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無能だと追放された底辺付与術師、実は世界で唯一の【全自動・神級バフ】持ちでした 〜辺境でスローライフを送るはずが、俺が抜けて壊滅寸前の勇者パーティーが泣きついてきてももう遅い。  作者: 終焉を綴る堕天筆聖セラフィム・夜叉王院常闇寛龍


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第32話 ガリオン男爵、証拠隠滅に失敗する

 王都商業裁定所は、王城ほど華やかではない。


 白い石造りの建物ではあるが、貴族の宴に使われるような装飾は少なく、廊下には絵画よりも規則の掲示が多い。商人、職人、貴族家の代理人、ギルド職員、薬師組合の鑑定官。金と契約と信用を扱う場所だけあって、行き交う人々の顔には笑顔よりも計算が浮かんでいた。


 その一室で、バルバロ・フォン・ガリオン男爵は、朝から汗をかいていた。


 部屋は暑くない。


 むしろ石壁のせいで少し冷えるくらいだ。


 それでも彼の額には汗が浮かんでいた。


「これは、何かの手違いだ」


 バルバロは、向かいに座る裁定官へそう言った。


 何度目か分からない言葉だった。


 裁定官は、細い目をした中年の男である。派手な表情をしない。声も荒げない。ただし、一度出した書類から目を離さないタイプの人間だった。


 こういう相手はやりにくい。


 怒鳴れば怒鳴り返してくる者の方が、まだ扱いやすい。


「手違い、ですか」


 裁定官は淡々と聞き返した。


「そうだ。そもそも私は、辺境村との健全な取引を検討せよと命じただけだ。偽薬を売れとも、悪質な契約を結べとも言っていない」


「では、この命令書は?」


 裁定官が机の上に置いた羊皮紙を指で軽く叩く。


 写しではない。


 原本だった。


 ガリオン男爵家の封蝋が押されている。


 リーフェル村から送られてきたものだ。


 バルバロは、それを見るたび喉が詰まる。


「その文面は、ドランが曲解したのだ」


「『村への情を利用すること』という文面も、ですか」


「商談において相手の事情を理解することは重要だろう。それを言ったまでだ」


「なるほど」


 裁定官は頷いた。


 納得したようには見えなかった。


「では、『付与術師アレンについては、可能であれば協力契約に組み込め』という一文は?」


「それは、村の産品の品質安定に必要な助言を得るためで」


「違約金を伴う専属協力契約を結ばせる意図はなかったと?」


「当然だ」


「では、ドラン商会が持参した契約書の雛形について、男爵家は一切関与していないと?」


「そうだ」


「こちらの写しには、男爵家の事務官が下書きを確認した痕跡がありますが」


 裁定官が別の書類を出す。


 バルバロの顔色が変わった。


「それは……」


「契約書の端に残っていた修正印です。ガリオン男爵家の事務官、ベルモント殿の印と一致しています」


 バルバロは奥歯を噛んだ。


 ベルモント。


 まったく、余計な印を残しおって。


「事務官が勝手に確認したのだろう。私は細部まで知らん」


「では、男爵家としては、当主の確認なく商業契約の雛形が外部商人へ渡されたと認めるのですね」


「……そうは言っていない」


「では、ご存じだった?」


「いや、だから」


 バルバロは言葉に詰まった。


 どちらを選んでもまずい。


 知っていたなら関与を認めることになる。


 知らなかったなら、男爵家の管理不備になる。


 裁定官は急かさない。


 その沈黙が、かえって圧力になる。


 部屋の隅には、冒険者ギルド本部から来たマリナが立っていた。


 いつもの受付服ではなく、正式なギルド職員の上着を着ている。隣には薬師組合の鑑定官が座り、偽薬の瓶を前にしている。


 そしてもう一人。


 ドラン商会のドランが、別席に座っていた。


 顔色は悪い。


 だが、目だけはぎらぎらしている。


 自分だけ沈むつもりはない。


 その目だった。


     ◇


「偽薬について確認します」


 裁定官が薬師組合の鑑定官へ視線を向けた。


 鑑定官は小瓶を持ち上げた。


「提出された小瓶の中身は、王都製万能保存薬ではありません。家畜用防腐液を水で薄め、香草と甘味で匂いをごまかした粗悪品です。食材に用いれば風味と品質を損ない、薬草に用いれば薬効成分を破壊する可能性が高い。人体に使用、または摂取した場合は、吐き気、腹痛、めまい等の中毒症状を起こす恐れがあります」


