第1話 ベンチに向かって
一週間前の放課後。俺と弥生は何のあても無く廊下を彷徨っていた。
「ねぇ、りゅー君。これからどうするの?」
りゅー君っていうのは俺のことだ。……まぁ言わなくても分かるか。
「どうするって……どうすればいいんだろう……」
我ながら役立たずだなぁ。と思っていると、弥生がとてつもなく深いため息をついて、
「まったく。肝心なときに役に立たないね、りゅー君は」
「しょうがないだろ? 今まで部活なんて入ったことないし。よくわからないんだ」
そう俺たちは今、部活動を見学するために廊下を彷徨っているのだが、俺は部活に入ったことが無く、これといった部もないのでどこに行こうか?と言いながら30分ほど前から廊下をうろちょろしているのだ。
「……なんか疲れてきたな」
中学で体育の授業が終わったころからスタミナが減ってきたことには気付いていたが、まさかここまでとは……。無念。
「そうだね。どこかに座るところ無いかな?」
弥生はキョロキョロと辺りを見回し座れるところを探し始めた。そうか……お前もスタミナが……。
「床じゃ駄目か?」
「やだ」
そうですか……。
――。
――――あっそう言えば!
「ベン――」
「やだ」
「おいコラ。最後ま「やだ」け」
……クソッ!混ざって変なことになったじゃねーか!
「やだやだ言うんじゃねー! ベンチが中庭にあるんだ! 分かったか? もう一回言うぞ。ベンチが中庭にあるだ!」
そんな俺の迫力に押されたのか、弥生は「やだ」も言えずにキョトンとしていた。
「りゅー君。何でそんなに熱くなってるの?」
……ただ呆れてただけみたいだ……。
「そんなことはどうでもいい。中庭に行くぞ」
「あいあいさー」
そして俺と弥生は歩き出した。
――中庭のベンチにむかって。




