vsマクレクターC戦 その5
THE KOPの前で仁王立ちの俺。相変わらず両手を両耳の後ろに当ててダンボのポーズから微動だにせず。
だが、KOP達はもう誰も俺のチャントを歌ってはくれていない。
すると、トントンと肩を叩かれ、「いつまでアホ面下げて突っ立ってるんだ」と司。
俺は恐る恐る振り返って観ると、司の呆れた顔のその先で、主審と線審がなにやらゴニョゴニョと話し合ってる。
スタジアム中のざわざわ音がもう何を意味するのか誰もが理解している。
すると、案の定といった感じで、主審が例のお決まりのポーズ。
VARの発動だぁぁぁ~!!※6
(VAR確認中)
そうして、両手でモニターの形を作ると、マンCのゴールを指さした~。クソがぁぁぁ!!
そんな訳で、EPL第32節 リバプールSC vs マクレクター・Cの戦いは、前半の31分、鳴瀬神児のゴールが取り消しになり1-0に逆戻り。ガッテム!!
「ってか、俺はオフサイドじゃねーからな!!」
「んなこたあ、分かってる」
スタジアムのモニターを見ると、ジョコちゃんのパスを受けたモーさんがほんのわずかにラインから飛び出てる。
もう、これ、0.5点くらいくれてもよくないですかー?
すると、モーさんがやって来て、「なんか、ゴメンねシンジ」と、とってもすまなさそう。
いや、いいんですよ、モーさん、そんなに謝らなくて。そもそも、モーさんが二人を引っ張ってバックパスしてくれたからあのプレーがあったんで……
ってかさー、スローで見たらモーさんにパス出てる時点で既に線審が旗上げてるよね。
オフサイドディレイだかなんだか知んねーけど、もうちょっとスムーズに試合進行してくんねーかな。
これだったら、最初の線審のところで試合止めてくれた方がまだ全然マシだったわ。
VAR確認する間も結構時間かかったし……
そんな感じで、もやもやしたまま試合再開。
すると、案の定といった感じで、そのVARでの中断中にDF面での修正をすっかり済ませたのであろう。シティーが息を吹き返して来やがったのだ。
ったく、ちきしょうめ。こっちはすっかり体が冷えちまったわ!!
試合の流れってこういう所で変わってくるんですよね。(ブツブツ)
すると、何と言う事でしょう。ホーランドの奴が中盤まで降りて来て偽の9番をやり始めやがった。一体どれだけ引き出し持ってんだよ、このあんちゃん。ってか、ホーランドって南君の元チームメイトでしょ。なんか、もっと他にウィークポイントの情報とか無かったの???
そんな感じで、徐々に押され始めた前半の41分。
久々にインターセプトが決まったと思い、右サイドを駆け上がった瞬間、レブライネがそのボールを奪い返し戦況が一気にひっくり返る。あっ、ヤベ……
レブライネは奪ったボールをそのままダイレクトにDFラインの裏にロビング。
こちらの体勢が整っていないのを見越した上での縦ポン。ほんと厄介な事この上ない。流石は司が現役選手の中で最もサッカーIQが高いと言わしめる選手なだけはある。
「タクロー、行ったぞー!!」
だが、拓郎よりも一瞬早く落下地点に入ることに成功したホーランドはリバプールゴールに背を向けた状態からの胸トラップでボールを納めた。
まあ最低限、よしって事にしよう。そっから前向かれんなよ!!
だが、それすらも織り込み済みだったのか、なんと俺がマークしてたはずのグーリッシュがいつの間にかポジションチェンジで中央にいると、なんとホーランドと交錯した!!