 ドランが小さく咳払いをした。


「その件については、私も被害者です。仕入れ元に騙されたのであって」


 鑑定官は眼鏡を直した。


「小瓶の外側に貼られていた王都製保存薬の偽ラベルは、ドラン商会の倉庫で使われている印刷形式と一致しています」


 ドランの顔が固まる。


「それは、倉庫番が」


「さらに、同様の偽薬がドラン商会の倉庫から複数本押収されています」


「押収?」


 バルバロが思わず声を上げた。


 ドランも目を見開く。


 マリナが静かに言った。


「ギルドと薬師組合が共同で調査しました。商業裁定所の許可を得た正式な確認です」


「いつの間に……」


 ドランは呻くように言った。


 マリナは表情を変えない。


「リーフェル村から証拠品が届いた時点で、同種の偽薬が冒険者や辺境村へ出回る可能性がありました。迅速な確認が必要でしたので」


「勝手に商会の倉庫を」


「許可は取りました」


 マリナは淡々と答えた。


「商業裁定所から」


 ドランは言い返せなかった。


 裁定官は書類をめくる。


「ドラン商会からは、偽薬の販売記録が一部見つかっています。幸い、大量流通前だったため被害は限定的ですが、すでに三件の返品苦情が確認されています」


「返品苦情など、商売ではよくあることです」


 ドランが苦し紛れに言った。


 鑑定官が冷たく返す。


「保存薬を使った肉が腐敗した、薬草が変色した、腹痛を起こした。これを通常の返品苦情と呼ぶのは無理があります」


 室内に重い沈黙が落ちる。


 バルバロは、額の汗を拭った。


 まずい。


 思っていたより、ずっとまずい。


 偽薬がドラン商会だけで済めば、まだ切り捨てられる。


 だが、契約書と命令書がある。


 男爵家が「知らぬ」で逃げ切るには、証拠が多すぎる。


 それでも、逃げるしかない。


 貴族は、最後まで姿勢を崩してはいけない。


 そう信じていた。


「裁定官殿」


 バルバロは声を整えた。


「改めて申し上げる。ガリオン男爵家は、ドラン商会に対し、健全な商談の検討を命じたにすぎない。偽薬販売や不当契約は、ドラン商会の独断である。男爵家はむしろ、名を利用された被害者だ」


 ドランが、ゆっくりバルバロを見た。


 その目が、さらに険しくなる。


「男爵様」


「黙っていろ、ドラン」


「いえ、黙れません」


 ドランは立ち上がりかけ、裁定官に視線で制されて座り直した。


「私だけに罪を被せるおつもりなら、こちらにも話があります」


「貴様」


「私は、男爵様から明確な指示を受けました。リーフェル村の水、薬草、作物を独占しろ。村長が渋れば王都貴族の名を出せ。付与術師アレンは村への情が深いから、そこを使え、と」


「嘘をつくな!」


 バルバロが怒鳴る。


 ドランも負けずに声を上げた。


「嘘ではありません! 私は危険だと言いました。最近はギルドの目も厳しい、辺境村でも契約に詳しい者がいるかもしれない、と。ですが男爵様はおっしゃった。『辺境の村長など、王都の貴族の名を聞けば震える』と!」


