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魔法試験

 あの決闘から早三年。エレンガル学園に入学することになった。学園では剣術も魔法も学ぶことができ、多くの貴族の跡取りや子孫たちが入学する。

 学園は全部で六年。進級できなかったり退学処分になったりしない限り卒業すれば簡単に職につくことができる。

 俺が入学すると同時にジークは卒業し、剣術の成績を買われて騎士団に入団した。俺との決闘に負けてから狂ったように剣をふるっていたらしい。執念だけは俺よりもすごいかもしれない。

 ハルトは未だ在学中だが、剣術の成績はトップレベルのようで学年を支配しているとかなんとか。ただし魔法の成績は圧倒的最下位なので周りの評価は伸び切っていない。


「さて、それじゃあ行ってくるよ」


 入学することになったといってもまだ試験が残っている。ジークやハルトが入学できたので不可能ということはないが、ここでも問題がある。

 あまりに実力を出し、その差を見せてしまうと周囲は恐怖することになる。底の見えない強大な力に怯えない存在はなかなかいない。つまり、ほどほどに抑えながらも上位陣に食い込んでコネを作らねばならないのだ。

 この三年間、俺は世界平和を成し遂げるために何が必要かを考えた。世界はこの王国だけでなく、公国も共和国も存在する。それらを統合させ争いをなくすことこそ世界平和なのだ。

 つまり最初にこの王国・ラグナロクで権力を手にしなければならない。王国で最も権力を持つ存在……王族に。


「では、行ってらっしゃいませアレク様」


 屋敷の前には俺が雇いなおした数多の使用人が並んでいた。グレンハルト公爵家に仕えていた彼女らは中世から使えていたわけではなく、俺が別邸を買うと分かれば全員がついてきてくれた。

 セレナが来ることは分かっていたし遠慮するようなら強制しようかとも考えていたのだが、料理人一行も来ることになるとは思わなかった。

 剣聖、大商人時代のお金が有り余っているのでまったくもって問題はないのだが、そこまでグレンハルト家本邸が嫌だったのだろうか。

 思考しながら学園に向かって歩いていると、気づけばがやがやとした正面門にたどり着いていた。

 俺が剣聖時代に建てた学園……なんだか懐かしいな。まさか自分が貴族の子息となり通うことになるとは思ってもいなかったが。


「受験生はこちらの会場においでください!」


 教師の誘導に従いながら、俺達受験生は試験会場へと向かった。

 最初は魔法試験との事で、離れた位置に設置されている宮廷魔術師複数人が防御魔法をかけた的になんでもいいから攻撃魔法を当てるというものだった。

 詠唱の正確さ、発動の速さ、魔力精度、そして威力の四つの評価ポイントが定められている。この後は剣術試験も控えているので魔力を全て使い切って魔力切れを起こすような真似はできない。そんな考えから魔法試験の点数は毎年まぁまぁで落ち着いているらしい。……この世界の魔法技術が落ちていることも関係しているが。

 だって詠唱とかしてるのだ。魔法とはイメージの具現化、詠唱はそれを手助けするものだったが、戦場に立つなら無詠唱を会得するのは必須事項だった。しかし今は王国軍に配属されている魔法使いはほとんどが無詠唱を会得していない。

 これなら試験で主席を取ることだって容易いだろう。それでも、宮廷魔術師の防御魔法がどれほどの威力に耐えられるかを見極めねばなるまい。


「次、アリア・ラングフォード・ラグナロク王女殿下!前へ‼」


 お目当ての生徒が現れ、俺は試験を受けている女子生徒に視線を向ける。亜麻色の長髪をたなびかせながら、アリア王女殿下は的と直線上にある位置に立つ。

 俺の今世の目標である世界平和を叶えるためには俺がラグナロク王国の国王になる必要がある。王位継承権のある人物は今現在で四名。しかし視線の先にいるアリア王女殿下に王位継承権はない。

 ならば俺が彼女に取り入りなんとかして王位継承権をもらうように協力してもらう。それがこの三年間で考えついた作戦だ。

 王族に舐められないよう、取り入れられやすいよう学園で主席となる事も考えている。主席になるのは簡単だが周囲から恐れられない程度に抑えるのは大変だが。


「紅蓮の種火よ、狂い咲け。——『火球ファイアーボール』」


 アリアが詠唱を口にすると、魔法陣が空中に浮かびあがり、火炎が凝縮されていく。火炎はやがて丸みを帯びていき、一直線に的に向かっていく。

 轟音を炸裂させて的に直撃すると、煙が霧散して視界一杯に広がる。先ほどまでの受験生よりも格段に威力の高い魔法を放ったアリア王女の事をじっと見つめる。

 周りの受験生は「流石王族!」と盛り上がっているが、先ほどの威力でも的には傷一つついていない。防御魔法を破ることは至難の業ということだろう。

 先ほどの魔法は高得点だろうし、確実に首席を取るのならあの的を破壊するべきだろう。


「次、アレク・グレンハルト!」


 名前を呼ばれ、俺は的の前に立つ。さて、どの魔法で的を破壊してやろうか。俺であれば、誰も扱えない時空魔法も奪われしロスト魔法すら発動できる。

 しかしこれまでの魔法を見ていればどれも低級魔法ばかりで、どれだけ精度を高くできるかの試験になってしまっている。ならば俺もそれに応えようではないか。

 ニヤリと笑みを零して俺は火球を九つ顕現させた。驚くべき所業に、受験生だけでなく試験監督すらも目を見張った。だがそれだけで終わらせる気はない。


「炎とは……温度を高め最大限まで熱すれば赤ではなく青い炎となる。そうだな、『蒼炎そうえん』とでも名付けておこう」


 そこで俺は指をパチンと鳴らして蒼炎を的に放つ。火球とは比べ物にならないほどの威力をたたき出し、煙が勢いよく広がる。

 流石に煙が舞いすぎていたので、風魔法を発動させて煙を霧散させる。煙を霧散させるとその場の者の視線は的に釘付けになる。


「なっ……これは……⁉」


「信じられない……‼」


「っつーか詠唱してなかったくないか……?」


「はぁ⁉無詠唱ってことかよ⁉それであの威力って……本当に何者なんだよ」


 蒼炎は的を粉々に粉砕しており、宮廷魔術師の防御魔法すら破ることに成功していた。その威力に受験生は目を見開き、試験管はあり得ないと言った様子で俺を見ていた。

 そりゃ、宮廷魔術師の重ねがけた防御魔法を正面から破り、主流となっている詠唱を破棄している無詠唱で魔法を発動したのだ。

 さて、次は剣術試験に移るか……。


「アレク・グレンハルト……彼は一体……」

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