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11回目の人生は悪役貴族の息子でした〜かつて大賢者や剣聖だった俺、今度は公爵家の放蕩息子に転生して圧倒的に無双する〜  作者: 霧山鬼灯
第五章

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残虐神・ディザイア

 台地が揺れる。まるでこの世のものとは思えないものが発する声に背筋が伸びる。


「あぁ……アレク・グレンハルト。お前も見るといい、神が再びこの世界を支配する瞬間を」


 心臓を握りつぶしたはずのアイズは痛みを感じていないようにフッと笑っている。


 さすがの俺でもそんな姿は不気味だと思う。なぜ死なないのかはまったくもって分からないが、まさか痛みも感じていないというのだろうか?


「お前は一体何者なんだ?王女にけしかけたオーガを退けるどころか討伐してしまうなんて」


「ただの学生だ、今はな」


 ここで妙なことを言っても理解は及ばないだろうし無意味なことだ。


「そんな事より、お前は一体なんだ?なぜ心臓を潰されても平気でいられる?」


「そんなの、簡単な話だ。……俺は今、復活前の神から魔力を受け取っている、生命を捨てた魔力体だからだ」


「魔力生命体……なるほど、そりゃあどんな傷を負っても大丈夫なはずだ」


 肉体を維持するのに必要なのは主に二つ。肉体と内包される魔力だ。


 だが魔力が大きすぎる場合、魔力だけで肉体維持が成立してしまう。普通は魔力が少ないせいで血液不足だけで死に至る可能性がある。


 しかし魔力が多ければ血液なんかも必要なくなる。簡単に言えば魔力の供給さえ止まらなければ生きていられるのだ。


 だが魔力は常に消費されやがて死に至ってしまう。俺ですらそんな芸当は不可能だ。

 こいつが神と呼ぶ存在……それほどまでに常軌を逸した存在だとでもいうのか。


「それで?お前はこれからどうするつもりなんだ」


「別にどうもしない。何もしなくとも、この世界は崩壊の一途をたどっていく。たった今復活した残虐神ディザイアによって!」


 アイズの声に反応するように、その存在は産声を上げる。大気を覆いつくすほど強大な魔力を孕ませながら耳に届くその声は、世界の終焉を告げるようにとどろいた。


 アリアやローズは、敵うはずがないと戦意喪失してただ怯えるように震えている。


 そんな中で、俺の様子を見たアイズが思わず瞠目していた。


「なんだ、お前……どうして、この状況で笑っていられる⁉」


 アイズに指摘されて、俺は自身の口を確認するように片手で覆う。口角は上がっておりこの場にそぐわない形になっていた。


「あぁ、本当だ……笑ってるな。なんでだろ、楽しみなのかな?これまで、俺が全力でぶつかれそうな相手っていなかったから」


「お前……神を前に、頭がおかしいんじゃないのか?」


 正気を疑うようにこちらを見てくるアイズ。そんな視線を無視して、アイズがディザイアと呼んでいた神を見る。


 この大きさからして、被害はとんでもないものになってしまうだろう。それにこの溢れ出る魔力……近くにいるだけで精神に大きな影響を及ぼしてしまう。


「あ、れく様……?」


「すまんが、ここはちょっと俺に任せてくれ」


 アリアとローズの肩に触れると、転移の術式を起動する。学園にでも飛ばしておけば誰かが守ってくれるだろう。生憎と、彼女らを守ってこれの相手をするのは厳しそうだ。


「それに……邪魔が入らない戦いの方が面白いからな」


 にやりと不敵な笑みをもらし、手元に魔力を凝縮させる。魔力が圧縮され、固まり、やがて一本の剣となる。魔法剣と名付けたそれは、かつて俺が開発した俺だけが使える武器だった。


「さぁ……残虐神ディザイアよ。共に踊ろうか」



 なんなんだ、なんなんだあいつは。


 目の前で、かつて人類を支配下に置いていたとされる神と一人の人間が互角に争っている。

 ……いや、互角ではない。誰がどう見ても、人間が神を上回っている。


「ありえん……神だぞ?人類が勝てないと、希望を捨てた相手に、なぜ奴のような学生が……⁉」


 かつて世界を救った英雄のような存在が神と互角に渡り合うのならまだ分かる。だが奴はただの学生で、公爵家の庶子だ。そんな力を有しているはずがない。


 かつてこの世界にもいくつかのイレギュラーは存在していた。


 人間の身でありながら様々な魔法を生み出した大賢者、誰にも負けない剣を誇っている初代剣聖。

 その後も、妙に力を持った存在が生まれていたのだ。


「なら、奴もまた……イレギュラーとでも言うのか……?」


 だけどそうじゃなきゃ説明ができない。神の血を引いていない公爵家の庶子ごときが、神に太刀打ちできるはずが……。


 そこで、ハッと息をのむ。もし奴が神の血を引いていたとしたら……?


 グレンハルト公爵家はかつてより実力主義で有名であり数多の実力者を輩出してきた。それが神の血の力によるものだとしたら、すべてに説明がつく。


 大賢者や剣聖も神の血を引いたものだとされているが……大賢者の血を引く者の血と魔力は既に回収済みである。


 あとは剣聖の血と……グレンハルト公爵家について調べなければ。


 ディザイアが目覚めた今、そんなことをせずとも世界を陥れられると思っていた。それなのに、目の前の男は心底楽しそうに攻撃の打ち合いに応じている。


 この勝負の行く末を見守らずに俺は俺で行動に移っていた。

最後までお読みいただきありがとうございました!もし「面白い」「続きが気になる!」と思ってくださったら、ページ下部にある【ブックマークに追加】と、評価の【☆☆☆☆☆】をポチッと押して応援していただけると、執筆の凄まじい励みになります!

次回の更新は7月28日18時頃を予定しています!


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