第30話:圧倒的絶望! 蒼龍くんと「喫緊」の城
準備を整え、覚悟を決めて挑んでも、想像を絶する現実を前に足がすくんでしまうことがあります。
闇の兵をなぎ倒し、魔王の玉座へと辿り着いた蒼龍くん。 しかし、そこで彼を待っていたのは、言葉すら届かない圧倒的な「力の差」でした。 ついに、この物語最大の激突が始まります。
蒼龍くんが意を決して城門を突破した瞬間、空気が一変しました。 そこは無数の闇の兵士がひしめく死の回廊でした。
「侵入者だ! 黒龍さまの眠りを妨げる小龍を叩き潰せ!」 これまでの三鱗龍との戦いとは違い、敵は四方八方から容赦なく襲いかかってきます。蒼龍くんは、これまでに培った技を繰り出し、敵兵を次々と蹴散らしていきました。
「退いてくれ! 僕は黒龍に会わなきゃいけないんだ!」 しかし、奥へ進むほど敵の攻撃は激しさを増し、罠が牙を剥きます。一瞬の油断も許されない、まさに『喫緊』の事態です。
蒼龍くんは額に汗を浮かべ、必死の形相で駆け抜けました。次々と迫り来る危機を間一髪で回避していきます。 「はぁ、はぁ……! 止まってなんていられない、早く奥へ……!」
余裕を失い、呼吸が乱れ始めたその時でした。 回廊の最深部、巨大な玉座の間に辿り着いた蒼龍くんの前に、ついに「魔王」が姿を現しました。
「……随分と騒がしい羽虫だな」 その声が響いた瞬間、周囲の闇の兵士たちが恐怖で震え上がり、一斉に道を開けます。玉座からゆっくりと立ち上がったのは、漆黒の鱗から絶望のオーラを放つ、魔王・黒龍でした。
「お前が黒龍か……。村の長老が言っていた、かつての慈悲深い守護……」 蒼龍くんの言葉を途中で遮るように、黒龍が無造作に指を振います。すると、その指先から放たれた一筋の閃光が、蒼龍くんの頬を掠めました。直後、背後の巨大な石柱が粉々に砕け散ります。
「慈悲などという言葉を口にするなら、ここで消えろ」
魔王・黒龍。格が違う。これまでのどんな強敵とも比較にならない圧倒的な力。 蒼龍くんの心に、旅に出て以来初めての「本当の恐怖」が這い上がってきました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回の禅語は「喫緊」です。
一刻の猶予もない、差し迫った状況。私たちは、準備を重ねて挑んだはずの現実を前に、その自信を粉々に砕かれることがあります。
魔王・黒龍。その圧倒的な力を前に、蒼龍くんが積み上げてきた技も、言葉も、ノートの記憶さえも、一瞬で凍りつきました。
しかし、すべてが剥ぎ取られ、瓦礫の中に放り出されたとき、初めて聞こえてくる「声」があります。
「お前は誰だ。そして、誰のためにここに立っているのか」
次回、知恵も武器も通用しない絶望の底で、蒼龍くんの本当の戦いが始まります。
合掌




