CL決勝(対アールマドリー戦) その1
2022年5月28日(土) 現地時間 21:00 Stade de France
♪ (チャラ チャラ チャラ チャラ チャラ チャラ チャラ チャラ チャ~……) ♪
♪ (チャラ チャラ チャラ チャラ チャラ チャラ チャラ チャラ……) ♪
♪ すげ~え~奴らがやってくる~ ♪
♪ だぁ~って 奴らはチャンピオン~ だ~も~ん (いや おれもやねん~) ♪
♪ ちゃ~んぴおん(ちゃ~んぴおん) ♪
♪ ちゃ~んぴおん(ちゃ~んぴおん) ♪
♪ せか~いい~ち~ ♪
(せか~いい~ち~)
♪ だって ちゃ~んぴおん~ ♪
(ちゃ~んぴおん~)
(『チャンピオンズリーグアンセム』 歌 鳴瀬神児 コーラス 稲森優斗)
俺はチャンピオンズリーグアンセムに合わせて自分の考えた和訳で気持ちよく歌うと、それに合わせて優斗がコーラスで続く。
隣には目じりをピクピク痙攣させている司が……
すると、「だから、その間抜けな歌止めてくんねーかな。せっかくの『チャンピオンズリーグアンセム』が穢れる」と……
しっ、失敬な、何が穢れるだ!?
この俺様の魂の歌、なんだと思ってんだ。(プンプン)
(そやで~、そやで~)
「あっ、優斗、コーラスはもういいから……」
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俺達は今、フランスのフランスのパリ北郊、サンドニにあるフランスの国立競技場とも言える、『Stade de France (スタッド・ド・フランス)』のピッチの上に立っている。
えっ、なんで、そんなところにいるのかだって……
そりゃー、これから行われる今シーズンのクライマックスと言えるCLの決勝で戦うためですよ!!
今季リバプールの目標である三冠最後のタイトル、ビックイヤー(※2)を手に入れる為、俺達はここ、フランス、パリ北郊にある『スタッド・ド・フランス』に舞い降りたのだー。(だぁー……だぁー……)
えっ、お前んところの今シーズンの目標って四冠じゃなかってっけ……って、人の古傷掘り起こすんじゃないよー、ぶっ飛ばすぞ、テメー!!
「だから、PTSDな」と、その時、隣にいた司が言った。
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――五日前、
「だから、おかしいじゃねーか、どうやったらそれまで0点で抑えてたチームが5分間で3失点もするんだよ!!」と手に持った瓶コーラを煽りながら俺。
「どうどうどう、そんな事言ったって、もう、しょうがないのねー」と牛乳のプロテイン割り(チョコ味)を飲みながら拓郎。
「やってるよ、シティーの奴ら、絶対やってるって!!」悔し紛れにとんでもないことを口走る俺。
「んなわきゃねーだろ!!迂闊なこと口走るんじゃねーよ、このアホタレが……」とため息交じり、コーヒーを飲みながら司。
「何度見ても緩いんだよ、この6番のディフェンスが!!」とテレビで流れているマクレクターC vs アストン・ベラのハイライトを見ながら俺。
「まあ、確かに緩いなよな……」とスポンサー様から大量に頂いたエナジードリンク『カバラオ』を飲みながら南君。
「たしかにユルユルやなー、ほんま、コイツ金もらっとんのちゃうか?」と同じくガバラオを飲みながら優斗。(これがレモン風味が効いてて結構イけるのだ)
「だから、迂闊なことを口走るなってって言ってんだろ、万一、タブロイド記者の耳にでも入ったら炎上どころの騒ぎじゃねーぞ!!」と、こういう所でも隙の無い司君。
だからそう言う所がいまいち人間味に欠けるって言われてるんですよ……
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俺達は今、何をしているかというと、ワラビーズとの試合が終わった後の残念会を自宅でやっているのだ。
本来ならクラブハウス近くのレストランを貸し切って盛大に優勝パーティーをする予定だったのだが……(グッスン)
せっかく会場を押さえたのだから、有志だけでもそこで食事会を行おうというオーナーさんはじめ、クラップさん達からの提案もあったのだが、「万全の体勢でマドリー戦に望みたいので」という司の意見に、日本勢は右に倣え。
そして、俺の家で俊平のご飯を食べながらの残念会と相成ったのだ。
その割には食べ物が軽食だけって、ちょっと質素すぎやしませんこと?
