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決闘

 ジークとハルトと模擬戦をすることになりその日を迎えると、庭にはニヤニヤとした表情を浮かべながらこちらに視線を向ける二人の姿があった。

 彼らはどちらも剣術系のスキルを授かっている。熟練度でいう所の十に届くかどうかといった所だ。

 王国騎士団の人たちの熟練度は最低でも十二はあるので彼らに手こずることはない。こちらは二回の人生で熟練度二十に達した実力を誇っているのだから。


「よぉアレク、やられる準備はできたか?」


「……さぁね」


 ため息交じりに言葉を返すと、沸点が低いハルトは目に見えて怒り出した。

 ジークは己の勝利を確信しているのか、フロストに媚びを売っている。完全な実力主義者のフロストに媚びを売ってもどうにもならないと思うが。

 どうやって勝利をおさめるか未だに考えついていない俺の前に、フロストはずいっと現れた。


「アレク、忘れているわけではあるまいな。この勝負に負けた瞬間……お前は即刻この家を去ってもらう」


「構いませんよ、父上。代わりと言ってはなんですが、私が勝てば兄上たちのように学園に通う事を認めてください」


「その程度であれば構わん。二人を相手に勝てるという事はそれほどの実力という事だからな」


 これで俺は学園に通うことが出来る。世界平和を達成させるため、俺は学園で卒業する必要がある。

 どんな所であろうが、学園を出ていない者相手に貴族は取り合ってくれない。

 しかしジークたちが通っていた学園であれば王国最高峰(さいこうほう)であり卒業するだけで大きな実績となる。


「では始めましょうか、兄上」


「ッ舐めやがって……‼」


 俺は木剣を手に持ち、くいくいと二人を煽る。騎士を志すのならばこんな煽りに乗っかってはいけないのだが、今まで従順だった無能が粋がっていれば冷静でいられないのも無理はない。

 まんまと挑発に乗せられたジークたちは試合開始の合図を急かすように審判をキッと睨みつけた。

 わざと焚きつけて二体一の状況を作ったまでは良いが、ここからどのように勝利するかはまだ全く決められていない。

 まず俺の生活習慣を知っているフロストは剣術が出来るとは思わないだろう。剣術の稽古はしていないし、把握していないのは俺が王都にいる時に何をしているかという事だけだ。

 となるとするべきは魔法での勝負。フロストの中で俺の学力がどうなっているかは分からないが、少なくともジークやハルトよりも学力があると感じられているのは間違いない。

 そうでなければ交渉の余地なく俺は追放されていただろう。俺が今決闘することを許されているのはフロストから見て俺に利用価値があったからだ。

 実力主義のフロストから見て俺に利用価値があったのだから、交渉の時の文言から察するに頭脳に目を付けていることは明白。魔法というのは知力に結び付くところがあるので俺が扱えてもおかしいと思う事はないだろう。

 俺の人生で最も力を入れたのは魔法だ。一世で転生魔法を開発し、熟練度に関しても限界突破して最早人間の域を越しているとアテナにも言われた。

 ならば接戦を演じるなど俺にとっては簡単なことだ。心配事など万に一つも……いや、そういえば一つだけ心配なことがあったのを思い出した。

 俺が最後に魔法をしっかり使ったのは数百年前。あの頃より魔法はかなり衰退している。手加減を忘れたわけではないが、もしかするとやり過ぎてしまう事があるかもしれない。


「……ま、別にやり過ぎたってかまわないか」


 今の俺の目的はグレンハルト追放から逃れること。そしてフロストの興味を買いすぎない事だ。

 世界平和という目標はフロストの考えとは相対するものである。フロストの興味を買って近くに置かれては行動がしづらくなる。

 フロストの興味は買わないがグレンハルト公爵家の庶子として行動を許されるレベルに抑えなくては。


「そ、それではジーク・グレンハルト様並びにハルト・グレンハルト様対アレク・グレンハルト様の決闘を行います!」


「あぁ、お前には一度教え込まないといけないと思ってたんだ……。二度と俺たちに逆らえねぇようにしてやる……‼」


「そういう口頭での決闘は間に合ってますよハルト兄上。口だけの愚か者になりたくなければ今すぐ口を閉ざすことをお勧めしますよ」


「こいつッ……‼」


 相変わらず俺からの煽りに弱いのかシンプルに沸点が低いハルトはずいっと一歩踏み出したが、ジークがけん制するように手を広げる。


「落ち着けハルト。僕たちが負けることなど万に一つもないが、冷静さを失えばアレクの醜い顔も記憶に刻めないだろ?」


 それは投げかける言葉として合っているのかとツッコみたくなったが我慢して魔法の行使に問題がないか確認するために掌から軽く炎を出す。

 その炎の小ささを笑ったのか。魔法自体を笑ったのかは分からないが、ハルトがやけにニヤニヤしている。


「誇り高きグレンハルト公爵家の人間が剣を捨てて魔法に逃げるとは!恥をさらすのも大概にしろ!」


「でもさ、戦場で剣術にこだわって魔法に一切の手を出さないってのは間違いじゃないかな?そもそも、グレンハルト公爵家の人間が剣術にこだわるのには理由があるんだよ。ま、初代当主が馬鹿で魔法を扱えなかったって言う簡単な話なんだけど……兄上たちだって魔法は苦手でしょ?頭が弱いから」


「ッ⁉こいつッ……⁉」


 ちなみにこれは本当の話だ。アテナからの祝福で剣術の熟練度が上がったことも理由の一つには会ったが、グレンハルトは驚くほど魔力運用を苦手としていた。

 先ほども言った通り魔法とは知力と関連付けられるものがあり、言うのは憚られるが頭の足りていないグレンハルトに魔法は扱えず魔法の道を捨て剣術の道に走っていった。

 それが今では美化されて剣術の道で成り上がるために魔法を捨てたと美談とされているのだから面白い。


「そ、それでは……始めッ!」


「うおおおおおおおおおっ!」


 審判が合図した瞬間、ハルトが勢いよく地を蹴って剣を振りかぶる。剣術の熟練度関係なしに身体能力を魔法で数倍に引き伸ばしている俺からすれば遅いにも程がある。

 体を傾けることでぎりぎり回避し、木剣に炎を纏わせてニヤリと口角をあげる。


「さぁて……どうやって料理するかな?」

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