「そんな言葉は覚えがない!」


「屋敷の朝食室でおっしゃいました!」


「貴様、恩を忘れたか!」


「恩? 八と二の取り分を押しつけておいて、失敗したら全部私のせいにするのが恩ですか!」


 部屋の空気が一気に荒れた。


 裁定官が机を軽く叩く。


「静粛に」


 激しい音ではない。


 しかし、その一音で二人とも口を閉じた。


 マリナは、そのやり取りを静かに見ていた。


 仲間割れ。


 予想通りだった。


 悪事を共にした者たちは、利益が見える間は互いに笑う。


 だが、損が見えた瞬間、相手を盾にする。


 リーフェル村の人々が鍋を囲んで決まりを作った光景とは、あまりに対照的だった。


     ◇


「ドラン殿」


 裁定官が言った。


「あなたは、ガリオン男爵家からの指示があったと証言するのですね」


「はい」


「証拠は」


「命令書があります」


「それはすでに提出されています」


「さらに、私の手元にも写しがございます」


 ドランは懐から小さな革筒を取り出した。


 バルバロの顔が引きつる。


「貴様……!」


「商人は、念のためを忘れません」


 ドランは苦い笑みを浮かべた。


「男爵様も同じことをなさるでしょう?」


 革筒の中には、命令書の写しがあった。


 しかも、余白にバルバロ本人の走り書きが残っている。


『付与術師を逃がすな。村への情を使え』


 その一文を見た瞬間、部屋の空気が完全に変わった。


 裁定官の目が細くなる。


 マリナの表情が冷える。


 バルバロは、声を失った。


「これは……」


 裁定官が問う。


「男爵殿の筆跡ですね」


「違う」


「筆跡鑑定へ回します」


「待て」


「違うのであれば、問題ないはずです」


「……」


 バルバロは沈黙した。


 それが、ほとんど答えになった。


 マリナは静かに口を開く。


「リーフェル村は、王都から離れた小さな村です。契約や貴族家の圧力に慣れていません。そのような村を狙い、偽薬と不利な契約書を持ち込み、付与相談役本人への拘束まで試みた。これは単なる商談の失敗ではありません」


 裁定官が頷く。


「ギルドとしては、どのような措置を求めますか」


「まず、ドラン商会の該当商品の即時販売停止と回収。次に、リーフェル村および周辺辺境村への接触制限。さらに、ガリオン男爵家による商業干渉について、商業裁定所から正式な警告と取引監視を求めます」


 バルバロが顔を上げた。


「取引監視だと?」


 その声には恐怖が混じっていた。


 取引監視。


 つまり、男爵家の商業活動に裁定所とギルドの目が入る。


 不正な契約や圧力が使えなくなる。


 上位貴族との取引にも影響が出る。


 それは、金欠の男爵家にとって致命的だった。


「やりすぎだ!」


 バルバロは叫んだ。


「辺境村との商談が一つこじれただけで、男爵家の商業活動に制限をかけるなど!」


「偽薬が出ています」


 裁定官が言う。


「悪質契約もあります。さらに、貴族家の名を用いた不当圧力も確認されています」


「まだ確定していない!」


「だから本日は聴取です。ですが、暫定措置は必要です」


「暫定措置?」


「調査終了まで、ガリオン男爵家は辺境村との新規独占契約を停止。ドラン商会は薬品および保存薬の販売を停止。既販売品は回収。違反した場合、商業裁定所より正式処分へ移行します」


