FA杯決勝 その1
「キアンのシュートがバーを越えたー!!リバプール優勝!!2021-22シーズン、リバプールSC、カバラオカップ制覇です!!」
モニターからアナウンサーの絶叫が聞こえる。
「歴史に残る壮絶なPK戦。最後はチェルシーのGK、キアン・アリサルガ。自らのPK失敗により10-11で敗れましたー……」
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「けど、なーんで、あんなに当たりに当たってたメンソン下げたんやろなー」とガス入りのペリエを飲みながら優斗。
「策士策に溺れるの典型だね」と焼きたてのマルゲリータ(※1)をもぐもぐ食べながら南君。
「まあ、しょうがないさ。これまでキアンで2試合、PK戦を勝ち上がってるんだから、使いたくなるトゥルエルさんの気持ちも分らんではない」と玄人好みのマリナーラ(※2)を優雅に食べながら司。
「でも、ほんと、PK外さなくてよかったのね。未だに外した時の夢見る事があるもの」と自身が9番目のキッカーに指名されめちゃくちゃビビりながらPKを蹴った拓郎。確かコイツのシュート、キアンに触られてたよな……
俺達は今、明後日に控えたFA杯(※3)決勝の為、司の家に集まりミーティングをしている。
モニターでは今年の2月に行われたカバラオカップのファイナルが流れていた。
試合内容はリバプール、チェルシーとも120分間フルに戦ってのスコアレスドロー。そこからPK戦にもつれ込むと、なんと双方のフィールド選手が全て決め切り、最後はウチのキーパーのケルファさんとチェルシーのキーパーのキアンとの一騎打ち。
ちなみに結果はご存じの通り、ケルファさんがしっかりと決め切れたのに対し、チェルシーのGKキアンは盛大にフカしてしまい、ここで、フットボール史に残るであろう熾烈なPK戦は11-10でリバプールが勝利することとなったのだ。
んでっ、ここで物議を醸しだしたのが、試合終了直前に、この試合、当たりにあたっていた1stキーパーのメンソンを下げて、カバラオカップで二度PK戦で勝ちあがったケアンを投入したことだった。
結局替わって入ったキアンは11本のPKを1本も止めることが来ず、おまけに自らのPKも失敗してしまうという踏んだり蹴ったりの有様。
翌日のイギリス大衆紙なんかにはトゥルエル監督の采配についての様々な意見(主に批判)が取りざたされたという経緯がある。
「ってか、まぁ、ケアンもご愁傷さまやで」と溜息を吐きながら優斗。
「ほんと、あんなえっぐいPK、僕初めてみたのね」とカルツォーネ(※4)をタコスの様にモリモリ食べる拓郎。お前は一体どういう口の大きさしてるんだ。
「でも同情したくはなるよね。試合に出て来た途端いきなりアレだもの……」とちょっと憐れみを含んだようなアンニョイな顔の南君。
と、みんなはまるで、俺を事件の加害者のような目で見る。
「何が言いたい、何が?言っとくけど、アレは司の指示だからな。俺だってやりたくてやったわけじゃない」と俊平特製のポルチーニ茸がふんだんに乗った(※5)カプリチョーザをむしゃむしゃむしゃ。
「何言ってんだ、人聞きの悪い。お前がアドバイス欲しいって言うから、こんなのはどうだ?って提案してやっただけだろ。それをやろうと決めたのはお前自身だ」とさっさと部外者を決め込む司。
いうても、お前の言う通りやらないで失敗したら、この先ずーっとねちねち言うくせに……
まあ、俺が何をしたかというと、PK戦の1番手に指名された俺は、試合に途中出場して来たばっかのケアンの顔面目掛けて渾身のスカッドを打ち込んだだけだ。
幸いな事に、俺の蹴ったボールはキアンの顔の横スレスレを通り抜けPKは成功。
一方のキアンはというと俺のボールが通り抜けると同時に腰を抜かした様に尻もちを付いてたけど……
司曰く、「まあ、一本目止められたとしても、キアンにトラウマ受け付けられればそれで十分お釣りがくる」だとさ。
別にそんなひどいことをしたつもりはない。
「いやー、今、リプレイで改めて見たけど、神児君、ボールセットしてから、ずーっとキアンから視線外してへんやん、怖っ!」
「殺るきまんまんって顔だな」と南君。
「人殺しの顔なのね。怖い怖い」と拓郎。
「えっ?今気づいたけど、シュート決まっとんのに舌打ちしとるやん、何考えとんのや神児君」と心底ドン引きした様子の優斗。
「まあ、こういう時にこそその人間の本性ってのが滲み出るんだよ」と南君のマルゲリータと交換こする司。あっ、俺もそれ欲しいなー。
と、その時「クアトロ・フォルマッジ(※5)できあがったのだー」とキッチンからおにぎりがやってきた。
「「やったー」」
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※1、マルゲリータ(Margherita)、みんな大好き、トマトソース、モッツァレラチーズ、バジルを使用したイタリア・ナポリを代表するピザです。1889年にナポリを訪れたイタリア王妃マルゲリータに捧げられたことがその名の由来とされています。
※2、FA杯=正式名称は『The FA Cup』、FAは"The Football Association(協会)"の頭文字から。世界最古のサッカー協会のため、なんと名称に国名がつかないのだ。さすがはサッカーの母国。1871年に創設された世界で最も歴史があるサッカーの大会であり、多くの国のカップ戦がこの大会をモデルにしている。(wikipedia参照)
※3、マリナーラ(Marinara)は、18世紀にナポリで誕生した「船乗り」を意味する伝統的なピザです。トマトソース、ニンニク、オレガノ、オリーブオイルの4つの材料で構成された、チーズを使用しない非常にシンプルなピザで、トマトの酸味とガーリックの香りが特徴ですぞ。
※4、 カプリチョーザ(Capricciosa)とは、イタリア語で「気まぐれ」を意味し、日本では『トマトとニンニクのパスタ』が有名なあのイタリアンレストランで有名ですが、ここでは、『シェフの気まぐれ風』を意味しており、本日のトッピングはトマトとサラミにサルシッチ(イタリア製ソーセージ)、そこにポルチーニ茸とルッコラ、ブラックオリーブなんかがトッピングされております。もぐもぐ。
※5、クアトロ・フォルマッジ(Quattro Formaggi)とは、イタリア語で「4種類のチーズ」を意味しており、名前の通り、4数種のチーズを使用したピザです。今回は、モッツァレラにゴルゴンゾーラ、パルミジャーノ・レッジャーノにリコッタの組み合わせになっております。また、「お好みで蜂蜜を掛けてもおいしいのだー」とシェフも言っております。




