リーグ最終節(対ワラビーズ戦) その5
暫定とは言え、遂に首位に躍り出たリバプール。
今シーズン、最後に首位に立ったのは昨年9月の第6節以来だから、実に8カ月ぶりの首位返り咲きだ。
思えば随分と長い道のりだった。
万感の思いもひとしお。KOP達のチャントが津波の様に押し寄せる俺らの聖地アンフィールド。
ゲームの展開といい、最終盤にきての首位返り咲きといい、まるで話が出来すぎの三文オペラのようだ。
だが、それがいい。
チームのみんなは試合が始まってどころか、今日の開門からずーっとチャントを歌い続けてくれたKOP達にゴールの報告に行く。さあ、リーグ優勝はもうすぐそこだ。
司も、「ここで気を抜いて同点なんかになったら目も当てられないぞ」と手綱をしっかりと引き締める。
一方のワラビーズもやられてばかりでなるものかと、果敢にリバプール陣内に攻め込んでくると、互いにオープンな戦いの幕が切って落とされるEPL 最終節 リバプールSC vs ウルフバーハンプト ワラビーズSC、残り5分!!
マネラさんがチアゴさんのバックフリップに反応してワラビーズのゴールを狙ったかと思えば、今日、乗りに乗っているヒメナスがリバプールゴール前25mの距離から渾身のミドルを叩き込んでくる。
互いに決まってもおかしくないクオリティーのシュートを両軍のGKがファインセーブで凌ぎ切ると、徐々に両チームの実力差が開き始めた。
そして再び、ワラビーズゴール前でゲームが展開する。
すると、アディショナルタイムに突入した後半の45分、司が単騎突破でワラビーズのPA内に侵入すると、ゴール前で折り返し。
それに反応するデービス。
だが、ここでも残留力を発揮してか、キーパーが足で弾いたボールはゴールポストに当たり跳ね返る。ガッテム!
だが、それを回収したチアゴさんがPA外からシャレオツなループを打つ。
だが、これもワラビーズの3CBの一角ボリがヘディングで掻き出すと、そのセカンドボールを回収したのはそう、セカンドボール回収王こと俺様、鳴瀬神児だ。
ワラビーズDF陣がゴール前に張り付いているおかげで、目の前にはいい塩梅のスペースがある。ウホッ!
俺は左足でポンとボールを前に蹴り出すと、勢いそのまま、ワラビーズゴール前23mから渾身のスカッドを放った。
“ドゴンッ!”
まるで、攻城槌が強固な城門を破壊した時のような、重くそして鈍い打突音がピッチに響き渡ると、2021-22シーズン公式球NIKE FLIGHTの残像を残しながらボールはワラビーズゴールに突き進む。
ゴールキーパーのサティは最後の意地で俺のシュートに手を伸ばすも、
“バンッ”
と、サティの右手を無慈悲に弾くと、ボールは軌跡を一切変えることなく、そのままワラビーズゴールへと突き刺さった。
EPL 最終節 リバプールSC vs ウルフバーハンプト ワラビーズSCとの試合は、後半45分、鳴瀬神児のゴールにより、3-1となる。
試合の行方を決定付けるダメ押しのゴールを決めた俺は、そのままKOP達の待つゴール裏へと走って行く。
既にスタンドからは、
♪ Shinji Naruse Shinji ,He'll pass the ball 40yerds ♪
(シンジ ナルセ シンジ 奴は40ヤード(36.58)mのパスを通す)
♪ He's big and he's f**king hard, Shinji Naruse Shinji……♪
(奴はでっかく、クソみたいにタフな奴だ。シンジ ナルセ シンジ……)
と、俺のチャントが鳴りやまない。
スタンドは既にクライマックス。
シーズンの最後の最後で順位をひっくり返し、そのまま劇的な優勝を決めたのだ。
もしかして、スタジアムの観客達もピッチになだれ込んでくるのかもしれない。
でも、それもしょうがないのだ。
俺達はそれほどまでの偉業を成し遂げたのだから……
俺がゴール裏に仁王立ちし、KOP達からの祝福を体全体で受け止める。
すると、空気を察した審判も、これ以上の混乱を避けるべく、後半のアディショナルタイムは殆ど取らず、そのままゲームは終了した。
「EPL 最終節 リバプールSC vs ウルフバーハンプト ワラビーズSCとの試合は3-1でリバプールSCの勝利」
スタジアムのアナウンスがそう告げる。
そして、2019-20シーズン以来2年ぶりの優勝も……あれっ?
でも、なんか……空気がおかしい。
本来ならこんな試合展開で優勝を決めたのだから、もっと乱痴気騒ぎになっていいはずなのに、意外なほど、皆さん英国紳士なふるまいだ。
カタルシスが足りないぞ!!
なんか、涙しながら拍手しているお客さんが多いし……
ほら、優勝したんですよ。もっと喜ばなきゃ!!
すると、何か空気を察したのか、観客席最前列の気の良さそうなおっちゃんが、ポケットからスマホを取り出すと「こっちこっちと手招きし」、何やら俺にスマホの画面を見せて来た。
ふーん、どれどれ、シティーとアストン・ベラの試合結果かー。
まあ、万が一、あっちが引き分けになったって、勝点1差でウチの優勝さ……な、そうだろ。
だが、そのおっちゃんが見せてくれたスマホの画面には……EPL 最終節 マクレクターC vs アストン・ベラの試合は3-2でマクレクターCの勝利と……
「はぁ!?どういうこったい!!」
俺が大声でそう叫ぶと、慈愛に満ちた表情のおっちゃんは、さらにスマホの画面をスワイプスワイプ。
すると、そこには……
『76分、ギュンドン 1-2
78分、ロブリ 2-2
81分、ギュンドン 3-2』
の文字が…………
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――十分後、
「放送席、放送席、今日の試合、最後に有終のゴールを決めてくれたミスター鳴瀬に来てもらいました」
「…………」
「ハイ、シンジ、リーグの結果は残念な形になってしまったけれど、今日の試合、素晴らしいシュートでの幕引きだったね。みんな、君の活躍には本当に感動しているんだ。よかったら最後まで応援してくれたサポーターの皆に一言いいかな?」
「…………」
「シンジ?アーユー オーライ?」
「…………」
「シンジ?一週間後はアールマドリーとの試合になるけど、よかったら何か抱負を語ってくれないかい?」
「…………」
「……シンジ?」
「ア、アストン・ベラを信じた僕がバカでしたー!!(血涙)」
聖地アンフィールドに俺の魂の咆哮が響き渡った。




