FA杯決勝 その10
PK戦に突入し、ピッチ上のミーティングでみんなを鼓舞するクラップさん。
その一方で円陣を組み、どこまでも冷静に選手の皆に声を掛けるトゥルエルさん。
ほんとこれだけ見ても正反対だ。
コイントスはダンク師匠から変わってキャプテンマークを撒いたアンドーさんが行う。
先行はチェルシー。
ファーストキッカーは、俺の永遠のライバル。スペイン代表マルコ・アロンヌ。
すると、アロンヌはアリソンさんの逆を突き無難にPKを決める。
ぬぬぬぬぬー、流石やるな、我がライバル。
僕も負けてはいられませんぞ。ということで、ウチのファーストキッカーは僕でーっす。
まあ、順番は二カ月前のカバラオカップの時から変わらずということで(その時のメンバーがいなかったらそのまま繰り上げで……)
そんな感じでチェルシーのゴール裏に向かってボールをセットする僕。
もちろん、チェルシーのキーパーはそのまんまのメンソンです。
トゥルエルさんも同じ間違い(?)は二度しないタイプらしいっすね。
そして相変わらず、キーパーから一瞬たりとも視線を切らない僕。
なんか、先に視線を外した方が負けたような気がするんだよねー。
バッチバチの火花が飛び合う俺とメンソン。
いいじゃん、オラ、ドンドンとアドレナリンが湧いて来たぞー。
審判の笛が“ ピーっ”と鳴る。
俺はスーッと大きく息を吸ってからフンヌ!!
渾身のインステップをメンソンの顔面目掛けてぶっ放した。
距離11mからのスカッド。
もちろん、キーパーのメンソンもそれは読んでいた。
だが、メンソンが反応するよりも速く、俺の蹴ったスカッドはメンソンの頭上僅か5センチメートル上を通過する。
悔しがるメンソン。
「ファァッ◯!!」
そして悔しがる僕。
「クソがぁぁ!!」って……アレ?
すると、「お前、ほんとPKなんだと思ってんだよ」と呆れた顔して司が……
さらに、「別にキーパーに当てたら勝ちや無いで神児君」と呆れた顔して優斗が……
トドメに「ほーんと、一回、チームのカウンセリング受けたほうがいいのねー」と呆れた顔して拓郎が……
おいっ、拓郎のくせに言うじゃねーかよ。
そんな感じで、一人目を終わって1-1。
二人目のチェルシーのキッカーは、延長戦、交代で入って来たアスプリケイタ。
すると……バイーンと盛大にゴールポストにブチ当てたアスプリケイタ。
頭を抱えてその場で蹲る。
どうやら、ゴールポストの神様はスペイン人がお好きみたいだ。
おいっ、司、間違ってもクロスバーの神様に見初められんなよ。
という訳で、ウチの二人目は司君。
すると……スパーンとゴール左上隅の神コースにインステップでぶち込む司。
ほんと可愛げが無い。もうちっとくらいビビった顔しろよお前。
「お前だけにはそう言う事言われてくないな」と相変わらず勝手に人の心を読む司。
2011年ドイツW杯で世界一になった時の熊谷選手並みのえっぐいコースを決め切ると当たり前の様にみんなの元に帰って来た。
そんな感じで、二人目が終わって2-1でウチがリードです。うほっ!
チェルシーの三人目はジェイミー。このジェイミーも120分フルで戦っていたWBだ。うん、我が永遠のライバル、アロンヌさんと同じ匂いがしますぞ。(クンクン)
「っていうか、単にトゥルエルさんがサイドにはそういう選手が好きなだけじゃね?」と至極まっとうな意見を言う司。
……確かに!!
そんなことを思っていたらど真ん中にあっさり決めるジェイミー。
うーん、胆力の太さもあなどれませんな!!
そして、ウチの3人目はキャプテンマークを付けたアンドーさん。
たのみますぞ!!
すると、アンドーさんは、コースを読まれつつも、メンディーの手を弾いてゴール右隅にぶち込んだ。
しっかりと蹴り抜いたからこそのゴール。
アンドーさん、お見事!!
というわけで、三人目が終わり3-2。
さて、チェルシーの四人目は同じく延長戦で替わって入ったバークレー。
なるほど、トゥルエルさんは極力前回の時とは違うキッカーを選んだって訳か。
それもまた一つの手。つくづく考えていることがクラップさんと正反対のトゥルエルさん。
バークレーは見事トゥルエルさんの期待に応え、アリソンさんの逆を突くコースにシュートを決める。くやしいけれど、ナイッシュー。
そして我が軍の四人目はチアゴ (アルカンシェル)さん。
チアゴさんも攻守に渡り120分間本当にお疲れ様でございました。
そんなわけで、最後のお仕事です。あともう一息。頑張ってください。(ハート)
すると、チアゴさん。
キーパーの動きを冷静に見てから逆のコースに流し込む。イエッス!!
あの、蹴ると見せかけてからの一瞬溜めてのフェイント。
これをこの舞台でできるだなんて相当メンタルが図太い。
すると……「神児程じゃないよ」とニッコリとスマイル。
あれ、もしかして、チアゴさんも人の心読めちゃったりする感じですか?
