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11回目の人生は悪役貴族の息子でした〜かつて大賢者や剣聖だった俺、今度は公爵家の放蕩息子に転生して圧倒的に無双する〜  作者: 霧山鬼灯
第三章

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拠点の最奥

 錠剤を手にした俺たちは狐人族を救うべく足を運んでいた。


「それにしても不気味ですね……ただの洞窟だというのにこれほどまでに広いと」


「まぁ必要な分はくり抜いたりでもしたんだろ。拠点を作るうえで割とすることだし、土属性魔法であれば一瞬で終わる」


 相応の魔力が必要になるが、この錠剤に魔力回復のポーションがあれば数日で終わる作業であることに違いない。もっとも、俺の場合は数分で終わっていたわけだが。


 だが確かにただの拠点であるならばここまで広くする理由もない。なにか大規模な実験をしていれば話は別だが……大賢者の血を使って実験したい事でもあったのだろうか。大賢者の血はもうこの地には残っていないが。


 足音が洞窟内に響き、反射して耳に帰ってくる。どうやらそろそろ突き当りらしく、そこに捕えられた狐人はいる。


 しかしこの魔力反応……少しまずい状況のようだ。具体的に言えば、どんどん魔力が弱くなり生命力が失われて行っている。このままでは残り数十分で命を落としてしまいかねない。


「アイリス、行くぞ」


「はいっ!了解です、アレク様!」


 ぴしっと背筋を伸ばすアイリスに衝動的愛らしさを見出し癒されたところで、俺は一歩前へ足を踏み出した。

 そこには待っていましたと言わんばかりに準備万端にこちらを向いている一人の研究員がいた。もしかしてずっとその態勢で待っていたのだろうか、なんとも可哀そうな奴だ。


「待っているのはもっと屈強な男かと思ってたんだけど……奴らをまとめるにしてはひ弱そうな男だ」


「くく……ひ弱そうと言えば君だってまだ子供じゃないか、アレク・グレンハルト」


「ほぅ……?何故俺の名を?」


「それはもちろんアレク様が最強だからですっ!」


「アイリス、君は一旦黙っておこうね」


 笑顔でアイリスを諭すと、耳と尻尾がしゅんと垂れる。あとで慰めてやらないと。


 それより集中すべきは目の前の男だ。力は先ほどの奴らより圧倒的に下のはずなのに……何故か嫌な予感がする。こんな感覚は何度も転生を繰り返してきた俺でも初めてだ。


 一体、こいつは何を隠している……?得体のしれない正体に俺が警戒を強めている中、感知している魔力反応が段々と弱まっていく。


「アイリス、お前はこの先にいる狐人の元に向かいポーションで回復させろ。そろそろ間に合わなくなる」


「で、ですがアレク様は!」


「じゃあお前は……俺があんなのに後れを取ると思ってるわけだ?」


「っ……!失礼しました、私は先に向かいます!」


 俺の放った圧に負けたアイリスはすぐさまこの場を離れ、奥にある部屋に向かうために走る。彼女も狐人族、しかも族長の娘なのだから身体能力は著しく高い。普通の人間であれば捉えられないほどの速さだ。


 それでも目の前の男なら反応できる、そんな確信めいたものがあったが……どういうわけか、男はその場を動かなかった。


「驚いているようだね?僕があんな小娘に攻撃を仕掛けるとでも思ったかい?」


「まぁな、お前らはあいつの血を欲していた。だってのに、ここでみすみす逃すってのはおかしな話だと思ってな」


「ふふ、だとしたら君は勘違いをしている。ここで彼女を先に行かせたのは逃がすためじゃない。捕まえるためだよ」


「⁉そういうことか……」


 この洞窟には恐らく出口が1つしかない。そしておそらくここは最奥の間。ともなればアイリスが狐人族を助けたとしても脱出できないし、ここにいる限りいつその力が利用されるかも分からない。


 すべてはアイリスを捕まえるため。誰一人傷つけることなく捕らえたのは救える可能性を大胆に見せるため、魔力反応を徐々に減らしていくのは冷静な判断をさせなくするため。


 色々と考えられて作られた作戦である。アイリス一人だけならば、確かにその血がすぐに利用されてもおかしくはない。


 しかしここには、俺がいる。

 かつての大賢者であり、最強の剣聖が。俺がいる限り、少なくとも実力行使でどうこうできる問題ではないはずだ。


「お前には、聞きたいことがある。この薬を作ったのはお前か?」


 深紅の錠剤を男に見せつけ問いかける。俺が知りたいのはこいつが組織のトップであるかそうでないか、ただそれだけである。


「……残念ながら、僕ではまだその領域にはたどり着けない。だからこそ必要なのだ!大賢者の血を引くアイリス・オーネンの存在が!」


「つまり、お前よりも上の存在がこの薬をお前らに渡していると……」


 その存在がどうやってこの薬を作ったのかは分からないが、中々に面白い組織もいたものだ。この国で成り上がろうとしなければこのような集団を気にすることはないので知らなかった。


 もしかすると大分昔から存在していたのだろうか。大賢者うんぬんかんぬんを語っているという事は大分昔からいそうなものだ。今の王国では大賢者よりも剣聖の方が圧倒的に人気であり、大賢者の話をする者はあまりいない。


 大賢者は俺の初めての生とも言っていいので少々寂しい気持ちもあるが、剣聖が褒められているので気分は悪くなかった。


「さて、お前の上に誰がいるのか。洗いざらい吐いてもらうとしよう」


「舐めるなよ小僧。このゼノンが貴様を亡き者にしてやる。貴様の死体も、あの方の降臨の為の贄とさせてもらうよ!」


 奇怪なことを言いながら、ゼノンと名乗る男は剣に風をまとわせ突きを放った。

 突きの勢いでそのまま風の刃が飛んできたが、こんなのは剣で受けるまでもない。右手の人差し指で軽く受け止めると霧散した風で髪が揺れる。


 今度は風で体を覆い、追い風をつけて突進してくる。そのスピードは今までの男とは比較するのもおこがましいほど速く、もしかするとアイリスよりも速い可能性があった。

 三百六十度どこからともなく放たれる剣の側面を全て人差し指で弾くことで受け流す。これには流石のゼノンも驚いたようで、俺から距離を取ったがまだ戦意は消えていない。


「さぁ、もっと俺を楽しませてくれ」

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