 バルバロは椅子に沈んだ。


 ドランも青ざめている。


 どちらも逃げ切れていない。


 どちらも相手に押しつけようとして、さらに証拠を増やした。


 見事な自滅だった。


     ◇


 聴取が終わったあと、商業裁定所の廊下で、バルバロとドランは再び顔を合わせた。


 互いに、もう取り繕う余裕はなかった。


「よくも裏切ったな」


 バルバロが低く言う。


 ドランは乾いた笑いを漏らした。


「最初に切り捨てようとしたのは男爵様でしょう」


「貴様の商会など、私の名がなければ大した取引もできないくせに」


「その大した名が、今や取引監視付きですか」


「口を慎め!」


「慎むべきは男爵様の方です。朝食室での余計な一言、走り書き、封蝋。証拠を残しすぎです」


「貴様に言われたくないわ! 偽薬をスライムに見抜かれるなど、間抜けにもほどがある!」


「普通、スライムが偽薬を見抜くとは思いません!」


「だから辺境村など油断ならんと言ったのだ!」


「言っていません!」


 廊下で始まった醜い言い争いに、通りかかった商人たちが距離を取る。


 その様子を、少し離れた場所でマリナが見ていた。


 隣の若いギルド職員が小声で言う。


「……ひどいですね」


「はい」


「でも、少しだけ胸がすっとしました」


「分かります」


 マリナは小さく息を吐いた。


「ただ、まだ終わりではありません。男爵家は面子を潰されました。ドラン商会も追い詰められています。追い詰められた者が、必ず大人しくなるとは限りません」


「リーフェル村へ報告を?」


「すぐに出します」


 マリナは歩き出しながら言った。


「良い知らせと、注意の両方を」


     ◇


 同じ頃、騎士団本部では、クラウディアがグラウスへ報告していた。


 リーフェル村から戻ったばかりの彼女は、旅の疲れを見せながらも、背筋を伸ばしている。


 机の上には、分厚い報告書。


 井戸水、畑、保存棚、ぷる太、世界樹、アレンの意思、シルフィの立場、村の商売ルール。


 書くべきことが多すぎて、通常の調査報告の倍以上になっていた。


 グラウスは一通り読み、しばらく黙った。


「……クラウディア」


「はい」


「お前は、これを冷静に書いたのだな」


「はい」


「スライムが初級記号を識別し、井戸守りとして村の液体異常検知を担当。付与術師が作った棚には保存結界。畑は本人が『見すぎないようにしている』。世界樹の若木らしき存在は、移動させるべきではない。アレン殿は王国協力自体を完全拒否していないが、村を離れるつもりはない」


「その通りです」


「……頭が痛いな」


「同感です」


 グラウスは額を押さえた。


「だが、結論は明確だな」


「はい」


 クラウディアは迷わず言った。


「アレン殿の強制召集には反対します。彼の力は、村の日常と結びついています。無理に切り離せば、本人にも村にも損害が出ます」


「カイル殿には厳しい報告になる」


「必要です」


「王国への協力の可能性は?」


「あります。ただし、リーフェル村を拠点とした限定的な協力が望ましいです。ギルドを通した薬草の少量取引、騎士団との連絡経路の整備、外部干渉への監視。アレン殿本人を王都へ常駐させる形は避けるべきです」


