事の途中の者、井戸端の者、子供たち。
ぷる太は見張り桶に入っている。
村長が前に立った。
「リーフェン家の森術学術会議について、村として決めた」
村人たちが静かになる。
「アレンとシルフィは、条件つきで参加する。ただし、一人では行かん。村からはマルタが同行する。王国騎士団からクラウディア殿、王都ギルドからマリナ殿も同行する」
ざわめきが広がる。
不安もある。
でも、以前のようなただの不安ではない。
何が決まり、誰が行き、何を持っていくのかが分かる不安だ。
村長は続けた。
「その場で署名はしない。研究協力も検査も、本人が嫌なら断る。世界樹や井戸のことは話さない。分からないことは持ち帰る」
ミナが大きな声で言った。
「四角!」
ぷる太も続く。
「ぷる!」
村人たちの間に笑いが起きる。
村長も頷いた。
「そうだ。四角だ」
それから、村長は俺とシルフィを見た。
「この二人は、村の外へ行く。だが、村を背負わせるためではない。村がこの二人を一人にしないために、皆で見送る」
その言葉に、胸が熱くなった。
村を背負うのではない。
村が一人にしない。
同じようで、全然違う。
マルタさんが俺の背中を軽く叩いた。
「聞いたかい。背負いすぎるんじゃないよ」
「はい」
「シルフィちゃんもだよ」
「はい」
シルフィは少しだけ目を潤ませていた。
でも、泣かなかった。
木札を握り、背筋を伸ばしている。
◇
夕方、出発準備が整った。
出発は明朝。
今日は早めに休むことになっている。
俺は自分の荷を確認した。
衣類。
簡単な薬草。
筆記具。
条件書の写し。
そして、丸、バツ、四角の木片。
木片は布袋に入れ、懐にしまう。
シルフィがその様子を確認する。
「師匠、木片はすぐ触れる場所に」
「ここでいい?」
「はい。迷った時、すぐ触れます」
「シルフィは?」
彼女は自分の首元を示した。
木札。
村の記録係としての証。
「私はこれを持っていきます」
「うん」
「それと、四角も一枚」
シルフィは小さな木片を見せた。
裏には、自分で文字を書いていた。
『記録されるだけではない』
俺はそれを見て、胸が詰まった。
「いい言葉だな」
「はい」
シルフィは少し照れたように笑った。
「会議で過去の記録を見せられたら、これに触れます。私は記録されるだけの存在ではなく、記録する側でもある、と」
「強いな」
「怖いです」
「でも、強い」
「はい」
その二つが同時にある。
怖いけれど強い。
それでいいのだと思った。
◇
夜、村では小さな鍋が出た。
出発前だからといって、豪華な宴ではない。
いつもの豆と野菜の鍋。
ただ、マルタさんが少しだけ肉を多めに入れてくれた。
「食べて寝る。大事なことだよ」
それがマルタさんの方針だった。
村人たちは、あまり大げさに励まさなかった。
頑張れ。
負けるな。
そういう言葉は、今は少し重い。
代わりに、いつも通りの声が多かった。
「帰ったら畑の柵、見てくれよ」
「保存棚の右下、少しきしむんだ」
「シルフィ先生、戻ったらまた文字教えてね」
「マルタさん、向こうの飯に負けないでね」
「何であたしが飯で戦うんだい」
笑いが起きる。
その普通の会話が、何よりありがたかった。
帰ってくる前提の言葉。
会議に行って、戻ってくる。
その当たり前を、村のみんなが作ってくれている。
ぷる太は井戸の縁で、いつもより少し静かに揺れていた。
俺が近づくと、ぷる、と鳴いた。
「村を頼むな」
「ぷる」
「俺、少しならって言わないようにする」
「ぷるっ」
バツの返事だった。
たぶん、言ったら駄目、という意味だ。
「分かってる」
俺は笑って、ぷる太をそっと撫でた。
冷たくて、柔らかい。
リーフェル村の井戸守り。
今回は一緒に行けない。
でも、その木片は一緒に持っていく。
◇
眠る前、俺は外部対応広場へ一人で立った。
いや、一人ではなかった。
少し遅れてシルフィが来た。
「師匠も、ここに?」
「うん。なんとなく」
「私もです」
外部対応広場には、板が並んでいる。
『外部の方はこちらでお待ちください』
『契約・依頼・申し立ては、その場で即答しません』
『この場で一人では決めません。文書を出してください。村で相談して返事をします』
そして、新しく追加された板。
『外でのその場署名禁止』
月明かりの下で、その文字は静かに立っていた。
俺は言った。
「この広場で、ずいぶん練習したな」
「はい」
「断る練習、保留する練習、条件を作る練習」
「そして、明日からは実践です」
「怖いな」
「はい」
「でも、行くんだな」
「はい」
シルフィは、外部対応広場の机に手を置いた。
「ここで作った言葉を持っていきます」
「俺も、木片を持っていく」
「マルタさんは茶と麦餅を持っていきます」
「強いな」
「強いです」
二人で少し笑った。
その笑いは小さかったけれど、確かにあった。
リーフェン家の会議場は、きっと立派だろう。
森術師たちは賢く、言葉は美しく、空気は重いだろう。
そこで俺たちは揺れるかもしれない。
シルフィは過去を突きつけられるかもしれない。
俺は善意で揺さぶられるかもしれない。
でも、今の俺たちは何も持たずに行くわけではない。
条件書がある。
同行者がいる。
村の言葉がある。
木片がある。
帰る場所がある。
「シルフィ」
「はい」
「怖いまま行こう」
彼女は少し驚いた顔をした。
それから、静かに頷く。
「はい。怖いまま、一緒に行きましょう」
月明かりの下、外部対応広場の四角の印が白く浮かんで見えた。
参加する。
ただし、条件付きで。
それが、リーフェル村の答えだった。




