蒼炎
「……やはりこの程度か」
人類が恐れた神だというから期待していたのだが……完全な復活を遂げられていない今俺の敵ではなかった。
神の血が薄くなっていたのか、そもそも血が足りなかったのか。確かに今の時代の人類では敵わないだろうが……俺はその枠組みには入らない。
「グオォォォ……!」
片腕を失ったディザイアがもう片方の腕を振り上げる。拳の先には魔力がこれでもかとたまっており、並みの防御では受け止めきれないほどの威力を誇っていた。
結界で防ごうとしたが……やめだ。ディザイアの懇親の一撃をただ防御するだけでは興に欠ける。
魔法剣を解き、俺も自身の拳に魔力を集中させる。やがて拳を蒼い炎が纏い始め、その炎がアストラルの森深層の全域を覆いつくす。
「残虐神・ディザイアよ。お前との闘いは中々面白かったぞ」
「ガアァァァァァ!」
自我を持たぬ怪物は、力の限りで俺を仕留めようと魔力をぶつけてくる。
それらすべてを跳ね返す勢いで、アストラルの森深層全域を覆いつくす蒼炎を圧縮させ……放つ。
「ふんっ!」
圧縮したすべてを焼き尽くす光球がディザイアの拳とぶつかる。
ディザイアはこんな攻撃なんかすぐに跳ね返して攻撃を俺に届かせるつもりだったのだろう。だけど、そんな未来は訪れない。
光球がディザイアの腕まで届いたかと思えばぶちっと音を響かせながら腕をえぐり取った。
「こい、魔法剣」
ディザイアの腹元まで跳躍すると、手元に魔力を凝縮させて剣の形を作る。
そのまま剣を横に薙ぐと、ディザイアの身体はまるで最初からそうであったようにいとも容易く二つに斬れた。
神の力なのか、胴体を二つに分けてもすぐには死ななかった。だがこの状況であればもう打つ手はないのか、魔力をためる様子も攻撃する様子もない。
「ふむ、一体だけであれば簡単に処理ができるが……複数体同時に現れたら厄介だな」
ぽつりと呟いて、この後どうするか全く考えずに走ってきたので全くノープランだったことを思い出す。ひとまずアリアとローズを迎えに行くべきだろうか……?いや
だが、騎士団がまだ森の中にいるしな。
というより、先ほどの異変のせいで騎士団は避難している可能性がある。
「ま、普通に王女の元に行くのが先決か……」
アストラルの森にいるであろう騎士団は放っておいて、先に学園に戻ることにした。
学園に戻ってくると学園にいる生徒は騒然としていた。
先ほどの揺れは何だったのか、ここにいても感じる魔力の奔流は果たして大丈夫なのか。言ってしまえばもう終わった話なので何の問題もないが、アリアたちを探す方が先決なので放置することにした。
「あ、あんなの……一体どうすれば」
「ひとまず……陛下に知らせなくては、でも伝えたところで、あんなの」
空き教室に二人の魔力を発見したのでそのまま扉を開けたが、こちらに気づかないほどに絶望しきっていた。まぁ、あんなのを間近で見たのだから戦意喪失は当たり前かもしれない。
二人の意識をこちらに向けるため、分かりやすくこほんと咳払いすると二人ともこちらを振り向く。
「え……?なんで、ここに」
「これは、幻覚、でしょうか……?アレクさんが生きていてほしいという私の願いからできた幻覚……?」
「勝手に殺すなよ……ちゃんと生きてますって」
ぽんとアリアの肩に手を置くとアリアは目をうるうると潤ませて涙を流しながら背中に手をまわして抱き着いてくる。
初めてできた友達ということなので、生きていて嬉しかったのだろう。といっても、ここまで心配してくれていたとはかなり好感度が高い証拠ではないだろうか。
この調子なら、婿入りするのも難しくはないのでは。
「それでっ!あの敵はどうなったんですか⁉急いで迎え撃つ用意をしないと……⁉」
「あぁ、それならもう討伐済みですよ」
「「……へっ?」」
ぽかんと声をあげる二人。俺がここにいる時点で、ディザイアを討伐していないとおかしいってのに。
「こう、胴体を真っ二つに斬って」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉」
学園中に、そんな二人の驚愕の声が響き渡った。
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次回はなんと最終回!更新は7月29日18時頃を予定しています!