俺はスモークサーモンとクリームチーズのサンドイッチをシーズン中滅多に飲まないコーラで流し込む。(もぐもぐもぐ)
「まあ、終わっちまったモノは仕方がねぇ、今日の結果を嘆いてる暇があったら、今週末のマドリー戦の対策でも練っていた方がまだマシだ」と、司はそう言い残すとさっさと自分の部屋に籠っちまった。
「まぁ、司君も、相当頭に来てるのねー」と、なぜか一人だけ俊平特製のバケット一本分丸々使ったサブマリーナ※3をモグモグと食べている拓郎。(うん、それ、ちょっと美味しそうだなー。俊平、ハーフカットで俺にもちょーだい)
「まあ、そうは言っても、ウチだって、年明けからシティーとチェルシーとホットナムに引き分けただけで残りは全部勝ってるからね」と南君。
そうなのである。EPL史上最も白熱したデッドヒートと言われてた2021-22シーズン、ウチは勝点92点でシティーは勝点93、本当にどちらが優勝してもおかしくなかったのだ。
「そうだ、もし、あの時、俺がファン君を抑える事が出来たのなら、今日の結果は変わってたはずだ」と先日のホットナム戦を思い出す俺。
「それを言うなら、僕かてチェルシー戦でのあのシュート決めといたら……」と年明け早々のチェルシーとの第二戦で先発出場だった優斗。
「そんなことを言うなら俺だって、レスター戦で決め切るチャンスはあったんだ……」と年末に行われた今シーズン最後の敗戦を思い出しながら南君。
「僕だって、あのチェルシー戦でロカクさん抑えられてたら、あの試合勝ててたのねー」と優斗と同じくチェルシー戦の第二戦を思い出して拓郎。
そういうと、みんながみんな黙りこくってしまった。
あの試合であの一点を獲っていれば……そしてあの一点を防いでいれば、今こんなにも悔しい思いをせずに済んだのだ。
俺達は十分に分かりきっていたはずの、フットボールにおける一点の重さをというものをまざまざと思い知らされている。
すると、その時だった。
“ガチャリ”とリビングの扉が開く。
そして、「よーし、分かったお前ら」と、なぜか白衣を着てホワイトボードを自室からコロコロ引きずって来た最近クラブ関係者界隈でDr.Kと呼ばれ始めている司が……(あっ『K』はKitazatoの『K』ね)
「えっ、ほうひはの、司君?」と馬鹿でっかい口を開けてサブマリーナを突っ込んだままの拓郎。(だから喰うかしゃべるかどっちかにしなさいって!!)
「お前らのその悔しさ、この週末に俺が晴らしてやる。じゃ、今から始めるからもう準備いいよな」といきなりプロジェクターのスイッチを入れた。
「えっ、なにすんだよ、これから?」
「週末にやるアールマドリーの対策に決まってんだろ」と目をバッキバキにして司。
「これからですかー?」
「ったりめーだろ!!こんなん、悔しくておちおち寝てられるかぁー!!」と司はそう言うと、テーブルの上に置いてあった優斗の飲みかけのカバラオをクーっと煽って“ターンッ”と置く。
何の事はねぇ、テメーが一番引きずってんじゃねーか……
※1、ビックイヤー(Big Ears)とは、UEFAチャンピオンズリーグの優勝トロフィーの愛称になります。由来は、トロフィーの両側にある大きな取っ手が、まるで「大きな耳(big ears)」のように見えることから、この名前が付きました。
※2、サブマリーナ=細長いパン(バゲットやロールパン)を横にカットして、中に肉・野菜・チーズなどを挟んだサンドイッチの名称。その形が潜水艦(submarine)っぽく見えることからこの名前になりました。主な具材はハム、ターキー、ローストビーフ、レタス、トマト、オニオン、チーズなど。
「ちなみに今日の具材は?」
「ハムにローストビーフ、チーズにレタスにトマトにオニオン、それとピクルスとオリーブ。シンプルイズベストなのだ!!」