 グラウスは頷いた。


「お前らしい現実的な報告だ」


「現地が現実的でした」


「スライムに字を教える村が?」


「はい」


 クラウディアは真顔で答えた。


「変ですが、現実的です」


 グラウスは声を出して笑いかけ、何とか堪えた。


「よし。この報告をもとに、ギルドと連携する。リーフェル村に対しては、王国騎士団が状況を把握していると示す。ただし、囲い込まない」


「お願いします」


「それと、エルフ側だな」


「はい。リーフェン家は、次に強硬な使者団を送る可能性があります」


「人間領で強制連行などされては困る」


「同感です」


 グラウスは別紙を取り出した。


「なら、王国側の立場を明確にする文書を作る。リーフェル村への不当な干渉を認めない、と。ただし、森との外交問題に発展させないよう表現は慎重にする」


「リーフェル村へ写しを?」


「送る。クラウディア、お前の名も添える」


「承知しました」


 その時、扉の外が少し騒がしくなった。


 予想できる人物が一人いる。


 案の定、扉が叩かれた。


「入れ」


 入ってきたのはカイルだった。


 表情は険しい。


「報告は終わったのか」


 グラウスは静かに答える。


「今、聞いたところだ」


「それで? アレンの力は重要だったのだろう」


「重要だ」


 カイルの目に、勝ち誇ったような光が浮かぶ。


「なら」


「だが、強制召集には反対する」


 光が消えた。


「なぜだ」


 カイルの声が低くなる。


 クラウディアが答えた。


「本人がリーフェル村に残る意思を明確に示しました。また、彼の力は村の環境と密接に関わっています。無理に引き離すべきではありません」


「また本人の意思か」


「はい」


「王国の戦力より、本人の意思か」


「本人の意思を踏みにじって得た戦力は、長く持ちません」


 クラウディアの声は淡々としていた。


 カイルは拳を握る。


「お前たちは、アレンを甘やかしている」


「違います」


 クラウディアは少しだけ声を強めた。


「彼は、ようやく自分を使い潰さない場所を得たのです。それを甘えと呼ぶなら、勇者パーティーは人の休み方を知らなすぎます」


 部屋が静まり返った。


 カイルの顔に、怒りと屈辱が浮かぶ。


 しかし、言葉が出ない。


 グラウスが低く言った。


「カイル殿。今は、あなた自身の立て直しに集中すべきだ」


「……俺を弱いと言うのか」


「今のあなたは、焦っている」


「弱いと言っているのと同じだ」


「弱さを認めることは、終わりではない」


 カイルは何も言わず、踵を返した。


 扉が閉まる。


 グラウスは深く息を吐いた。


「またこじれたな」


「ですが、必要なことでした」


「分かっている」


 クラウディアは報告書を見た。


 リーフェル村で、アレンは自分の答えを言った。


 今度は王都側が、それを受け止める番だった。


     ◇


 その夜、リーフェル村には、王都からの早馬が着いた。


 マリナからの手紙と、クラウディアの簡易報告の写し。


 村長の家に集まったアレンたちは、それを順番に読んだ。


 マリナの手紙には、ガリオン男爵家とドラン商会が裁定所で追及され、取引監視と販売停止の暫定措置が出たことが書かれていた。


 マルタさんが手を叩いた。


「いい気味だね」


「マルタさん、はっきり言いますね」


 アレンが言うと、マルタさんは胸を張った。


「偽薬で村を騙そうとしたんだよ。これくらい言わせな」


 村長も頷く。


「当然の報いだ」


 シルフィは手紙を読みながら、静かに言った。


「ただ、マリナさんは注意も書いています。追い詰められた者が再び何かする可能性がある、と」


「油断はできんか」


「はい」


 次に、クラウディアの報告写しを読む。


 アレン本人の意思を尊重すること。


 強制召集には反対すること。


 リーフェル村を拠点にした限定的協力の可能性を検討すること。


 ぷる太を村の守護存在として扱うこと。


 最後の一文で、ぷる太が妙に誇らしげに揺れた。


「ぷる太、王国騎士団の報告に載ったぞ」


 アレンが言う。


「ぷる!」


 ぷる太が光った。


「光るなとは言わん。今日は光ってよい」


 村長が珍しく許可した。


 ぷる太は嬉しそうに、ほんのり金色に輝いた。


 シルフィは報告書を胸に抱えるようにして、少し笑った。


「師匠」


「何?」


「クラウディアさんは、師匠の言葉をちゃんと持ち帰ってくれました」


「うん」


「王都にも、聞いてくれる人はいますね」


「そうだな」


 アレンは、ほっとしたように笑った。


 すべてが解決したわけではない。


 ガリオン男爵家も、ドラン商会も、完全に終わったわけではない。


 リーフェン家からは、次の使者団が来るだろう。


 カイルも、まだ諦めていないかもしれない。


 それでも、少しずつ味方が増えている。


 マリナ。


 クラウディア。


 グラウス。


 バルド。


 そして、この村の皆。


 アレンは壁に掛けた木札を見た。


『リーフェル村付与相談役 アレン』


 この木札の意味が、前より少しだけ重くなった気がした。

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