vsマクレクターC戦 その7
先にピッチに立つと、遅れてシティーの選手達がやって来た。
スタジアムの中は相変わらずKOP達のチャントが鳴りやまず、『THIS IS アンフィールド』の空気を醸し出している。
シティーのメンバーを見るとどうやら前半からメンバー交代は無さそうだ。
拓郎がピッチに立っているのを見て何やらひそひそと話をするレブライネとホーランド。
まあ、いいさ。なんとでも言っといてくれ。こっちはとっくに覚悟は決まってるんだから。
審判の笛が鳴るとリバプールのキックオフで後半が始まった。
後半の先手を取ったのはウチだった。
先程のハーフタイムでタイムリミット15分と宣告されたジョコちゃんとマネラさんが狂ったようにボールを追いかけ回す。
その迫力に気圧され、ドンドンとラインを下げて来るシティーの選手達。最終ラインの拓郎とダンク師匠も腹を括ったのか最終ラインをアタッキングサードまで侵入させて不退転の覚悟。
だが、こうなったらこうなったで、今度はシティーが腹を括りゴール前に5-5のブロックを敷いて専守防衛の決意。
そうなると、いかにプレミア屈指の火力を持つウチとしてもなかなか決め切れない。
俺も何度かスカッドを放つもシティーの選手達のブロックに阻まれシティーのゴールにまで届くことすらできなかった。
そうこうしているうちに、潮が引くようにウチの圧力が弱まって来ると、気が付けば時計は後半の60分を過ぎていた。
そこはもう、当初の予定通り、マネラさんとジョコちゃんが交代すると、僚友の南君と優斗がピッチに降り立った。
なんとこの時点で、リバプールの選手のうち日本人が5人!!
あの名門リバプールのメンバー表に日本人の名前が5人も連なっている。もちろんこれは快挙と言わざるを得ないが、そこはそれ。これで負けてしまったら何にもならない。
だが、残念なことにリバプールのメンバー交代を機に圧力を強め始めたシティー。やはり、前線のプレッシャーはマネラさんやジョコちゃんには及ばない。
でも、だからと言ってそのままやられていいという訳ではない。
前の二人に比べてプレッシャーの圧が足らないというのなら、運動量でそれを補う南君と優斗。
一方のシティーはというと、試合開始直後からのジェットコースターのような試合展開に選手の足が止まり始めてきた後半の75分の事だった。
ボール保持率を高めてきたウチの一瞬の隙を突き、レブライネがボールをカット。
すると、全く迷うことなく、ホーランドの頭に合わせてボールを入れる。
それにいち早く反応した拓郎。
前からの守備は既にこのチームに置いて拓郎の専売特許にもなっている。
そしてそれに合わせて、サイドの俺はDFラインの横幅を締める。これが今のリバプールのディフェンス時の約束事になっている。
だが、グアルディオルが全幅の信頼を寄せるベルギー代表のキャプテンはそんな俺達のわずかな隙を見逃さなかった。
ホーランドの頭に合わせたように見えたレブライネのパスは僅かにアンダースピンを掛けて球足が伸びるように蹴って来た。
そのボールは、ホーランドをからボールを刈り取ろうとスプラッシュジャンプを決めた神の鯨の頭上わずか数センチのところを通過していく。
そしてそのボールの受け手となったのは、俺がスライドして開けた右サイドバックの位置から走り込んで来たグーリッシュ。
ホーランドを囮に使ったレブライネ渾身の縦パスが今、我が軍の喉元に深く突き刺さる。
「戻れー!!」とピッチに轟く司の声。
ダンク師匠も自分のポジションを捨ててグーリッシュを追いかけるも、グーリッシュは既にリバプールPA内左45度の場所に到達する。
そこは通称『デルピエーロゾーン』と言われる場所で……
GKのアリソンさんもその事は既に十分織り込み済み。
アリソンさんが腰をグッと下げグーリッシュのシュートに合わせて左足に体重を乗せたその時だった。
右足のインフロントでボールを巻き込むように蹴るはずだったグーリッシュはそこから渾身のキックフェイント。
そして、一連の流れのまま右足のアウトサイドで真横にボールを流す。
誰もがグーリッシュのキックフェイントに釣られる中、ただ一人そのボールに反応した背番号47番は左サイドから走り込んで来た。
マクレクター・シティー生え抜きの新星、フィリップ・ファルドンがグーリッシュからのラストパスを右のインサイドで確実にミートすると、ボールはリバプールゴール左サイドネットにすっぽりと納まる。
逆を突かれたアリソンさんは一歩も動けず。
EPL第32節 リバプールSC vs マクレクター・Cの戦いは、後半の76分、フィル・ファルドンのゴールにより1-2となる。




