他人との関わり
ゼノンの死体が地面に落下し、同時に俺も降下する。
「最強を語っていたが、やはり呆気なかったな」
あの魔法に全力をかけていたが、もしも俺が防ぎきっていなければ洞窟の崩壊でそのまま共倒れしていたことだろう。あの魔法を放った後はもはや体力の余裕などなかった。だから俺が何もせずとも勝手に倒れていたことだろう。
俺はただとどめを刺しただけで、ほとんどはゼノンの自爆ということだ。
あれを最強だと言ってしまえるのならば、やはりこの世界は退化しすぎたのだろう。もう少し後継を作っておくべきだったかもしれない。
アイリスたちがいる奥へと向かいながら、自分の子孫を残しておけばまだマシだったのかと思案する。今の世も全体的なバランスはとれているので決して悪いという訳ではない。
あまり出しゃばらない方が世のためになるかもしれない。
「あ、アレク様……」
奥の間にはアイリスだけではなく衰弱しきった狐人が大量にいた。このまま放置していれば命を失ってしまいそうな者もいる。
衰弱している理由は怪我からくるものではなく魔力不足からくるものだ。生物は最低限の魔力を保有することで命を保っていられるが、こいつらは魔力を最大まで吸われたせいで命の危機に瀕している。
「はぁ……あんまり出しゃばるのは嫌なんだけど」
今の俺はこの世界に存在するべきではない。たった一人だけで勢力図を変えることができ国を脅かすような存在だ。もちろん俺の目的にそぐわないのでそんな事をする気はないのだが、俺を畏怖する者が出てきてもおかしくはないのだ。
だが幸いなことに狐人は大抵が意識を失っているし、アイリスが余計な口を挟まなければ大丈夫なはずである。
魔力の消費量が激しい者から順に魔力を与えていき、取り敢えず応急処置だけは済ませておく。こいつらの集落は襲撃されたときのままだが、そこまで面倒を見るつもりもない。
狐人が狙われた理由を伏せつつ俺が救ったともなれば大賢者のように気を許す相手に認められるかもしれない。
恩着せがましいのは好きではないのだが、目的を達成するためならそれも致し方なしと思ってしまうのはおかしい事なのだろうか。
「ほらアイリス、しっかりしろ」
「アレク様ぁ……私、頑張りましたよぉ、えへへ」
アイリスの意識はうとうとしているようで、頭がこくこくと振られている。
ゼノンとの戦闘の最中、狐人の魔力が回復していたがアイリスはポーションを与えるだけでなく自分の魔力を差し出していたようだった。自分の魔力がどんどん奪われているのにもかかわらずだ。
俺程の魔力を持っていれば命の危険がないが、アイリスはそうではない。自らの命を危険にさらしてでも他人を助けたかったのだ。それはなかなかできる事ではなく、褒められるべき行動だ。
「頑張ったな、アイリス」
フッと笑ってアイリスの頭を撫でる。
「ふゅ……うぅ~」
情けない声を出すアイリスに苦笑しつつ、アイリスの先祖を思い出していた。なんだか、懐かしい気持ちになれる、こうして転生先であいつの面影を感じられるというのは。
これも誰かと関わる気になっていなければ味わえなかった気分だ。そういう面では、アテナに感謝しなければいけない。
今まで誰かと関わるのを避けていたが、こういうのも良いなと思えた。
※
元々は薬草採取をこなしていたので忘れないうちにギルドに冒険者報告に行かなければならない。オークを3体倒したことを報告すれば早く昇格できると考えたが、流石にオークを討伐したところで大して評価されないのが現実だ。
大物をいち早く討伐してくるのも良いが、まずは実績を積まなければいけない。こいつであれば不可能と思われていたことも可能かもしれないと思わせないといけないのだ。
人間は変化を嫌う。なので小さな変化を時間をかけて浸透させていくのだ、俺はまだ幼いので大人になる頃にSランクに到達していればいい。
それよりも今は学園での過ごし方の方が問題だ。どうやって王女に近づくか、それを考えない限り世界平和は達成できないと言っても良い。
アテナは他人ともっと関われと言うが、俺の今考えている策を実行する場合、やはり誰かと関わるのは得策ではない気がする。
「……はぁ」
これからどうすれば良いのか分からずため息をつく。いつもであればこのため息を気にして言葉を返してくる者などいなかったが、今は違う。俺のため息にも帰ってくる声があった。
「どうかしたんですか?アレク様」
あの後、狐人族にお礼をされてアイリスが俺についてくることになった。もちろん俺は断ったのだが、半ば強引に押し切られたのだ。ついてきたところで、学園には通えないし屋敷に住まわせるしかできることがなかったが了承の上との事だ。
一体、なんのつもりでついてきたのか本人に聞いてみた所「隣にいたかったから」らしい。意味が分からない、学園に通えさせられないと言った筈なので隣にいられないのは理解していると思ったのだが。
「言っとくけど、俺の屋敷に来るってことは他の使用人とも接しないといけないんだからな。ただでさえさっき好戦的だったのに……」
ギルドに薬草採取の報告に行った時、アイリスもついてきたのだがそこでベテラン冒険者とひと悶着あったのだ。
「あれは、あいつらがアレク様を馬鹿にするから……!」
「別に俺はなんとも思ってないし彼らは他人を貶していないと自己嫌悪に陥るんだろう。言わせておけばいいさ」
手を出されていたら応戦していたが、あの程度の言葉など俺には届かない。端的に言えばどうでもいいのだ。
というか、俺はグレンハルト公爵家の庶子なので馬鹿にされる機会は無数にあるのだが。その度にアイリスが暴走していては世話がない。
屋敷では大人しくしていてくれると非常に助かるのだが……そこはセレナたちに任せるしかない。
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