いや、違う。ホーランドが拓郎の体を押さえ込んでのスクリーンアウト。
やばっ、典型的なスイッチプレーだ。
一気にラインブレイクに成功したグーリッシュ。だが、まだゴールまで距離がある。
俺も一気に内に絞り、拓郎はホーランドをケアしながら……って、「拓郎、無理すんなー!!」と声を出したが、時既に遅し。
ピッチを劈くような審判の笛の音が鳴り響いた。あっちゃーマジか……
なんと拓郎は、ホーランドを引き剥がすと、自分のミスを取り戻そうとグーリッシュとの距離を一気に詰めるも、最後は足を引っ掛けて倒してしまったのだ。
ヤバッ、もしかしてDOGSOか……コレっ!?!?
目の肥えたKOP達も今の拓郎のファールのヤバさを理解してか、不気味なほどに静まり返る。
ってか、本来ならグーリッシュもあんな簡単に距離を詰められるわけない。
これってもしかして……すると、「ああ、狙われたな」といつの間にか隣にいた司。
緊張の一瞬、すると審判の胸から出されたカードはイエロー。
ふーっと思わず安どのため息をする俺と司。
だが、そのイエローに納得いかなかったのがシティーの選手達。
審判に詰めかからんとばかりに抗議する。ってか、そんなせこい事考えないで、素直にゴール狙った方がよかったんじゃねーの?
「まあ、ホームアドバンテージって奴か。命拾いしたな」と口元を引きつらせながら司。
「確かに向こうのホームだったら赤だったかもな」と俺。
テクニカルゾーンを見ると茹タコの様に顔を真っ赤にして抗議するグアルディオルさんと、ふーっと安どのため息をするクラップ監督。
うん、明暗がくっきりと分かれている。
ってか、そんな余裕をぶっこいている暇は無い。
あんまり熱く抗議し過ぎてカードでももらったら割に合わないと、どこまでも冷静なキャプテン、ケビン・レブライネがみんなを宥めてポジションに戻すと、当然のようにボールの前に立つ。
そう、イエローで命拾いはしたが、ゴール前25mでのFKを与えてしまった我が軍。
相変わらずピンチなのには間違いない。
この距離なら何度も決めているのを俺達は知っている。
そして、その横に立つグーリッシュ。コイツのFKも十分脅威に値する。ってか、この野郎の事だから、自分が取ったFKだってんで、レブライネよりも先に蹴るかもしれない。
正直、レブライネに決め打ちするのは危険だ。
「なあ、司、どっち跳ぶ?」と壁に入った俺は、隣にいる司に聞く。
「わからん!!最後まで気を抜くな」と目を皿のようにして司。
おそらく、最後の瞬間までしっかりと見極めるつもりだ。
すると、「司、お前が跳ぶ合図をしろ」とダンク師匠。
「分かりました」と声だけ返事して顔は微動だにせず。
ああ、コイツ、ゾーンに入りやがったな。
すると、妙な安心感が壁の中にいるリバプールの選手達に伝わっていく。
こうなった状態の司ならもう間違いやしない。
それでもし決められたのなら、蹴った方がすごいのだ。
既にリバプールの選手達からそのような絶対的な信頼を得ている司。
このFKは決められないな。
何とも言えない確信めいた予感がリバプールの選手達に伝播する。
するとその時、審判が笛を吹いた。
と、同時にグーリッシュが走り出す。
「まだまだ」
グーリッシュがそのまま走り抜ける。
やはり本命はレブライネ。
さらに念には念を押してボールを蹴る前にワンフェイク入れるシティーのキャプテン。
「今だっ!!」
司の合図で全員が跳んだ。
レブライネは壁の中央にいたダンク師匠と拓郎の上を狙って来た。
やはり、右足のインフロントでゴール右隅を狙うにはそこしかない。
だが、完璧なタイミングで跳んだ拓郎とダンク師匠の上からボールを落とし枠に入れるなど、全盛期の俊さんですら針の穴を通すかの如くの至難の業。
すると当然のようにボールは落ちきらずにゴールポストの上を通過していった……
安堵のため息が漏れるTHE KOP。
さぞかし、レブライネも悔しかろうと表情を見てみると、まるで何かを確信したかのような余裕の笑みを浮かべていた。
※6、X JAPANの『紅』な感じでよろしく。(ハート)




