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【癒やし】蒼龍くん物語 〜小さな龍と学ぶ、心を調えるための「禅の智慧」〜  作者: 蒼龍 堅明
第3章:悲しみの咆哮・黒龍激闘編(第25~36話)

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第31話:敗北と絶望。蒼龍くんと「主人公に聞け」

完璧だと思っていた自信が、圧倒的な現実を前にして粉々に砕け散る。 そんな時、私たちは「自分はなんて無力なんだ」と、殻の中に閉じこもりたくなります。


傷つき、震える蒼龍くん。 彼を救ったのは、外からの助けではなく、自分自身の心の奥底にいた「本当の自分」でした。

玉座から立ち上がった黒龍は、ただ静かに片手を掲げました。

「慈悲など、弱者が縋る幻想に過ぎぬ。沈め」


その瞬間、言葉にする間もなく黒龍の手のひらから「絶望の奔流」が放たれます。

それは技というより、ただ純粋な暴力としての闇の塊でした。あれほど誇っていた蒼龍くんの「一志不退」の覚悟も、鋼のように磨き上げた「直心」の構えも、その奔流の前には紙屑同然に吹き飛ばされたのです。


「がはっ……!? あ、あああ……!」

全身を貫く衝撃。鱗は砕け、視界は真っ赤に染まりました。

城壁まで叩きつけられた蒼龍くんは、指一本動かすことができません。黒龍は一歩も動かず、ゴミを見るような冷徹な瞳で彼を見下ろしていました。


「……それが、お前の正義の限界だ」


黒龍のお目こぼしで命からがら逃げだした蒼龍くんは、飛び込んだ洞窟の奥隅で震えていました。

「無理だ……。あんなの、勝てるわけがない……」

かつての快勝の記憶は、黒龍の圧倒的な力の前に粉々に砕かれ思い知らされます。自分は選ばれた龍だと思っていた。でも、本当はただの未弱な小龍に過ぎなかった。


(もう外の世界なんて行きたくない。ここでずっと、隠れていたい……)

そんな時、ふと記憶の奥底から『主人公しゅじんこうに聞きけ』という玄龍さまの言葉が浮かびました。


「主人公」とは、外側の地位や強さではなく、自分の中にいる「本当の自分」のことです。

「蒼龍よ、誰のために戦っている? 誰のために泣いている? お前の魂の真ん中にいる主人公に、直接聞いてみるがよい」


蒼龍くんは静かに目を閉じ、胸に手を当てて、心の奥底にいる自分自身に問いかけました。

(僕は、褒められたくて戦っていたのか? 違う。……僕は、あの時殻を破って出会った世界の美しさを守りたかったんだ。そして、黒龍の孤独な瞳を放っておけなかったんだ)


「……逃げたくない。傷つくのが怖くて、本当の自分まで捨てたくない!」 震えていた足が、ゆっくりと止まりました。外側の強さに負けても、内側の主人公が「まだ終わっていない」と言っている。


蒼龍くんの心に、消えかかっていた自灯明の火が、再び小さな、けれど熱い光を宿しました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


主人公しゅじんこうに聞け」。

それは、中国唐代の禅僧、瑞巌和尚ずいがんおしょうが毎日自分自身に「しっかりしているか?」と問いかけ続けたお話に由来します。


黒龍に打ち砕かれ、誇りも自信も失った蒼龍くん。しかし、すべてを失ったからこそ、ようやく魂の真ん中にいる「本当の自分」の声を聞くことができました。


次回、完結まで残り5話!光の届かぬ凍てつく深海へ。

嵐に揺るがない大安心だいあんじんを求め、沈黙の底で彼がたなごころに掴んだ真実とは。


合掌

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