そんな感じでPKスコアは4-3で依然、リバプールのリードです。
そして、運命の5人目。
チェルシーは、これまた120分間フル出場のジョージ。
そういやこの人、今日の試合でシュート打ったっけ?
だが、そんなことを思う間もなく、ゴールの右隅に冷静に流し込む。
この冷静さがあればこの試合とっくに決まっていたような気がするのはなーぜなーぜ?
さて、いよいよ、オーラスは、120分間トップで体を張ってくださりご苦労様です。
最後のお仕事として、チャチャっと決めちゃってください。
俺達のマネラさん!!
しかし、好事魔多し。
大安牌と思われたマネラさんがまさかのポストの神様のお導きに誘われる。“バイーン”
って、ここでも、決まらんのかーい!!
と、思わず吉本新喜劇の様にガタガタと崩れ落ちる我が軍と、それとは対照的に珍しく拳ピッチに叩きつけオーバーアクションで喜ぶトゥルエルさん。
まるで勝ったかのような喜び方をするチェルシーの面々。
……ってか、まだ、試合終わって無いけど大丈夫っすか?そんなフラグ立てて。
さらに、チェルシーのゴール裏からもエキサイトしすぎたサポーターが青い煙の発煙筒を投げ込んで来た。
それを見て審判がゲームを中断。
スタッフを呼んで発煙筒を片付けさせる。
うーん、こういう言い方アレなんすけど、これって自分から〝流れ″を手放してませんか?カイジ的に……(ざわっ……ざわっ……)
だが、ロカク師匠の替わりに入ったハキムとかいう選手は、思いっクソのインステップで「そんなのかんけーねー」とばかりにウチのゴールにぶち込みやがった。ガッテム!!
ならばと、うちも負けてなるものかと、6人目のキッカーはジョコちゃん!!
さあ、ポルトガルの新星よ、チェルシーのゴールにぶち込んでやりなさい!!
すると、ジョコちゃんはインサイドでしっかりと蹴り抜くとチェルシーのゴール右隅にぶち込んだ。
おっしゃー!!もう、ジョコちゃんしか勝たん!!
PKスコアは5-5。
固唾をのむ8万4千の観客達。(in The Home Of Football)※8
そしてチェルシーの7人目は、今日、当たりに当たっていた(別の意味で)マウニー!!
ちょっと……期待しちゃってます。
本人もそこら辺、十分に分かってるのか、妙に表情が硬いぞ?(大丈夫か?)
すると……“バイーン”と今日一でっかい音を立ててゴールポストにブチ当てたマウニー。
もう、今日はそう言う日だ。諦めなさい。
やはり、ゴールならぬ、ゴールポストの神様に愛されてたんですね。ウフッ♪
さあ、今度こそ、遂にリーチ!!
我が軍の7人目のキッカーは……えーっと、拓郎!?大丈夫か、オイッ……
なんか、今まで見たこと無いくらい顔面蒼白にしてペナルティースポットの前に佇む拓郎。
こんな縮こまった拓郎を見るのは……うん、前回のカバラオ杯以来3カ月ぶりだ。まあ、ちょくちょく見せるよな。
すると、司が近づいて来て拓郎にゴニョゴニョゴニョ。
コクコクと頷く拓郎。
審判が“ピーっ”と笛を鳴らす。
すると、腹を括ったのか、リバプール湾の鯱は、十分距離を取ってから、フェイントなんかの小細工を一切せず、その長くてぶっとい足で思いっきりボールを蹴り上げた。
直後、ギュイーン!!と音を立ててチェルシーゴール左隅に突き進む。
キーパーのメンソンもコースを読んで横っ飛びするも、糸を引くようなボールはメンソンの伸ばした手のさらに上を通過するとゴールネットに深々と突き刺さった。
リバプールSC、カバラオ杯に続き、FA杯も優勝!!
なるほど、大方、司の野郎、拓郎に「DFラインからフィードするつもりで思いっきり蹴って来い」とでもいったのだろう。
たしかに、フィードキックに関しては一線級だものな、アイツ……
思わず安堵からかその場で呆けたように跪く拓郎を次々とリバプールの選手達が圧し掛かっていく。
うん、きっと拓郎の事だから、100人乗っても大丈夫。
観客席を見上げると、今まで隠していたのか観客席のあちこちから、ウチのカラーの赤色の発煙筒が炊かれている。
こういう言い方すると、ちょっとアレなんだが、純粋に美しいと思ってしまったんだ。
FA杯決勝 リバプールSC vs チェルシーSCの結果は0-0(PK6-5)でリバプールSCの勝利となり、俺達は今シーズンの二冠を達成した。
クラップさんが選手と抱き合い泣いている。その輪の中には、サルーさんも、ダンク師匠もいる。
その表情を見ただけで、この試合がどれだけハードだったかを物語っている。
だが、シーズン四冠を目標としている俺達には、この先もまだまだ強敵が立ちはだかっているのだ。
三日後にはサウスサンプトと、そして一週間後にはウルフバーンとのリーグ最終戦が……そして、二週間後には宿敵アールマドリーとのCL決勝が……
それでも、今日、この瞬間だけは、勝利の美酒に酔いしれたいと思ったんだ。
(※8)The Home Of Footballとは、訳すと『サッカーの聖地』という意味になります。すなわち、ここでは、ロンドンのウェンブリースタジアムのことを指します。




