アストラルの森での模擬戦
派手な魔法をかました後はぽかんとする生徒たちを置いて俺は的の前から離れた。
戻ってくる俺の事を疑うものも少数いたが、大半が先ほどの魔法について信じ込むしかなくなり一歩引いた場所から俺を見ている。ただ一人だけ、戻ってきた俺の事を出迎える女がいた。
「素晴らしかったです、アレク様」
「いえいえ、王女殿下にお楽しみいただけたのであれば幸いです」
「えぇ、実に面白いものを見させていただきました。それにしても、素晴らしい魔力を持っていますね。私が真似しようとしたらすぐに魔力が尽きてしまいそうです」
「私で良ければいつでもお教えしますよ」
「ふふっ、ありがとうございます」
胸に手を当ててお辞儀するとアリアはくすりと微笑むが、負けず嫌いなアリアが素直に俺を尋ねてくるわけがないという事は分かっている。
この後に行われる模擬戦でうまく立ち回ることで今後の展開は大きく変わる事だろう。アリアの印象に残っていると分かったことだし本日のノルマは達成したと言っても良いが。
その後も生徒たちの的当ては行われていき模擬戦の班分けが行われた。もちろん成績上位の俺とアリアは別の班となり、成績上位の俺たちは成績下位の生徒たちと班を組むことになった。
振り分けられた班ごとに分かれると互いに自己紹介を済ませる。
「僕はワイト・ヴァイス。ヴァイス男爵家次男だ」
「私はレクシア。えっと、よろしくお願いします……」
「……アイズ」
「アレク・グレンハルトだ。よろしく頼む」
俺の正面に立っているワイト・ヴァイスは俺の自己紹介を聞いた後ぎろりと睨んできた。そこまで嫌われるようなことをした覚えはないのだが。
「調子に乗ってるようだが……庶子のくせにあんなことができるわけがない。君が何かずるをしていることは分かってるんだ。あまり大きい顔をしないことだな」
「ワイト・ヴァイス、だったか。俺がずるをしたかどうかはこの際どうでもいいが、仮にずるをしていたのならそれを見破れなかった君の実力はその程度だということではないか?」
「なっ⁉貴様……!」
「まぁまぁ、落ち着いてください!」
ワイトが詰めて来そうになったが、レクシアが慌てて止める。この後の模擬戦でギスギスしすぎないように仲を取りもととうとしているのだろう。
「それではこれより模擬戦を始める。模擬戦に使うのはアストラルの森だ。全チームが生き残りをかけて争う形式で魔物討伐も兼ねてもらう」
「アストラルの森の安全性は保障されてるんですか?」
アストラルの森というのは冒険者が良く魔物討伐で活用される場所だ。
アストラルの森は浅層、中層、深層の三層に分かれており未だ深層の最奥に辿り着いたものはいないという。ちなみに俺が魔物を研究していた前世や前前世ではアストラルの森の最奥で研究していた。
つまり唯一アストラルの森の最奥に辿り着いた人物なのだが、なぜかそれはあまり知られていないらしい。まぁ大賢者の住処が森の最奥にあると知られているのの印象が強すぎて残らなかったらしい。
「はい、今回はアストラルの森の浅層にて模擬戦を行います。それに学園の関係者や騎士の方が見守っているので魔物相手に危険になってもすぐに救助することができます」
「ほっ、それなら安心そうですね……」
隣でレクシアがほっと胸を撫でおろす。相変わらずアイズは無反応だが、魔物相手など慣れているのだろうか。
逆にワイトは余計なことをしないでくれと言わんばかりに教授を睨んでいる。まるで魔物相手に後れを取る気がないといった様子だ。
俺がいる時点でイレギュラーで深層の魔物が現れたところで討伐することができる。竜が出てきても問題ないし冒険者のランクもあげられて一石二鳥かもしれない。
「それではそれぞれ移動を開始してください。模擬戦開始の合図は私が魔法を打ち上げたらでお願いします」
教授の言葉によって、それぞれが移動を始める。例にもれず俺達も移動することになったのだが、ワイトがここぞとばかりに仕切ってきたのであまりいい気持ちはしなかった。
アストラルの森の浅層にて、俺たちは模擬戦開始の合図を見届ける。ここにいるのはほとんどが貴族であり冒険者経験がない者ばかりなので魔物相手でも後れを取ってしまうのではないかと心配していたのだが、どうやら杞憂だったようだ。ワイトを軸に上手く立ち回り対応できている。
どうやら俺の出る幕はないらしく、今の所やることがなくて退屈している。
「探知しても、付近には誰もいないしなぁ……」
特定の者を探すのであれば体の一部から魔力の特徴を押さえなければならないが、生命体だけであれば魔力を見るだけで判断できる。人間と魔物の魔力は大きく異なるので、もし生徒が近づいてきているのなら丸わかりという事である。
「……君も何かやってくれないか?ま、ずるしないと魔法を使えないような君に頼むのは酷な話かもしれないがね」
「いちいち俺に突っかかって来ては底が知れますよ?これはあくまで生徒同士の模擬戦であり魔物討伐は目的ではないので」
「ッ……こいつ」
「ま、待ってください!」
俺とワイトの間にレクシアが入ることでこの場は落ち着く。どうもワイトだけでなくレクシアやアイズの印象も悪くなっている気がする。
「……ま、別にどうでもいいけど」
ぼそっと呟いて冒険者ギルドに提出する用として魔物の討伐証明の部位をはぎ取っていくのだった。
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