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剣術試験

 魔法試験を終わらせ、俺たちは剣術試験の試験会場へと移動してくる。頑丈な石で作られたリングには試験官と思われる男が木剣を持って立っている。どうやら剣術試験は模擬戦らしい。

 それにしてもあそこに立っている男、いかにも自信満々って感じがするが、それほどまでに強いのだろうか。ジークよりも少しだけ強いってくらいな気がするが……。


「いや、ジークもあれで剣術の成績はトップクラスだったか……。魔法も剣術も落ちたものだな」


 嘆息付きながら呟くと、剣術試験が始まる。どれほど剣を扱えるか判断するために男は本気を出していない様子だ。それでも男に手傷を負わせるものは中々現れず、魔法試験でいい結果を残したものは剣術の才はあまりないのか一瞬でケリが付いた。


「や、やっぱ強いな……」


「あぁ、王国騎士団なんだから……まだ学生にもなってない俺らが勝てるわけないだろ?それどころか、攻撃を当てる事すら……」


 後ろに並んでいる者がそんな会話をしたとき、会場がわっと湧いた。視線を向けると、そこには一人の受験生とわき腹に木剣を当てられた王国騎士団がいた。

 これには今まで一撃も与えられなかった受験生が盛り上がりを見せる。しかし、そこでじっと男を観察している女を見つけた。

 赤髪のサイドテール。可愛らしい顔立ちだが背丈からして受験生という訳ではなさそうだ。それにこの状況にあの反応……。

 フッと笑みを零し、受験者番号を呼ばれた俺は舞台に上がる。

 先ほど受けた傷をポーションで癒した騎士は合図があるとすぐに構え、俺と模擬戦を始めようとする。だが端から俺の眼中にこの男はいなかった。


「フッ、先ほどは油断したがもうそうはいかない。これからはお前たちを受験生ではなく一人の騎士として相手をしてやる」


「本気で(のぞ)もうとしているところ悪いんだが……」


 魔力を脚に集中させ一気に加速、男の目の前まで迫ると男の身体を蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた男は壁に激突した後意識を失いがくりと倒れる。


「——お前の事なんか眼中にないんだ」


 俺が騎士団の男を蹴り飛ばし気絶させると、観戦している受験生がざわざわと騒ぎ始める。


「な……今何が……」


「ぐ、グレンハルトの奴が何かしたのか……?」


「あ、あんな速さ……」


 さて、このままでは受験生たちは俺という存在に恐怖心を抱いてしまう。だから……あの女を利用させてもらう。

 剣先を女の方に向け、まるで立ち会えと言わんばかりに堂々とする。この女はこの男よりも確実に強い。それこそ男の剣術の熟練度(じゅくれんど)が十四相当だとするとこの女の剣術の熟練度は十七はある。


「それは……なんの真似だ?」


「試験官が何故か倒れてしまったので、あなたが相手をしてくれないかと。どうやら、この男よりも強いようですし」


「……私が何者か知っていて剣を向けているのか?」


 女の口ぶりからして、名の知れた戦士なのかもしれない。だが自分の名声だけを気にしていた俺は世情に疎く、正直王族以外はほとんど知らない。

 昔ちょこっと関わっていた貴族が没落しているかどうかすら分からないのだ。騎士団やら冒険者やらを一人一人覚えておくことなど出来はしない。

 女の正体を知らない俺だったが、注目を浴びてしまっているらしく受験生たちは皆女に視線を向ける。彼女の正体を知っている者がいれば良いなと思っていたのだがどうやら彼女は有名人……この場は彼女の事を話す受験生で溢れる。


「な、なぁ……あれって剣聖(けんせい)様じゃないか……?」


「な、なんでこんなところに……?」


「それよりもあいつ、剣聖様に挑むつもりか……?」


 どうやら、彼女は剣聖と呼ばれているらしい。確か今の剣聖は三十六代目……セリア・マーガレット。若くしての天才、初代剣聖の生まれ変わりと言われているらしいが、初代剣聖は俺なのでそんなことはない。

 それに、初代剣聖の実力を知る者はそういない。数千年前の話だし、彼女が当時の俺程の実力を誇っているのなら、戦争などとうに終わってラグナロク王国が世界を統一している事だろう。


「私はセリア・マーガレット。剣聖と呼ばれているが……お前はそんな私に挑むというのか?」


「えぇ。剣聖様直々に評価を下してくれないかと」


「お前の実力は十分に評価された。これ以上評価が必要だとは思わないが?」


 今までの受験生が叶わなかった騎士団に俺はいともたやすく勝利した。確かにこれ以上の試験は必要ないだろう。俺だって、試験評価をもらうことはどうでもいい。剣聖に喧嘩を売っているのも俺がこの国で成り上がるために必要なことだから行動しているに過ぎない。

 受けてくれないというのなら俺から踏み込むだけだ。それで入学拒否されればまた別の手を考えればいいし、何より学園の重鎮は俺の事を認知するはずだ。それだけでも大きな収穫と言えよう。


「俺は俺の実力を知りたいのです。自分の剣技が、あなたにどれだけ通用するか。剣聖様だって、興味があるんじゃないんですか?……強者の存在は」


「……面白い。自分で自分を強者と豪語するか。なら私直々に手合わせをしてやろう」


 リングに上がり木剣を手に取ったセリアは剣を構える。強者とは相対しただけで分かるが……こいつ、中々強いな。確かに、今の時代で生きていれば剣聖と呼ばれるほどの実績を得ることが出来るはずだ。

 初代剣聖……つまり俺の全力には手も足も出ないと思うが、当時の実力者とはいい勝負が出来るのではなかろうか。まぁ、俺の全力となると魔法でドーピングしてるから手も足も出なくて当然なんだけど。

 ——それじゃあ、初代剣聖と現剣聖の勝負を始めようか……。

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