新入生代表挨拶
入学試験を終えた数日後、クラスの内訳が発表されると同時に入学式が行われる。自分がどのクラス配属なのかを確認するために俺は一人で学園に訪れていた。
「にしても人が多いな……こんなに受験者がいるとは。そりゃあ倍率がとんでもないことになるのも納得だ。」
とはいえ俺には関係ない話だ。既に俺が首席合格していることは確認済みであり、新入生代表挨拶をすることも知らせられている。あとはクラスが王女様と同じかどうかで今後の動きやすさが変わってくる。
まぁ、たとえどんなクラスだろうと俺のやることは変わらない。
自分のクラスを確認しようと内訳表に向かっていく。既に多くの人がたまっていたが、俺がやってくると散らばっていった。
「なぁ、あれ……」
「確か学年首席の……」
「剣聖様といい勝負したらしいぞ……」
「やっぱ、流石グレンハルト公爵家だな……。それより下手に刺激しない方が良いぞ、こっちが何されるか」
「もう卒業したジーク様や4回生のハルト様は弱者には当たりが強いらしい……特に平民には」
「貴族の中の貴族って言われてるけど……正直俺らからしたらいい迷惑だな」
周囲からの反応が気になって会話を除き聞いてみたが、どうやらグレンハルトという家名が邪魔しているらしい。もっとマシな貴族に生まれていれば状況は変わったのかもしれないが、悪役貴族に転生してしまった時点で悔やんでも仕方ない。
そもそも俺はグレンハルト家の庶子であり家族にも家族らしく扱ってもらえていないのでグレンハルト家がどうのこうの言われても俺にはどうすることもできない。周囲が見てもそんな事を理解することは不可能なのだが。
人が離れていったクラスの内訳表の前に立って自分のクラスを確認する。剣術試験と魔法試験の成績を加味してバランスよくクラスを内訳ているらしい。だから剣術の腕、魔法の腕や全体の強さが丁度良くなるらしいのだが、俺の所為でクラス分けに頭を悩ませたらしい。
聞くところによると俺の事は完全無視してクラスを分けたらしい。いい感じにバランスが取れたところで俺を投入したらしいが……いくらなんでも俺の実力を買い被りすぎな気がする。恐らくセリアが何か言ったのだと思うが……いくら剣聖でも発言力がありすぎると思うのだが。
「王女様は……別クラスか。まぁ仕方ないっちゃ仕方ないな。見た所魔法試験は俺に次いで次席だったろうし」
学力試験、剣術試験、魔法試験は全て俺が首席で少々目立ちすぎてしまったかもしれないが、点数はかなり抑えてある。それでもやはり全試験首席というのは嫌な目立ち方をしてしまうらしい。
他に目立った生徒がいないかとクラスメイトの名簿を眺めていたが、周りに興味がなかったばかりに名前だけ見ても何も分からない。教室に集まるまで楽しみに待っていることにすることにしよう。
入学式が行われる講堂に行けば、そこは新入生と思しき生徒で溢れていた。クラスごとに整列しており、かなりの実力者が講師としてここに集まっている。
流石に王都一の学園と呼ばれるだけあるな。作ったのは俺だが、その後の運営は完全に任せっきりだったので少しだけ心配していたがまったく問題はなさそうだ。
「新入生代表挨拶——アレク・グレンハルト」
名前を呼ばれたので返事をして俺は立ち上がる。
壇上に上がり、普遍的な挨拶をしようかと思ったが……やめだ。それでは面白くないし初代学園長として言葉を残してやるべきだ。
とはいえ、印象的な挨拶とはどういったものなのだろうか。変な挨拶をして王女から避けられるような真似はできない。
「……さて、例年通りの堅苦しい挨拶はやめにしましょう。学園の伝統、歴史なんてのは俺が知った者じゃないですし、初代学園長はそんなの考えていないでしょうから。俺は学力、剣術、魔法すべての試験において首席を取りました。ですがそれは貴族だからなんて理由ではなく、女神の祝福が影響したわけでもなく、ただ努力したからです」
今世の俺の祝福は交渉だし、戦闘面では正直言って役に立たない。数千年の努力の末、俺は全方面において最強に至ることが出来たのだ。
ただ名声を得て俺の死んだ後の反応が気になるといった理由だが、努力は努力なのだから問題はない。アテナに頼るばかりで努力しないような貴族よりよっぽどマシだ。
「もし俺に勝てると思ったのなら、遠慮なく向かってきてください。平民だろうが貴族だろうが、真剣に勝負すると誓いましょう。——もちろん王族でも」
所詮俺が問題行動を起こしてもフロストは後ろ盾にはなってくれないだろう。ジークやハルトであれば一縷の望みがあったのだろうが……まぁ、こんな発言で不敬罪なんか取られたら他国で上り詰めるのも視野に入ってくるな。
ざわざわと生徒たちが騒がしくなっているが、俺がこの発言をしたのは王女様にアレク・グレンハルトをはっきりと認知させるためだ。
挑む者は拒まないが、悪いが負けてやる気はない。上級生が来ようとも同じ話だが、2回生に第二王子がいるので負けなければいけないのかどうか。
挑まれたときに考えればいい話なので今は新入生代表挨拶を終わらせることに意識を向ける。
「それでは、俺の言いたいことも言えたのでここらで終わりとさせていただきます。みなさんが入学したことで満足して無意義な時間を過ごさぬよう願っております。新入生代表——アレク・グレンハルト」
そこで一礼して、俺は元いた場所に戻っていった。
これから始まるのだ。エレンガル学園での生活と、ラグナロク王国における成り上がりが。
ちなみに、新入生代表挨拶で王族に喧嘩を売った貴族として名が広まってしまった。まぁ近い将来に本当に喧嘩を売るので言わせておけばいいだろう。
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