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フットボールのギフト ~底辺Jリーガーの俺がフットボールの神様からもらったご褒美とは~  作者: 相沢孝
第十一章 飛躍のリバプール2年目編

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902/914

リーグ最終節(対ワラビーズ戦) その5

 暫定とは言え、遂に首位に躍り出たリバプール。


 今シーズン、最後に首位に立ったのは昨年9月の第6節以来だから、実に8カ月ぶりの首位返り咲きだ。


 思えば随分と長い道のりだった。


 万感の思いもひとしお。KOP達のチャントが津波の様に押し寄せる俺ら(リバプール)の聖地アンフィールド。


 ゲームの展開といい、最終盤にきての首位返り咲きといい、まるで話が出来すぎの三文オペラのようだ。


 だが、それがいい。


 チームのみんなは試合が始まってどころか、今日の開門からずーっとチャントを歌い続けてくれたKOP達にゴールの報告に行く。さあ、リーグ優勝はもうすぐそこだ。


 司も、「ここで気を抜いて同点なんかになったら目も当てられないぞ」と手綱をしっかりと引き締める。


 一方のワラビーズもやられてばかりでなるものかと、果敢にリバプール陣内に攻め込んでくると、互いにオープンな戦いの幕が切って落とされるEPLイングランド・プレミアリーグ 最終節 リバプールSC vs ウルフバーハンプト ワラビーズSC、残り5分!!


 マネラさんがチアゴさんのバックフリップに反応してワラビーズのゴールを狙ったかと思えば、今日、乗りに乗っているヒメナスがリバプールゴール前25mの距離から渾身のミドルを叩き込んでくる。


 互いに決まってもおかしくないクオリティーのシュートを両軍のGKがファインセーブで凌ぎ切ると、徐々に両チームの実力差が開き始めた。


 そして再び、ワラビーズゴール前でゲームが展開する。


 すると、アディショナルタイムに突入した後半の45分、司が単騎突破でワラビーズのPA内に侵入すると、ゴール前で折り返し。


 それに反応するデービス。


 だが、ここでも残留力を発揮してか、キーパーが足で弾いたボールはゴールポストに当たり跳ね返る。ガッテム!


 だが、それを回収したチアゴさんがPA外からシャレオツなループを打つ。


 だが、これもワラビーズの3CBの一角ボリがヘディングで掻き出すと、そのセカンドボールを回収したのはそう、セカンドボール回収王こと俺様、鳴瀬神児だ。


 ワラビーズDF陣がゴール前に張り付いているおかげで、目の前にはいい塩梅のスペースがある。ウホッ!


 俺は左足でポンとボールを前に蹴り出すと、勢いそのまま、ワラビーズゴール前23mから渾身のスカッドを放った。


 “ドゴンッ!”


 まるで、攻城槌(こうじょうつい)が強固な城門を破壊した時のような、重くそして鈍い打突音がピッチに響き渡ると、2021-22シーズン公式球NIKE(ナイキ) FLIGHTフライトの残像を残しながらボールはワラビーズゴールに突き進む。


 ゴールキーパーのサティは最後の意地で俺のシュートに手を伸ばすも、


 “バンッ”


 と、サティの右手を無慈悲に弾くと、ボールは軌跡を一切変えることなく、そのままワラビーズゴールへと突き刺さった。


 EPLイングランド・プレミアリーグ 最終節 リバプールSC vs ウルフバーハンプト ワラビーズSCとの試合は、後半45分、鳴瀬神児のゴールにより、3-1となる。



 試合の行方を決定付けるダメ押しのゴールを決めた俺は、そのままKOP達の待つゴール裏へと走って行く。


 既にスタンドからは、


  ♪ Shinji Naruse Shinji ,He'll pass the ball 40yerds ♪

 (シンジ ナルセ シンジ 奴は40ヤード(36.58)mのパスを通す)



  ♪ He's big and he's f**king hard, Shinji Naruse Shinji……♪

 (奴はでっかく、クソみたいにタフな奴だ。シンジ ナルセ シンジ……)


 と、俺のチャントが鳴りやまない。



 スタンドは既にクライマックス。


 シーズンの最後の最後で順位をひっくり返し、そのまま劇的な優勝を決めたのだ。


 もしかして、スタジアムの観客達もピッチになだれ込んでくるのかもしれない。


 でも、それもしょうがないのだ。


 俺達はそれほどまでの偉業を成し遂げたのだから……


 俺がゴール裏に仁王立ちし、KOP達からの祝福を体全体で受け止める。


 すると、空気を察した審判も、これ以上の混乱を避けるべく、後半のアディショナルタイムは殆ど取らず、そのままゲームは終了した。


EPLイングランド・プレミアリーグ 最終節 リバプールSC vs ウルフバーハンプト ワラビーズSCとの試合は3-1でリバプールSCの勝利」


 スタジアムのアナウンスがそう告げる。


 そして、2019-20シーズン以来2年ぶりの優勝も……あれっ?


 でも、なんか……空気がおかしい。


 本来ならこんな試合展開で優勝を決めたのだから、もっと乱痴気騒ぎになっていいはずなのに、意外なほど、皆さん英国紳士なふるまいだ。


 カタルシスが足りないぞ!!


 なんか、涙しながら拍手しているお客さんが多いし……


 ほら、優勝したんですよ。もっと喜ばなきゃ!!


 すると、何か空気を察したのか、観客席最前列の気の良さそうなおっちゃんが、ポケットからスマホを取り出すと「こっちこっちと手招きし」、何やら俺にスマホの画面を見せて来た。


 ふーん、どれどれ、シティーとアストン・ベラの試合結果かー。


 まあ、万が一、あっちが引き分けになったって、勝点1差でウチ(リバプール)の優勝さ……な、そうだろ。


 だが、そのおっちゃんが見せてくれたスマホの画面には……EPLイングランド・プレミアリーグ 最終節 マクレクターC vs アストン・ベラの試合は3-2でマクレクターCの勝利と……


「はぁ!?どういうこったい!!」


 俺が大声でそう叫ぶと、慈愛に満ちた表情のおっちゃんは、さらにスマホの画面をスワイプスワイプ。



 すると、そこには……



『76分、ギュンドン 1-2


 78分、ロブリ   2-2


 81分、ギュンドン 3-2』


 

 の文字が…………





 --------------------⚽⚽⚽--------------------




 ――十分後、



「放送席、放送席、今日の試合、最後に有終のゴールを決めてくれたミスター鳴瀬に来てもらいました」


「…………」


「ハイ、シンジ、リーグの結果は残念な形になってしまったけれど、今日の試合、素晴らしいシュートでの幕引きだったね。みんな、君の活躍には本当に感動しているんだ。よかったら最後まで応援してくれたサポーターの皆に一言いいかな?」 


「…………」


「シンジ?アーユー オーライ?」


「…………」


「シンジ?一週間後はアールマドリーとの試合になるけど、よかったら何か抱負を語ってくれないかい?」


「…………」


「……シンジ?」


「ア、アストン・ベラを信じた僕がバカでしたー!!(血涙)」


 聖地アンフィールドに俺の魂の咆哮が響き渡った。

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