FA杯決勝 その3
観客席を見上げると三階席まで超満員。
「おいおいおい、一体、今日、何人入ってんだよ?」と聖地ウェンブリーのゴール裏に立って俺。
「なんと、さっき公式発表があって8万4千人だとよ」と呆れた顔で司。
「はち!まん!よん!せん!にん!」
……間違いなく先月ここでやったシティーとのセミファイナルより入ってる。
あん時は確か……7万5千人だっけ?
そりゃまー今まで、アマスタのイエニスタが来た時や、去年のCLでマドリーなんかとやった時に超満員のスタジアムでプレーしたことはあるが、間違いなく今日がベストだ。
「ってか、ホントみんな、サッカーが好きなんだなー」と感嘆したように俺。
「お前、それ、フットボールの聖地で言うか?」といささか呆れたように司。
「いや、ほんと、正直な感想だよ」と俺は改めてスタジアムの観客席を見渡した。
スタジアムは赤(リバプール側)と青(チェルシー側)、きれいに真っ二つに分かれている。
そんな感じで今日のメンバー表です。ハイ、ドン!
リバプールはDFラインが右から、TAA-拓郎-ダンク師匠-ロバートさん。
今回、俺と司は後半からの出場予定です。(三日前のリーグ戦、フル出場だったもので……)
中盤はアンドーさんがアンカーに入っての、前がケンタとチアゴ(アルカンシェル)さん。
そして前線のフロントスリーは右から、安定のサルーさんに今日はマネラさんがトップ、そして優斗が左で大抜擢だ。
そうそう優斗、司からの伝言な。
「『石にしがみ付いてでも、後半の15分まではピッチに立ってろ』……だってさ。ご愁傷様」
そしてチェルシーはというと、いつものメンツ。(えっ、それだけ!!)
だって、ほら、今季、四戦目でフォーメーションもメンバーもほとんど変わってないんですもの……
若干メンバーの変更はありつつも、安定の3-4-2-1でトップはロカク師匠に右にマウニーの左はプリッチ。中盤はジャイミー-ジョージ-バチッチ-アロンヌと3カ月前のカバラオの時と変わらず。そしてDFはリュディック-シウバ-トレバーの3CBと、真ん中にセレソンのチアゴさんがいらっしゃる万全の構え。(結局説明しました)
なんか今日もロースコアで動きそうだなー。
「どうなんですかね?北里さん」
「というか、ほんと、このカードってゴール決まってもVARが発動して取り消されるんだよなー。なんか今日もそんな予感が……」
というわけで、2022年5月14日(土)17:45、チェルシーのキックオフからFA杯決勝が始まった!!
大きく蹴り出し、一気にプレスを仕掛けてくるチェルシー。
「おお、チェルシー、キックオフ直後からフルスロットルだな」
「開始直後のフレッシュな状態から一気に勝負を掛けてきたか?」と司。
3カ月前のカバラオの決勝では双方静かな立ち上がりだったが、やはりトゥルエルさん。いろいろ考えてるんだなー。それを見て前線から猛ダッシュで戻る優斗、ガンバレよー。
だが、ジャンプ一番、ウチの人外、拓郎のハイジャンプで一気にボールを押し返すと、リパプールのペースで試合が進む。
なるほど、単純なハイボールだと全部拓郎がマイボにしちまいそうだな。
チェルシーの前線に比べると明らかに頭一つ分身長が抜け出している拓郎。やはり、でっかいことはいいことだ。
その様子を見てトゥルエルさんも腕を組んで渋い顔です。
最終ラインにでんと構えた拓郎がイルカの曲芸よろしく、浮いたボールをポンポンと器用に頭で押し返す。やはり鯱とイルカは生物学的に大して変わらないというのは本当らしい。
そんな感じで序盤早々に試合の主導権を握ることに成功した我が軍。
すると前半三分のことだった。
拓郎からのクリアボールのこぼれ球を拾った優斗が果敢なドリブルでチェルシーのPA内左ポケットに侵入するとゴール前に折り返し!!
いったかー!!
だが、それに飛び込んだウチのチアゴ (アルカンシェル)さん。僅かにボールに及ばず。つま先の先5センチのところを優斗のクロスが無情にも通過していった。
おっしいぃぃー!!
もう、あと、ほんの少し。ボールにチョンと触るだけでゴールだったのにー……
「カバラオの時も含めて、一番惜しかったんじゃねーの、今のが?」とは苦虫を嚙み潰したかの様な上司。
だいたいこういうチャンスを逃すと、その後、相手に流れが行くんですよねー……
スタジアムのモニターにリプレイが流れると、場内から『うわぁー』っとどよめきが起こる。
千載一遇のチャンスを逃したリバプールと九死に一生を得たチェルシー。
さあ、フットボールの神様から、祝杯のご褒美をいただけるのはどっちだ!!
「「わかりませんっ!!」」




