FA杯決勝 その4
チェルシーは今のプレーで度肝を冷やしたのか、ジェイミー、アロンヌの両WBとも下がり目となり5バックの様相を呈して来た。
そうなるとなったで、ウチとしても苦しい。
セレソンのレジェンド、チアゴさんを中心としたチェルシーDF陣。
ボールを持つことは出来るが崩し切る事は出来ぬまま、おやおやいつもの展開に落ち着いてきましたか?
と思ったのもつかの間の前半の8分。
ディフェンスラインから持ち上がったTAAから超絶アウトサイドおしゃれパスがピンポイントで優斗に通った。
しゅごぉぉーい!!
って、アウトサイドパスでサイドチェンジって出来るもんなんすか?神児びっくし。
トレイン・アレックス・アッパーフィールド。こいつも間違いなくバケモンだ。
稲森優斗、ゴールキーパーと一対一。
浪速のガウショ、ここにありー!!
だが、右足を振り抜くも飛び出したメンソンの足に阻まれ、あと一歩のところで決め切れない優斗。
うおぉぉーい!!もうそれ、流し込むだけやろ!!
思わず頭を抱えるクラップ監督と優斗。そういうとこやぞ、フロント3に割り込めないのは。
「大事に行き過ぎたかな」
「もう、コースバレバレやないか。しかも甘いし」
「これだったら、お得意のスティンガーで蹴った方がまだメンソンの裏かけたかもな」と溜息の上司。
すると……おや?
ピッチの上で蹲っているあちらのチアゴさん。一体何があったのやら……
スタジアムのモニターでは、優斗のシュートのこぼれ球をゴールラインギリギリでクリアーするトレバー。
あー、こうしてみると本当に惜しかったな……日本人初のFA杯決勝の得点まであと10cm。残念優斗、切り替えてこ。
すると、そこに交錯するチアゴさん。
「ああ~」とスタジアムの観客達からもため息が漏れる。
なんと、優斗のシュートをクリアして蹴り上げたトレバーのスパイクがチアゴさんの脛にジャストミート。
「これ、脛当てがあっても痛い奴だわ」と共感しまくりの俺。
「ついでにこのままベンチに引っ込んでくれないかな」と悪い顔の司。
こういう人間の本性迄きちんとサポーターの皆さんにお届け出来れば、もう少し私のユニフォームの売り上げもいいと思うのに……と、代表でもクラブでも司にユニフォームの売り上げで負けている僕。
そうこうしているうちに無事プレーに復帰したチアゴさん。
これにはチェルシーサポも一安心。
上司の「チッ!」という舌打ちが聞こえてきました。
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その後は、ウチが攻めてチェルシーが守るいつもの展開。
こっちのチアゴさんのおしゃれヒールリフトなんかが炸裂するも、当然の如く、それを感じられない浪速のガウショ。
「ってか、今のプレーはお前がやる側だろうが?どうした、浪速のガウショ!!」
「まあ、ありゃ感じろっていうのが無理な話よ」となんとなくだが優斗には甘い司。
「まぁ、確かに……」
だが、運動量に勝る優斗。上下左右、独楽鼠のように目まぐるしく動き回るとリバプールの左サイドが俄然躍動して来た。
もっとも何度か惜しい攻撃を仕掛けるのだがフィニッシュまでは持ち込めない。うーん、歯がゆいなー。
すると、前半の22分、一瞬の隙を突き、チェルシーのロングカウンターが発動した。
DFラインでボールを持っていたあっちのチアゴさんからの一発でロングパスでいきなり盤面がひっくり返る。
これだからおっかない。さすがは歴戦の強者にしてセレソンのレジェンド。
「「うおっ、あぶなっ!!」」
思わず頭を抱える俺と司。
だが、決め切れないのはあちらさんも一緒。
10番のプリッチがシュートを打つも僅かに枠から逸れてコロコロコロ。
「やられたかと思った」と俺。
「まあ、決め切れないのはいつものことか」と安堵の溜息を吐く司。
「ってか、チアゴにプレス行ってたよな?」
「マネラさんもモーさんも付いてはいたけど緩かったな。それにロバートさんも無理にボールを納めようとしたのもいけなかった」
「セーフティーファーストでクリアしてたらなんてことはないプレーだったからな」
クラップ監督もテクニカルエリアに出て「もっとシンプルにプレーしなさい」と指示を出してる。
共に決定的チャンスを迎えるも決め切れない両チーム。
すると前半27分、リバプールに激震が走る。
再び左サイドを崩されてチェルシーにカウンターを食らった我が軍。
(おい優斗……)
スペイン代表WBのマルコ・アロンヌのシュートを体を投げ出してセーブしたアリソンさん。
しかし、アロンヌと激しい接触。なんとかプレーを続けていたが、アリソンさんの異変に気付いたダンク師匠が指示を出してゲームを止めさせると、その場で蹲るアリソンさん。
「うわー、大丈夫か?」
メディカルスタッフがピッチ内に入り治療が始まる。
「アロンヌの足がモロに入ってるな」
モニターに映し出されたリプレイを見て司も険しい顔をする。
直ぐにクラップさんの指示で2ndGKのケルファさんにアップの指示を出す。
ウチの選手達もチェルシーの選手達も一旦ベンチ前に下がり状況を見守っている。
その間も、この時間を無駄にしてはならぬと、両監督とも選手達に細かな指示を出す。
――数分後、
メディカルスタッフの治療が終わると、幸いなことに、アリソンさんの怪我は大事には至っておらず、ゲーム続行が可能と判断。
選手一同、フーッと胸を撫で下ろす。
そして、リバプールボールで試合が再開した直後、再びリバプールに衝撃が走った。
なんと、我らが太陽、モーさんがセンターサークル付近で座り込んでしまったのだ。
「えっ、ちょっと待って、ちょっと待って、モーさんどうしたの?」
直ぐに異変に気付いたケンタがボールを外に出す。
視線の先には悲しい顔でピッチに座り込んだままのモーさん。
あれ、今、もしかして、ウチって、けっこうピンチじゃね?




